詳しい登場人物と時系列 3
軍神ハルトクラーチ
- 本名/ハルトアル・カレイザート
- 日本名/倉内春斗(くらうちはると)
- 勇者ハルト
- 箱庭の神々中で唯一、現実世界に生まれなかった神。
- 現実世界での彼は、母親の胎内で殺されようとしている胎児だった。
- 稲生祐士の妹のひ孫に当たる。
- 倉内咲良にとっては従姉妹の子供に当たる。
- 倉内咲良がまだ実母と共に暮らしていた頃、父の5歳年下の弟が、良く様子を見に来てくれていた。
- 当時まだ大学に通っていたこの若い叔父を、咲良は大好きだった。
- 終戦後は互いに連絡が途絶えることとなってしまったが、彼は、咲良が死ぬ四年前に結婚し、翌年に娘をもうけていた。
- この娘が未婚の身で妊娠してしまう。
- 事が露見するのを恐れた娘は、秘密裏に中絶を決意していた。
- 胎児はこの世に生まれ出る事を心待ちにしていたが、母親の意志を感じ取り、母親の胎内で号泣した。
- その嘆きがあまりに悲痛であったため、箱庭世界のサクラクラーチに届く。
- サクラクラーチは生まれ出たいと泣き叫ぶその命を可哀相に思い、胎児が母親の胎内から掻爬された瞬間、その命を箱庭世界に召喚する。
- 本来ならばそのままユージーノーやサクラクラーチと同じく神となる魂であったが、人としての生を知らぬままの意識体は神となるほど自我がなく、このままではすぐさま箱庭世界に溶けてしまうだろうと思われた。
- それを哀れんだサクラクラーチは、胎児の魂を箱庭世界の人間の女の胎内に宿らせ、胎児を箱庭世界の赤ん坊として転生させた。
- 赤ん坊はハルトアル・カレイザートと名付けられた。
- ハルト、というどこか日本的な響きを咲良は愛しく思った。
- ハルトアル・カレイザートは、[無]属性、つまり、箱庭世界の人々がごく当たり前に生まれ持っている属性を一切持たずに生まれてきた。
- これは、箱庭世界の常識で言えば、重度の障害といえるレベルのものだった。しかも前例がない。
- 箱庭世界のハルトアル・カレイザートの両親は困惑したが、愛情深い夫婦であったので、そんな我が子を受け入れて育て始めた。
- だが、普通と違う子の養育には困難も多かった。
- 全ての攻撃魔法を無効とするばかりか、回復魔法すらも一切受け付けない。
- どんな魔法にも傷つけられない代わりに、病気や怪我を魔法で癒すこともできなかった。
- ハルトアル・カレイザートの魂は、そもそもユージーノー達「神」と同質なのだから、それは当たり前といえば当たり前だった。
- 本来ならば、神々と同じく全能の力を備えた[聖]属性であるにもかかわらず、ハルトアル・カレイザートの魂は箱庭世界のヒトの器に拘束されているがために、発露することができなくなっていた。
- だからこそ、ハルトアル・カレイザートは[無]属性だったのである。
- 自らの真実など知る由もないハルトアル・カレイザートは、成長するにしたがって、自分が周囲の者とは違う事を知り、次第に鬱屈し、ネガティブになっていく。
- やがて両親も疲弊し、家庭に暗い影を落とし始めた。
- 心を痛めたサクラクラーチは、ヴェルメリオに頼んで、「ハルトアル・カレイザートは女神サクラクラーチの神子である」という神託を授けた。
- これに歓喜したハルトアル・カレイザートは、サクラクラーチへの信仰の道に救いを見出すこととなる。
- そんなある日、ハルトアル・カレイザートの町に、一人の旅の神官が立ち寄る。
- 少女と見まごうような優しげな顔をした若い神官は、コノハナと名乗り、女神サクラクラーチから福音をうけるべく、聖地への巡礼の旅の途中とのことだった。
- コノハナはこの町にサクラクラーチの神子がいるという話を聞いて立ち寄ったのだった。
- それを聞いたハルトアル・カレイザートは、自分こそが神託を受けた神子だとコノハナに告げ、旅の同行を申し出る。
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- 神子ハルトとして
- ハルトアル・カレイザートの生まれた国から、神の聖地であるユージーノーの山まで、長い長い旅を、ハルトは行脚した。
- 途中、サクラクラーチを祀った神殿があると必ずそこに寄った。
- そしてハルトは、自分の国では「地母神」として祀られているサクラクラーチが、国によって、「復讐の女神」だったり「災厄の神」だったりするのを知った。
- 男神であるとも、女神であるとも、様々な顔を持つ神サクラクラーチに、ハルトは、サクラクラーチとは本当はどんな神なのだろう、と思いをはせた。
- そして、この旅が終わり、聖地にたどり着いた暁には、必ずやサクラクラーチ神は自分の前に現れてくれるに違いない、と信じた。
- 旅は艱難辛苦を極めた。
- ハルトは自らがサクラクラーチ神の神子であることを誇りに思い、誰に対してもそれを隠さなかった。
- それは時に無用のトラブルを招いた。
- サクラクラーチに滅せられた歴史を持つ国にとって、サクラクラーチは邪神だった。
- そこにサクラクラーチの神子として現れたハルトは、まさしく災厄の申し子だった。
- その国において、ハルトは忌避され、石もて追いやられた。
- またある国では、サクラクラーチの大きな神殿があった。
- その国においては神殿が大きな力を持ち、その神官は高い地位にいた。
- 神官らにとって、神子を名乗るハルトは悪魔以外の何者でもなかった。
- サクラクラーチの神子の名を騙る詐欺師として、ハルトは捕らえられ、処刑されそうになった。
- だが、衆人環視の処刑場で、人々は神の声を聞いた。
- それまで晴れていた空がにわかに掻き曇ったかと思うと、「我が神子に徒なす者に死を!我が神子を害する国に災いを!」という怒りに満ちた大音声がはっきりと聞こえたのだ。
- そして美しく金に光る神竜ヴェルメリオが飛来し、口から火を噴いて、神官達もろとも神殿を焼き払ってしまった。
- 恐れおののいた人々は、慌ててハルトを解放したが、その国はそれから三か月もの間、一度も晴れることはなく、長雨が続いた。
- 人々に懇願されたハルトが、焼け落ちた神殿跡でサクラクラーチに祈ると、雨はたちまちやみ、太陽が顔をのぞかせた。
- 神の奇跡を見た人々は、もう誰もハルトがサクラクラーチの神子であることを疑わなかった。
- そして、ぜひこの国にとどまり、新たな神殿の大司教になってほしいと懇願したが、ハルトは、自分は巡礼の旅の途中だから、とこれを固辞した。
- 人里を離れれば凶暴な魔物がハルトを襲った。
- [無]属性であるハルトには、魔物の魔法攻撃は一切効かなかった。
- だが、牙や爪といった物理攻撃はハルトの肉体を傷つけた。
- しかも、その傷を治す回復魔法は、ハルトには効かないのだ。
- 薬草を山ほど買い込んで携帯し、ありったけの金を防具と鎧につぎ込み、剣の技を磨きに磨いて、ハルトは旅を続けた。
- 剣技がレベルアップするのにつれて、ハルトは自信をつけていった。
- 自信は時に慢心となった。
- 剣技に冴え、神の祝福を受けた自分は誰よりも尊ばれるべき、という愚心はすぐに神に看破され、現れたヴェルメリオに叱咤されたハルトは心を改めた。
- 神子としてのハルトの名が広まっていくにつれて、聖地までの巡礼の同行を申し出る者が現れ、それは日に日に増えた。
- ハルトはそれらの申し出を一様に断っていたが、中でもコノハナという名の若い神官はことのほか熱心でなかなかあきらめなかった。
- 拒み続けていたハルトもついに根負けし、では、この巡礼にコノハナを同行させてもいいか、神にお伺いを立てようということになった。
- ハルトの祈りに応じて現れた神竜ヴェルメリオは、コノハナを見て一瞬とても奇妙な顔をした。
- それは唖然とした顔のようにも見えたが、ヴェルメリオは何事もなかったかのように表情を戻して、コノハナの同行もまた神の思し召しだと告げた。
- その夜、誰もが寝静まった頃、ヴェルメリオはコノハナを訪れていた。
- ヴェルメリオは今度はもう、呆れ顔を隠そうともせず、「何やってんだ、サクラ。」とコノハナに向かって言った。
- 実はコノハナはサクラクラーチ本人が化けていたものだった。
- ハルトの旅を見守りつつけるうちに、ハルトを愛するようになっていたサクラクラーチは、ハルトが神子として名声を上げていくにつれ、彼に人々がどんどん惹きつけられていくことに我慢ならなくなったのだ。
- この先、美しい娘にでも求婚されて、ハルトの心がそちらを向きでもしたらたまらない、そう思ったサクラクラーチは、神官に化けてハルトと共に旅をする決意をしたのだ。
- 実際、この頃には逗留する国の国主や領主から、旅が終わった暁にはぜひ娘を娶ってほしい、とまで言われるようになっていたのだ。
- コノハナはハルトの傍から片時も離れず、それらの横恋慕をすべて邪魔してやるつもりだった。
- そうしてハルトとコノハナの旅は始まった。
- ハルトから見たコノハナは、実に不思議な存在だった。
- 初めて会ったとき、ハルトはコノハナが女だと思った。それほどにコノハナの体つきは華奢で、顔立ちは少女のようだった。
- けれどコノハナは男性用の神官服を身に付けていたから、ハルトはすぐにコノハナは男なのだろうと考えを改めた。
- だがこうして旅を共にしてみると、その考えはどんどんあやふやになっていった。
- コノハナは、神官服こそ男性用だったが、仕草は女性のようにたおやかだった。
- かといって女性のような妖艶さはなく、しかしながら男性のような粗野なところはない。
- 物腰は柔らかで貴族的とすら言えるのに、旅の粗末な食べ物でも臆せず口にするし、戦いでは豪胆なところも見せるのに、変なところで恥じらったりもする。
- 男なのか女なのかわからない、コノハナはそんな不思議な生き物だった。
- 当初はコノハナの扱いに戸惑っていたハルトだったが、属性のない自分と、性別のわからないコノハナは、なんだかどこか似ているような気がして、ハルトは次第にコノハナにどんどん心を許していった。
- ハルトは属性を持っていない自分を恥じていたので、二人の間で属性の話が出ることはなく、だから、コノハナの属性も、ハルトは聞かなかった。
- コノハナは戦いで攻撃魔法を使うことはなかった。攻撃魔法を持っていないのかもしれない、とハルトは思った。
- 不思議なことに、コノハナの使う回復魔法は、ハルトの傷を回復させることができた。
- どんな回復魔法も補助魔法も干渉しないハルトにとってそれは衝撃だった。
- ハルトはコノハナの属性が気になって仕方なかったが、やはりそれについて詳しくは聞かなかった。
- 実際のところ、コノハナは神だったから、同じ神であるハルトに魔法が効くのは当たり前のことだった。
- ハルトは、いつの間にかコノハナを愛するようになっていた。
- コノハナの属性も、それどころか、本当は男なのか女なのかもわからないままだったが、それはハルトにとっては些細な事だった。
- 箱庭世界の国々の多くは同性愛を許容していて─────それはサクラクラーチが意図的にそうなるよう世界に介入したからだったが────、ハルトもまた、恋愛の相手に性別を求めなかったからだ。
- 無事にこの巡礼の旅を終えることができたなら、その時、コノハナに求婚しよう。ハルトはそう思っていた。
- そしてコノハナを自分の国に連れて帰って両親に紹介しよう。今まで心配と苦労を掛け続けてしまった両親は、きっと喜んでくれるに違いない。
- 長い旅路の果て、ハルトとコノハナはついにユージーノーの山にたどり着いた。
- それは、この世界で最も偉大なる創世神が住むにふさわしい、高く雄大な山だった。
- この山に、創世神ユージーノー、その神使である神竜ヴェルメリオ、そして、創世神の妻とも子とも伝えられる女神サクラクラーチが住んでいるのだ。
- 山の麓にはそれはそれは立派な大神殿が建てられ、敬虔な人々の参拝で賑わっていた。
- 大神殿の神官長によれば、神々が住まうこの山は、その聖域の結界によって、いかなる人間の侵入も拒んでいるため、参拝客は皆、登山しようとしたりはせず、この大神殿でお参りを済ませていくのだという。
- 「ですが、神の神子であるあなたならば、この先に進むことができましょう。」
- 神官長の言葉に励まされ、ハルトとコノハナは山を登り始めた。
- この時、コノハナの同行を止めようとした神官長は、コノハナと目が合うなり、ハッと顔色を変え、震える声を押し殺しながら二人を見送った。
- 二人の姿が山林の中に消えていくと、こらえきれぬように平伏し、女神の名を呟いた。
- 山道は険しかった。
- 前人の未踏の山であるが故、山道などはなく、獣道すらなく、二人は草や木をかき分けて登った。
- 登っても登っても頂は見えなかった。
- 迷ったのだろうかとハルトが不安になるたび、コノハナが優しく励ましてくれ、ハルトを奮い立たせた。
- この山の向こうにどんな世界があるのか、誰も知らないのだ、と神官長は言っていた。
- この山を越えた人間が一人もいないからだ。
- もしかしたら、この山の向こうは世界の果てで、何もないのかもしれない、とハルトは思った。
- 前人未到の山は、また、魔物や魔族も全く見かけなかった。
- 小さな虫や小鳥、小動物は生息しているようだったが、大きな獣の気配もなかった。
- 食べるものもなく、二人は登り続けたが、不思議なことに腹も減らず、喉も乾かなかった。
- やっとの思いで頂上にたどり着くと、そこにはぽつんと小さな神殿だけがあった。
- あっけにとられたハルトは、思わず拍子抜けしたが、コノハナは、ハルトの手を取って、神殿の中に入るよう促した。
- いぶかしく思いながら神殿の扉を開けると、そこには驚くような風景が広がっていた。
- 外観からは明らかにおかしいほどの広い広い空間に、荘厳な光が満ちている。
- そこに、神竜ヴェルメリオが寝そべっていた。
- ヴェルメリオは待ちくたびれたといわんばかりにあくびをしてハルトを出迎えた。
- 身が引き締まるような澄んだ空気と荘厳な光の空間に、こここそが神の住まう神域なのだと確信して、ハルトはヴェルメリオに、女神への取次ぎを頼んだ。
- するとヴェルメリオは、「サクラならお前の後ろにもういる。」と答えた。
- 驚いて振り向くと、そこには当然、同行していたコノハナの姿が。
- からかうな、と神竜に抗議しようとしたハルトは、コノハナの体が柔らかく発光していることに気が付いた。
- 瞠目するハルトの前で、コノハナの姿は見る見るうちに、女神サクラクラーチのものとなった。
- 「我が愛し子ハルトよ、黙っていてすみません。私がサクラクラーチです。」と詫びる女神。
- そして、ハルトはすべての真実を教えられた。
- ハルトの魂はこの世界の人間のものではなく、異世界から召喚された神の血族のものである事。
- 本来ならば[聖]属性であるはずが、人の器に魂が拘束されているため[無]属性となっている事。
- それももう限界で、このままでは人間としての形を保てなくなる事。
- そしてサクラクラーチは、早々に人の器を捨てて、自分と同じ神となり、共にここで暮らそう、とハルトに告げる。
- コノハナとして、ハルトからの愛情を感じ取っていたサクラクラーチは、当然、ハルトが申し出を快諾するものと思っていた。
- だが、ハルトは返事をためらう。
- 生き地獄としか思えない現実世界の記憶を持つサクラクラーチにとって、人の体を捨てて神となるのはそれほど抵抗がないことだったが、たとえ[無]属性で苦しんできたいきさつがあったとしても、この箱庭世界に生まれ、優しい両親を持ち、その愛に育まれてきたハルトにとっては、いきなり人間である事をやめろといわれても、それをすんなり受け入れられるはずもなかった。
- なにより、国の両親は自分の帰りを待っている。
- そこには友達もいる。
- それらを全て捨てて神となることは、ハルトにはできなかった。
- ハルトは神となる事を拒み、人としての生を選んだ。
- それは、“コノハナ”との別れを意味していた。
- サクラクラーチは落胆したが、ハルトの意思を尊重した。
- どの道、神であるサクラクラーチにとって、人であるハルトの命は儚い。
- ハルトの命数が尽き、その魂が肉体の軛から解放されるのをゆっくり待つとしよう。
- そしてサクラクラーチは、ハルトの肉体の枷をほんの少し緩め、その[聖]の力を開放してやった。
- ハルトはサクラクラーチに幾度も幾度も感謝して、サクラクラーチの前を辞した。
- 帰路は、ヴェルメリオがハルトをその背に乗せてくれた。
- 辛く長かった往路も、神竜にかかれば一飛びだった。
- 故郷の人々はハルトの帰還を喜んだ。
- 両親もハルトの無事を涙を流して喜び、ハルトが属性を得たことを知るとそれもまた喜んだ。
- ハルトは、属性を得たことを伝えはしたが、それが[聖]属性であることは黙っていた。
- [火][風][光]を公表し、それ以外は隠した。
- それでも、3つもの属性を得たということで、ハルトは人々の羨望の的となった。
- ハルトが旅の道々で成してきた名声は、全て故郷に伝わっており、ハルトの故郷にあるサクラクラーチ神殿は、ハルトを神子として迎えようと膝を折り、ハルトの国の王からは栄誉と共に王女を妻としないかと打診があった。
- ハルトは、神殿の要請は受け入れ、王の栄誉は賜り、婚姻の申し出だけは丁寧に断った。
- 理由を、サクラクラーチから生涯独身でいることを求められたから、とした。
- 実際、ハルトはコノハナのことが忘れられずにいた。
- そのコノハナはサクラクラーチだったのだから、ハルトのサクラクラーチへの信仰はさらに厚くなった。
- 人の生活に戻ったハルトだったが、その生活は元の通り、とはいかなかった。
- 唯一のサクラクラーチの神子として、人々はハルトにあやかりたがった。
- ハルトのいる神殿は連日多くの人が詰めかけ、それは次第に神殿の力を大きくしていった。
- やがて神殿は、ハルトの与り知らぬところで国政に口を出し始めた。
- 国の王は自国を神の加護を賜った国として喧伝し始め、近隣諸国へ恭順を求め始めた。
- それは政情不安を呼び、ついにハルトの故国は隣国へと攻め込んだ。
- 国王はハルトを呼び寄せ、神の加護で隣国を滅ぼせ、と命じた。
- 驚いたハルトはそれをきっぱりと断った。
- 国王や神殿はあの手この手でハルトを利用しようとしてきて、ついには両親の命がその質とされた。
- 絶望したハルトが願ったのは、故国の滅亡だった。
- すぐさま神竜ヴェルメリオが飛来し、王宮と神殿を焼き払った。
- 国は幾日も幾日も雷鳴が轟き、人々は神の怒りにひれ伏した。
- 雷鳴が鳴りやみ、空が晴れたとき、神子ハルトの姿はどこにもなかった。
- 人々は、ハルトがサクラクラーチの元へ還ったことを悟った。
- そして、ハルトアル・カレイザートは、いつしか軍神ハルトクラーチとして祀られるようになる。
- その名前から、軍神ハルトクラーチは女神サクラクラーチの子、或いは夫である、という神話が語り継がれるようになった。
- 初期神話との整合性をとるため、ユージーノーの子がサクラクラーチであり、その夫がハルトクラーチ、とされる場合が多い。
- 基本、引き篭もっている神で、人界へはほとんど干渉しない。
- サクラクーチのように写し身も使わないが、ユージーノーのように自然に還っているわけでもない。
- ごく稀に人間の前に姿を現すときは、神子ハルトの姿を取ることが多い。
- 箱庭の神々の中で唯一、現実世界に生まれなかったがゆえに、唯一、現実世界の記憶を持たない。
2016/08/19
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