DIANAxALBERT 1


漆黒の闇が、二人の罪を覆い隠していた─────── …

 

「ね、ねえ…さん…っ もぉ…やめてよぉ…っ… 」

アルベルトが弱々しい声で懇願する。

「まぁ、アルベルト。ローザリア王国イスマス城主ルドルフの息子が、なんて情けない声を出すの?」

ディアナは、ベッドに仰臥した弟を艶然と見下ろしている。

ふふふ…と含んだ笑いを漏らす。

アルベルトの両腕は、ベッドの柵に括り付けられていた。

胸元ははだけられ、下半身は下着すらも取り払われている。

ディアナは、弟の足の間に膝立ち、先刻から弟のモノをいいように弄んでいた。

皮を引き下ろし、頭を露出させると、指で鈴口を開いて、そこへローザリアの貴婦人達が湯上りに使う香油を垂らす。

ひっ、と弟が引きつった声を上げる。

弟の鈴口から、先走りと香油が混ざった液が垂れてくるのを、姉は面白そうに眺めている。

指に液をつけ、弟の鈴口を擦ってみる。

あっ あっ あっ と、切羽詰った声を上げて弟の体が反り返った。

その反応が楽しくて、今度は弟の若木の頭を手で摘まむようにして、何度も何度もぬるぬると擦った。

「ひ、ぃ、ア… ア、ひゃ… あっ…」

弟はせつなげに腰を揺らし、悶えていたが、やがて、喘ぎの下から、小さく、「もぉ、イク…」と訴えた。

その瞬間、ディアナの手が、アルベルトの若木の根元をきつく握り締めた。

「ぎぃっ…!!」

突然の激痛にアルベルトが悶絶する。

「勝手にイく事は許さなくてよ。」

姉が笑った。

「ねえさん…っ い…イかせて…よぉっ…。」

弟は目に涙を浮かべながら腰をくねらせ、哀願した。

ディアナの瞳が、サディスティックな悦びに光る。

もう18になろうというのに、どこか幼い線が残る弟の肢体。

完全な“男”の肉体でもなく、もちろん女性的でも到底なく、まるで蝋細工のような滑らかで中世的な少年の体…。

その、危うい、美しさ…。

不意に、ディアナの中に、いとおしいような、憎いような衝動が駆ける。

ディアナは、手の中のモノを力いっぱい握ると、ずるっと乱暴に、一気にしごきおろした。

「ひィっっ!!」

アルベルトの腰が激しく跳ねた。

なめらかな少年の肢体がのけぞり、限界まで屹立した幹は、その刺激に耐え切れず、弾けた。

 

どくっ びくんっ びゅくんっ

 

びくびくと震えながら青臭い精を勢いよく迸らせる、アルベルトの若樹。

「あ… あっ…。」

全身を弓なりに反らしながら、アルベルトは、底知れぬ闇の中へ堕ちていく己を感じていた。

 

*  *  *

 

幼い頃から、姉にはよく苛められた。

ある時は、騎士ごっこだと称して剣の鞘でしたたかに殴られ、またある時は、捕虜ごっこだと言って木に縛り付けられて、そのまま夕刻まで放置された。

勿論そのたびに姉は、父ルドルフにこってりと叱られるのだが、翌日になればけろりとして、またアルベルトを泣かすのだ。

それでも、アルベルトにとって、姉は全てだった。

強く、美しい姉に、幼いアルベルトは初恋にも似た想いを抱いていた。

 

そう、あの日までは。

 

 

まだアルベルトが、10歳になるかならないかの頃だった。

その日も、アルベルトは“いつものように”ディアナに苛められていた。

「馬になれ」と命ぜられ、四つんばいにさせられ、姉を背に乗せて、室内をぐるぐる歩かされた。

姉は笑いながら、乗馬用の鞭でアルベルトの尻を叩いた。

半泣きで許しを乞う弟の姿が、心底楽しくて仕方がないというような笑みだった。

いつもそうだ。

姉はアルベルトを苛めている時、とても嬉しそうだ。

頬は上気して染まり、瞳には妖しげな炎が揺らめいている。

まだ幼いアルベルトには、その瞳の意味は分からなかったが、姉は明らかに欲情していたのだ。

「馬が服を着ているのはおかしいわねぇ…。」

姉は突然そう言いだした。

「お脱ぎなさいな。アルベルト。」

凛とした声で命ぜられると、もうアルベルトは逆らえない。

幼い頃から苛められ、もうそれはアルベルトの意識下に刷り込まれていた。

涙をぬぐいながら、のろのろと衣服を脱ぐ。

ディアナは熱っぽい眼差しでそれを見つめている。

「全部よ、全部、脱ぐの。」

全て脱ぎ捨て、全裸になると、再び、四つん這いにさせられた。

震えながら、アルベルトが言うとおりにするやいなや、剥き出しの尻に、ディアナの鞭が飛んだ。

「ひッッッ!」

鋭い痛みにアルベルトが悲鳴を上げる。

姉は笑っていた。

笑いながら、何度も何度も鞭を振るった。

アルベルトの尻に幾筋もの赤いあざがつく。

「痛いッ! 痛いよぉッ! もぉ許してぇッ!」

床を転げ回りながら泣き喚くアルベルト。

ふと、アルベルトは、自分を見る姉の、異常に高揚した目に気がついた。

アルベルトの全身に絡みつく、熱を含んだ姉の視線に。

それは、ねっとりと、アルベルトの肢体の隅から隅まで余すところなく舐め回すような視線だった。

見られてる。

全て。

姉さんに。

姉さんが見てる…。

不意に、まるで、姉に全身を撫でられているような気が、した。

股間の幼い若樹が、びくりと反応する。

それは、アルベルト自身予期していなかった己の変化だった。

うろたえ、姉に気づかれまいと、股間のものを隠そうと腰を引くアルベルト。

姉はそれを見逃さなかった。

弟の体の変化に気づき、爛々と輝きだす、姉の瞳。

アルベルトは、姉の様子には気づかず、すっかり硬く立ち上がってしまった自身を何とか隠そうとしている。

本人は隠そうとしているつもりなのだが、その姿は、腰をくねらせながら尻を突き出しているようにしか見えない。

ディアナからは、淡い色の菊座が丸見えになっている。

姉にはそれが、物欲しげにねだる淫売の仕草のように見えた。

「馬に尻尾がないのはおかしいわね・・・」

つぶやきながら、思わず、手にしていた鞭の柄をぺろりと舐める。

その柄を逆手に持ち替えると、ディアナは、いきなりそれを弟の小さな蕾に捻じ込んだ。

「きひぃッッッッ!!!!!!!」

弟の白い背中がのけぞる。

びしゅっ!

悲鳴と共に、アルベルトの未熟な牡が弾けた。

姉は尚も容赦なく、鞭の柄をぐりぐりと回しながら深く捻じ込んでくる。

「ひいっ ひあっ あああっ あぁぁーーーーーっ!」

あられもない悲鳴を上げ、ジェル状の濃い白濁液を床に撒き散らすアルベルト。

アルベルトにとって、初めての精通だった。

それは汚辱にまみれた快感だった。

アルベルトは、突っ伏したまま、声を上げて泣いた。

泣きながらも、若樹は、止まる術を知らず、びくびくと精を吐き出していた。

床にうずくまり、尻から鞭を生やしたまま泣きじゃくる幼い弟を見下ろしながら、ディアナの口元には、かつてないほど凄艶な笑みが浮かんでいた。

 

その日から、アルベルトはディアナの奴隷となったのだ。

 

*  *  *

 

あれから10年近くが経ち、アルベルトの背はディアナを追い越すほどに成長したが、二人の関係は変わらなかった。

むしろ、それはより濃密なものとなっていた。

アルベルトにとって、姉は専制君主であり、絶対的な支配者であった。

心の中では拒絶しているのに、命ぜられると逆らえない。

姉の手に触れられると、体はあっけないほどたやすく陥落する。

それに、事が済んだ後、姉はとても優しくなるのだ。

自らの精で汚れた弟の体を、丁寧に拭き清め、優しく髪を撫で、そっとキスをしてくれる。

その一瞬、姉は、アルベルトが幼い日に憧憬を抱いた、あの美しく気高い姉に戻ったようで、アルベルトの心を、甘い穏やかな想いで満たすのだ。

それはアルベルトにとって、至福ともいえるひと時だった。

 

実際、アルベルトとの秘め事から離れた姉は、ローザリアでも指折りの貴婦人であった。

ローザリア王国が誇る薔薇騎士隊に属し、剣技に冴え、誰よりも強く、誰よりも気高く、誰よりも美しく・・・。

式典などが首都クリスタルシティで催され、ローザリア中の貴婦人達が集まっても、姉の美貌と気品は、居並ぶ貴婦人達に引けを取らないどころか、他の追随を許さないほどに抜きん出ていた。

人々が姉の美貌を讃え、噂する時、アルベルトも、姉との闇の秘事を忘れ、誇らしさで胸がいっぱいになるのだった。

 

それが、ひとたび二人きりになると、姉は豹変した。

社交界での貴婦人としての姉。

父母の前での、勝気だがしっかり者としての姉。

その仮面を、アルベルトと二人きりになった瞬間、姉は劇的なほど鮮やかに脱ぎ去るのだ。

 

残酷で狡猾な、美しい肉食獣の姿へと。

 

*  *  *

 

「あなたはお姫様よ、アルベルト。」

その日のアルベルトは、素肌の上に、姉のコルセットをつけさせられていた。

「苦…しいよ…、ねえさん…。」

「苦しい? でも、これが、“貴婦人のたしなみ”なのよ。」

姉は、なおも容赦なく、弟の体を締め上げる。

「く…ぅぅっ…」

凹凸のほとんどない少年の体が、コルセットでぎりぎりと締め付けられ、無理矢理くびれがつけられていく。

「ふふふふ…、御覧なさいな、アルベルト。」

大きな姿見の前に立たされた。

アルベルトは、鏡に映った己の姿に目を見張る。

細く細く締め上げられた腰。それとは逆に胸は上へと押し上げられ、平板な胸が、まるで成長期の少女のように、ぷっくりと隆起している。

顔を赤らめ、目を反らすアルベルト。

「へ、変だよ、こんなの。」

ディアナが含み笑いをする。

「あら。可愛くてよ、アルベルト。」

次に姉は、ペチコートを出してきて、弟に穿かせた。

少年とはいえ男の体には、それはとても入らなさそうに思えたが、コルセットに締め上げられた体には、易々とつけることが出来た。

そしてドレス。

深いブルーの、光沢のあるドレスを着させられる。

中に穿いたペチコートのせいで、ドレスの裾はふわりと広がり、美しいドレープを醸し出す。

そこには、たくさんの小さなダイアが、まるで星空のようにちりばめられていた。

胸元がざっくりと大きく開いていて、それは、コルセットによって作られたアルベルトの胸を、奇妙なエロチシズムを感じさせながら、強調させている。

まるで、本当に女の子にでもなったかのようだ。

ディアナは嬉しそうに笑いながら、弟の手を引いて、化粧台の前に連れていった。

化粧台の鏡の前にアルベルトを座らせると、ディアナは、ブラシで、弟の髪を梳かしだした。

無造作な髪を丹念に撫で付け、額を出す。

それだけで、弟の顔は幼い少女のような容貌になった。

前髪に隠されて日に焼かれずにいた白い額に、細い金鎖のサークレットをつける。

仕上げに、姉は馴れた手つきで、弟の唇に、薄いピンクの口紅を塗った。

「ほぉら。どう? アルベルト。」

鏡に映ったアルベルトの姿は、驚くほど姉に似ていた。

姉の施した化粧によって、アルベルトの貌に残っていた幼さが強調され、少年の特徴はすっかり影を顰めている。

「本当に女の子みたい。ふふふ・・・」

姉が嬉しそうに微笑む。

「……………あなたが本当に、女の子だったら良かったのに。」

不意に、姉が小さく呟いた。

鏡の中の己の姿に気をとられていたアルベルトは、その微かな囁きに、え? と、姉に視線を移す。

「姉さん…? ──── あっ!」

姉の唇が、アルベルトの首筋に押し当てられていた。

ちゅ…と、優しく吸われる。

ぞくりとした快感が背筋を走り、アルベルトは思わず首をすくめた。

「姉…さ…っ 僕…っ」

「女の子が“僕”じゃおかしいでしょう? “あたし”よ。」

「そんな…っ」

「“あ・た・し”。言ってごらんなさい。」

「やだよ…姉さん…。」

アルベルトが、羞恥に頬を染めて俯く。

その耳元に、姉がそっとキスをして、囁いた。

「鏡をご覧なさい…。」

鏡の中には、内気そうに頬を薄く染めた“少女”が映っていた。

その顔は可憐と言ってもいいほどに幼い。

「あなたは女の子なのよ…。」

とくん、とアルベルトの心臓が、鳴った。

「ち…が…違う…よ… 僕は…。」

「あ ・ た ・ し。 あなたは、女の子なのよ。」

ディアナが歌うように囁く。

「おんな…のこ…?」

「そうよ、あなたは女の子。それもとびきり可愛い女の子なの。」

鏡の中の少女は、うっとりとした目で、こちらを見ている。

姉の指先が、首筋を滑り、胸元に降りる。

大きく開いたドレスの胸元に手を差し入れ、そっと、引き下げる。

「…!」

コルセットで強調された“乳房”が現れた。

「ほら。女の子でしょう…?」

ぷっくりと隆起した乳房の頂きに、小さな乳首が乗っていた。

姉の指先が、その乳首に触れる。

「あっ…!」

瞬間、感電でもしたかのような衝撃が全身を貫く。

「うふふふふ。可愛い……。」

ディアナは、その白魚のような指で、弟の乳首をつまみ、くりくりとこねる。

「ふあっ…! ねえさぁ…っ」

小さな乳輪ごと摘み上げ、強く揉みながら引っ張り上げる。

そのたびに弟の体はびくびくと痙攣した。

「気持ちいい?」

もう片方の乳首に、姉が舌を絡ませる。

「ああっ…」

思わずあげた悲鳴が、本当の少女のように甘かった。

「ねぇ、気持ちいい?」

姉が乳首に軽く歯を立てた。

「くひぃっ…! や…やだっ…!」

アルベルトの体が、思い切りのけぞり、椅子の背もたれが軋んで音を立てる。

「強情な子ねぇ…。」

ディアナの手がドレスの中に滑り込んだ。

「はぁっ…!」

「ほら…あなたのもこんなに固くなってる…。」

姉の露骨な言葉に、アルベルトの全身が、かああああっと熱くなる。

素肌に直接コルセットをつけたため、下半身には何もつけていなかった。

姉の指は、何の障害もなく、弟の牡芯を捉えた。

「あっ… ひぃっ…!」

姉の指が、敏感なくびれを探り、撫で、幹をしごき、やわやわと双珠を揉み込む。

「ひああっ はぅ… んんっ…」

乳首を弄っていた姉の唇が離れる。

そのまま姉は、弟の足元に跪き、その牡芯を口に含んだ。

「ひあっ いやあーーーーっ」

姉の舌の、湿った温かな感触が、アルベルトの敏感な部分を包み、アルベルトはあられもない悲鳴を上げる。

姉がアルベルトのそこに舌を這わすなど、滅多にないことだった。

それだけに、アルベルトは、その刺激に、全身を激しく痙攣させた。

「ねえさん、だめ、ぼく…っ!」

姉の口の中に射精してしまうのでは、という危機感から、アルベルトが思わず口走った瞬間、姉の舌が、アルベルトの牡芯から、すっと離れた。

「…ぼく?」

姉が聞き返す。

「あっ…。」

アルベルトがびくりと肩を竦ませた。

姉の目が、嗜虐的な光を放っていた。

「あ、あ…たし…」

その目の色に本能的な恐れを感じ、アルベルトは、羞恥と軽い屈辱に頬を染めながら、慌てて言い直した。

こういう目をした時の姉に逆らえばどうなるのか、アルベルトは嫌というほどその身で思い知っていた。

姉がにっこりと微笑む。

「いい子ね。」

そう言って、女装した弟の牡芯を、ゆっくりと扱き上げる。

「あ あっ はぁっ…」

もう片方の姉の指が、のけぞった弟の体の、足の間の、更に奥へと分け入る。

「ひあっ」

「まあ…。貴婦人だと思っていたら、この娘はとんだ淫売だわ。ここをこんなに物欲しそうに濡らしているなんて。」

ディアナは大仰にそう言って、指を、弟の菊座に、ぐりぐりと容赦なく捻じ込んだ。

「い、いたいぃ… いたいよ、ねえさ…」

「痛い? 本当に?」

ぐりりっと、姉の指が、弟の中をかき混ぜた。

「ひいっっっっ!」

弟の体が、感電でもしたように跳ね、勃ち上がったままの牡芯の先端から、まるで涙のように透明の雫が零れ落ちる。

それを、姉の舌が掬い上げ、鈴口から強く吸い上げる。

「あひッ! あひいぃぃぃッッ!」

潤んだ視界の中、鏡の中の自分が目に入る。

美しいドレスを着た「少女」が、胸元を露にされ、ドレスの裾を腰までたくし上げられて、快感に喘いでいる。

それはどこから見ても、陵辱される少女にしか見えなかった。

「どうなの? やめてほしいの?」

姉が、弟の牡芯に、ふっと息をかける。

それだけで、弟の全身が震える。

「あっ… あ …やめ…ないでぇ…」

「…気持ちいいの?」

姉の舌が弟の牡芯を激しく吸いたて、同時に、姉の指が弟の腸壁をえぐる。

「うあっ… ひ…い…っ!」

アルベルトの心の中で、何かが崩落する。

「気持ちいいっ… 気持ちいいのォッ…! あたし・・・…イクっ…!」

 

どくんっ びくんっ びゅるっ …

 

姉の口の中に全てを放出しながら、アルベルトは、自分の心が深い深い闇の中へと堕ちていくのを感じていた。

自分の心が、闇の色へと染め替えられていくような、背徳感。

どうしようもなく、汚されていくような。

 

──── 僕は…このままずっと姉さんの… 奴隷…なのかな…

 

この闇が、永遠に続くような気がした。

 

 

けれど。

運命は、その二人の関係を、劇的に終結へと導こうとしていた。

 


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