Present by Ouka.Shimotuki
*** beast of a lover *** 〜vol.4〜
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「やっぱソレ‥‥嫌、かも‥」
「――可愛いって言われるのがか?」
「それも、だけど‥‥」
吐息のような言葉とは裏腹に、ゆっくりと開いた拓海の目には、余り質のよろしくない色が浮かんでいて。咄嗟に啓介は、覆い被さるようにしていた身体を起こしかけた。
だが、まさに拓海の下肢を煽っていた腕を掴まれて、引き寄せられてしまう。
「アンタの手でイカされんのも悪くないけどさ。やっぱ‥」
必然的に再び至近距離。そこで言葉を切って易々と仕掛けられるキス。口唇を辿るように這った拓海の舌が、セリフの続きを啓介に伝える。
「マジかよ‥‥」
「だってさっき啓介さん、イク前に約束してくれたじゃん。ココでしてくれるって」
もう一度。今度はゆっくりと重なる口唇。
「ンな約束した覚えねぇよ。‥‥つか、さっきまでの可愛い藤原はドコ行っちまったんだ‥?」
「どこにも行ってねぇって。ここに居るじゃんか。可愛いオレのお願い、聞いてよ」
「‥‥んのヤロー」
こっちのセリフを逆手に取った確信犯な言葉には、思わず反発したくなっても。
掴まれた指先は拓海の口元へ持って行かれ、それを目で追ってみれば、まっすぐで大きな瞳に容易く捕まってしまい、反論の理由を失くしてしまう。大体、先に肯定したのはこっちなのだし。
「‥‥‥‥」
無言で起き上がり、つつつ・・と視線を下ろす。
いくら開き直り気味であろうとも、さすがにこれを口に含んで――となると決意が要る。よくもまあ自分相手にこんな要望を出せたものだと、再び視線を上げてみれば、期待に満ちた子供の顔がそこにあった。脱力。
と同時に。
今度はこの顔がどう変わるのか―――どう上気して行くのか。しかも自分が与えた快楽によって――。
そう思った。
「‥‥‥‥ッ!」
気付いたら、躊躇いもなく舌を這わせていた。根元から先端へ、前面は指先で。
身体の反応を拾ってポイントを探らなければならない女とは違う。余計な思考は必要なくて、ただ分っているやりかたを辿ればいいだけ。
「―――‥っく‥‥」
手に取るように拓海の昂まり程度が分かる。顔など見なくても。すでに軽口を叩く余裕はなくて、跪づいて己のものを舐めている啓介を見ているだろう。きっと、その映像も興奮に拍車を掛けている。
耐えている拓海の吐息を聞きたい。いつも憎らしいくらい平静を呈している姿を暴きたい。掴み切れないものを手に入れたいと思うこれは、きっと本能だ。
「―――、は」
脈打つ拓海自身はとても大きくて、舐め上げてそのまま口に入れようとしたけれど、一度目は刺激を与える間もなく外してしまった。一息入れたその隙に一瞬だけ視界に入った拓海の表情は、想像よりもずっと恍惚を浮かべていて。もう一度口に含んだ時には、啓介の背にもじわじわと痺れに似たあの感覚が戻って来ていた。
「啓介さん‥‥」
掠れた低い声がすぐ近くで囁かれて、啓介は身体を震わせた。
誰かの声を聞き、その顔を思い浮かべるだけで感じてしまうなんて―――初めてだった。
やけに疲れ果てて、始末も何もなく、いつの間にか眠ってしまって。
「‥‥さん。啓介さん」
だから寝起きの悪い啓介としては、揺り起こされて目を開けた時、平素と変わらない拓海が立っているのを見て「ひょっとして夢だったか」などと一瞬思ってしまった。
「すみません、オレ配達行かなきゃだから‥‥帰ります」
けれど、ほんやりした顔でそう言う拓海の背景は、ケバケバしい内装で。のっそり起き上がった自分の半身は裸だし、半分眠ったような状態の頭でも、事実を再確認。
「ああ‥‥気ィ付けてな」
「――はぁ。えっと‥‥お疲れさまでした」
そのままドアの外へ消える背中。一晩共に過ごしたにしては素っ気ない態度だが、あっさり送りだした自分も含めて、啓介は驚かなかった。何となくこうなるような気がしていた。
まだ睡眠が足りないという身体の欲求に従って、再びベットへ潜り込む。
バトルした夜にこんなに心地よく眠りに就けるなんて、ここ最近では久し振りだ。―――そう、抱える熱を解放し合っただけなのだ、自分たちは。多分にお互いがお互いで無ければ駄目だったのだろうけれど、だからこそ遠慮なく、何も隠す必要もなく。
駆け引きに似た言葉遊びくらいは欲しいけれど、甘ったるい睦言は要らない―――いや、あってはいけないような気もする。そこに踏み込んだら、ダブルエースとして保っている峠でのバランスが崩れてしまいそうで。そうなれば本末転倒だ。
「―――にしても‥‥」
眠りに引き込まれながら、啓介は口唇を緩める。
言うに事欠いて「お疲れさまでした」とは。確かに遠征からの流れでここへ来た訳だから、挨拶としては間違っていないけれど。ともすればその後の行為にも引っ掛かってしまうではないか。・・・まさか狙ったという訳でもあるまいが、素で吐いたのだとしたらもっと笑える。
「ワケ分かんねーヤツ‥‥」
よく考えずとも、とんでもない関係を結んでしまったけれど。自分の中の藤原拓海が、何ら侵される事は無かったと安堵しつつ。
微笑んだまま、今度こそ啓介は眠りに落ちて行ったのだった。
そうやって、拓海との間に一線を引いたつもりだった啓介は。
その丁度一週間後、「オレ、アンタの中に挿れてみたいんだけどな?」と、相変わらずボーッとした拓海に囁かれ、ライバルとしての均衡は保ったまま深みに嵌まるという、予想外の道へ踏み出して行く事になる。
―――END.
今回、感情なんか抜きでエロを! というコンセプトで書いてみたいんですが‥。
全然エロくないのは何故‥‥つか挿れてもなければフィニッシュも(沈黙)。
頑張ってみたのに‥‥自分的にはすっごく頑張ってみたのに。
やっぱりワタシはピュア?<違。
‥‥精進しますガク。
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