MYRIAM 4


翌朝。

あたい達はメルビルから船に乗って“財宝の眠る島”リガウ島唯一の町、ジェルトンへ向かっていた。

ガラハドの態度は、今日になってもまだギクシャクしていた。

「ガラハド。」

「あ、ミ、ミリアム…」

「昨日は御馳走様♪」

とっておきの笑顔で言ったけど、ガラハドは「あ、いや、そんな、別に…」としどろもどろだった。

やれやれ。

あたいはわざとそれに気がつかないふりをして、いつもと同じように振舞った。

だってそうするより他ないもん。

グレイは、もちろん、ガラハドのあたいに対する不自然な態度には気がついたみたいだけど、特には何も言わなかった。

「ふぅ…。」

あたいは甲板で風に吹かれながら、ちょっと溜息をついた。

考えてもどうにもならない事を考えすぎるのはよそう。

らしくないもんね。

あたいは、船の進行方向に視線を移した。

もう、前方に島が見えてきていた。

あれが“財宝の眠る島”ね…。

ごつごつとした印象の島だった。

南端には山が見え、もくもくと煙を吐いている。

「ん……?」

あたいは、さっきから薄々感じていたことが、島が近くなるにつれてだんだんと強くなっていくのを確信した。

「なに…これ…。」

船が島に着き、ジェルトンの港に入ると、それはますます強くなった。

「ミリアム、降りるぞ。」

グレイがあたいの後ろから頭を叩いた。

「どうした? ミリアム?」

わざわざグレイが聞いてきたくらいだから、あたいはよっぽど変な顔をしていたに違いない。

「…なんか…臭い…」

あたいは鼻を抑えながらそう言った。

船を降りて、ジェルトンの町に入っても、その異臭は変わらなかった。

これは…あれだ、タマゴの腐った臭い。

町全体が、ううん、島全体が、腐臭に包まれている。

エスタミルの下水の方がまだましって感じ。

グレイがしかめっ面をしているあたいを見て、くすっと笑った。

「なによぅ。」

「この臭いは、硫黄の臭いだ。」

「イオウ?」

「ほら」

と言って、グレイは町からも良く見える、彼方の火山を指差した。

「火山があるだろう。」

「うん。」

「だからこの町は温泉が出るんだ。その臭いだ。」

「温泉っ!?」

あたいは鼻から手を離して、思わずそう叫んだ。

温泉。その一言で、この異臭がいっぺんに気にならなくなった。

それどころか、芳しい香りのような気すらする。

「温泉って、温泉って、お肌すべすべになるんだよねっ? あたい、温泉初めてだよ。すっごい熱いお湯なんだってね、前に旅行者に聞いて一度行ってみたいと思ってたんだ♪ クジャラートに温泉はないのよ。」

温泉…♪ ああ、温泉♪

「わかったわかった。宿屋の風呂も温泉だからたっぷり浸かれ。」

グレイが呆れたように言う。

わぁい♪ 温泉♪

「その前に、パブで飯と情報収集だ。ミリアム。」

「はーい♪」

あたいは浮かれた足取りで、グレイについていった。

 

 

それからあたい達は、町の人に色々と話を聞いたあと、パブに入り、そこでも色々と話を聞いた。

総合すると、

という事だった。

「つまり、どの穴が深いのか分かれば、財宝のありかもわかるって事だな。」

ガラハドがビールを飲みながら言った。

すると、あたい達の会話を聞いていたパブのマスターが、

「花園の中の穴が深いですよ」

と、教えてくれた。

それを聞いて、グレイが、手に持ったビールのジョッキを、くーっと一気にあおった。

たん、とカウンターにジョッキを置く。

「よし。行くか!」

 

そんな何でもない仕草が、いちいちめちゃめちゃかっこいいな、にーさん…。

 

パブを出て、あたい達はまっすぐ町の南の出口へと向かった。

正直なところ、あたいは心の隅でちょっとほっとしていた。

というのも、例によって、船から下りて早々に、どこからともなく女が現れて、

「この町はジェルトン。リガウ島で唯一つの町よ。」

等と言いながら、グレイに秋波びしばしで擦り寄ってきたりしていたから、あたいはいつグレイが女とフェードアウトするかと思って気が気じゃなかったのだ。

でも、目の前にお宝というエサがぶら下がってると、グレイはそっちの方に気をとられるらしい。

さっすが、冒険者。

 

+ + + + +

 

南の草原の入り口で、あたい達は既に呆然としていた。

「きょきょきょきょ恐竜…。」

歩いてるよ歩いてるよ。

穴の中どころか、草原を何匹も何匹も歩いてるよ。

でかい、なんてもんじゃなかった。

ちょっとした山だわ、ありゃ。

「あれは…倒すのはちょっと無理か。」

グレイが一人ごちる。

倒す気だったんかーい!

「仕方ない。恐竜は避けて通る。動きが鈍いし、恐竜ってな元来温厚な生き物だ。刺激しなければ大丈夫だろう。ザコは倒しながら花園を探す。いいな?」

「おう!」

「おっけー♪」

あたいとガラハドは同時に答えた。

 

草原に足を踏み込むなり、ファルコンに襲われた。

なんか鮮やかな色彩が視界の隅に入ったな、と思ったとたん、黄金に輝く猛禽類が、その華やかな赤と緑の翼をはためかせて、眼前に踊りこんできたのだ。

こいつ、動きがすばやい…!

いきなり横から来られたため、3人の陣形が崩れてしまった。

「ミリアム!」

ガラハドが叫ぶ。

大丈夫よ、こいつ1匹くらい!

「ヘルファイア!」

あたいより派手な見てくれなんて、生意気なのよっ!!

ごうっと音を立てて、ファルコンは燃えていった。

やったね♪ 勝利のポーズっ♪

「火の術法がアップ♪」

ざまーみろ。

 

「ミリアム、大丈夫か?」

ガラハドが駆け寄ってくる。

あら。

あたいのこと嫌いになってもこんなときは気遣ってくれるのね。

ほんとに…優しいなあ…ガラハド…。

「平気よ、あれくらい。」

ほんとはちょっとだけどきどきしたけど。

「ミリアム、ザコ相手に術は使うな。なるべく温存しろ。」

グレイが言う。

なによぉ、ガラハドみたく「大丈夫?」とかはないの?

大体、温存って言ったって、あたい、レイピアしか持ってないのよお。

と、その時。

「あれ? グレイ、あれ、花園じゃない?」

少し前方の地面が、ピンク色に染まってるのが見える。

「ほんとだ。行ってみよう、グレイ!」

ガラハドが駆け出そうとするのを、

「…いや、待て、ガラハド。」

グレイが止める。

「…入口から近過ぎるのが気になる。ここはパブのマスターが言ってた花園じゃないんじゃないか?」

「そんなん、行ってみなきゃわかんないじゃん。」

お宝の穴があったらラッキーよぉ♪

グレイは一瞬考える素振りを見せて、

「そうだな、ダメ元で行ってみるか。」

と言った。

花園を進むと、中ほどに穴があるのが見えた。

ぞくぞくする。

お宝よぉ〜♪ お宝の穴よぉ〜♪

わくわくしながら、あたい達は穴を降りていった。

 

ところが……

 

「ひッ!」

「うわッ!」

「いかん! 戻るぞ!」

穴の中は、外とは比べ物にならないほどたくさんの恐竜でひしめき合っていた。

ほうほうの体で外に転がり出るあたい達。

3人とも大慌てだった。

恐竜が追いかけてくる気配がないのを確認して、ほっと安堵する。

「…………な?」

グレイとガラハドが顔を見合わせていた。

「…ああ。」

 

気を取り直して、あたい達は花園を出て、草原をなおも奥へと進む。

歩き出したとたん、前から新たなモンスターが現れる。

「グレイ!」

グレイが、すばやく、その虎みたいなモンスター バファルタイガー アクスで両断した。

結構でかい奴だったのに、一撃だ。すごいなぁ。

仲間の血の臭いをかぎつけたのか、モンスター達が寄ってきていた。

それをグレイとガラハドが、次々に倒していく。

うわー。二人ともめちゃめちゃかっこいー。

でかい二人が、完全にあたいの盾になってくれたため、はっきり言って、あたいの出番は殆どなかった。

まぁ、あたいのレイピアじゃあ、コロコロムシ一匹倒すのがせいぜいだったんだけどさ。

こうして見ると、グレイとガラハドの戦い方は、ほんとに対照的だ。

ガラハドがほんとに一生懸命、って感じで、もくもくと、いかにも軍人らしいまじめな剣さばきで両手剣バスタードソードを振り下ろしているのに対して、グレイの戦い方は型も何もあったもんじゃないって感じだ。

でも、やみくもにアクスを振り回しているように見えて、その動きには一片の無駄もない。

確実に一撃で敵を倒している。

不意にあたいは、モンスターと戦うグレイの口元に、薄笑いが浮かんでるのに気がついた。

この男…殺戮を楽しんでる。

瞬間、背筋がぞくっとした。

そういえば、あたい、グレイの事は何にも知らない…

この男は、何人なんだろう? ローザリア人でもない、クジャラート人でもない、たぶん、混血だろうとは思うけど、どこの国の顔もしていない。

これほどの腕があれば、どこの国の軍にだって入れるだろうに、なんでこんな、リスクの高い冒険者なんかやってるんだろう。

ガラハドは…知ってるのかな…? グレイの素性…

「ミリアム!」

いきなり名を呼ばれて我に返った瞬間、ひゅんっと風を切る音がして鼻先を何かが掠めた。と思ったら、グレイがあたいの前に勢いよく飛び込んできた。

がしゅっ!と鈍い音がして、巨大蛙がもんどりうって倒れる。

ガラハドも慌てて駆け寄ってきてあたいを抱きかかえる。

「ミリアムっ! 何、ぼーっとしてるんだ!」

ガラハドに怒鳴られる。

しまった…ほんとにぼーっとしてた…。

グレイは平然とした顔で振り返る。

「考え事は町に帰ってからしろ。」

「あ…うん、はい…。ごめんなさい…。」

慌てて謝りながら、あたいは、ちょっとどきどきしていた。

今、あたいを助けてくれたグレイ、すごくかっこよかった…。

風のように銀色の影が視界に飛び込んできたな、と思ったら、もう、巨大蛙は真っ二つになってた。

すごくすごくかっこよかったぁ…。

 

「グレイ、一度ジェルトンに戻った方がいいんじゃないか?」

ガラハドが言った。

「ミリアムも疲れてきたみたいだし、傷薬がもうそろそろ心もとない。」

「え、あたいは大丈夫だよっ。」

あたいは慌てて答える。

それを、ガラハドは優しく制して、

「無理するな、装備も万全じゃないんだ。日も暮れてきたし。」

と言った。

「そうだな。ザコとはいえ、結構倒したし、装備を整えるくらいの金にはなったな…。」

グレイも同意したので、あたい達は一旦ジェルトンに帰ることにした。

なんかちょっと…悔しかった。

自分が足手まといになってる気がした。

ちくしょう…明日はもっとレイピアも術法もレベルを上げてやる…!

 

+ + + + +

 

ジェルトンに帰りついた頃には、もうすっかり夜になっていた。

あたい達は、店で傷薬を補充し、余った金で少し装備を強化した。

まあ、なんぼかはバトルも楽になるかな、程度だったけど。

それから3人でパブで遅い食事をして、宿をとった。

「温泉って聞いたんだけど…」

あくまでも温泉にこだわっていたあたいは、宿をとるとき、しっかりと宿屋の主人に、そこらへんの確認をするのを怠らなかった。

「ええ、温泉ですよ。お部屋のバスも温泉のお湯が出ますが、大浴場もありますよ。一日中、いつでも入り放題ですよ。」

大浴場♪と聞いて、あたいが小躍りしたのは言うまでもない。

部屋に荷物を置くのもそこそこに、大浴場へスキップしていった。

 

が、脱衣場の中にかけられた注意書きの看板を見て、あたいの足は止まった。

「…混……浴……」

混浴って混浴って…男と女が一緒って事よね。

一緒の? お風呂?

知らん男と???

だってだって、浴場の入口は男女分かれてたわよ?

中は…一緒って事?

嘘ぉ…。

平気なの? みんな。

…あ、そうか、平気じゃない人は部屋のお風呂を使うのか…。

どどどどどうしよう…。

部屋に戻る?

いや、落ち着け、あたい。

たかが混浴ぐらいでビビるようなウブな小娘じゃないだろう、あたいは!

あたいは、おっかなびっくり脱衣所から大浴場を覗き込んだ。

 

うわあ♪♪♪♪

 

すごいすごい、ほんとにおっきなお風呂。

ちょっと露天風…ってか、熱帯ジャングル風にこしらえてあって、確かに、向こうの方に男性用の脱衣所からの入口は見えたけど、女性用の入口とはかなり離れている。

それに、真ん中に、作り物の岩が、でん、と鎮座していて、一応、こちらから男性用の入浴スペースは見えないようになっていた。

まぁ、乗り越えようとすれば乗り越えられるだろうけど、そこまでするツワモノもいないような気もする。

覗くぐらいならされるだろうけど、その程度ならまあ…ねぇ…。いいかなぁ…。

ええい、女は度胸だ。

多少見られるくらいなら女冥利に尽きるってなもんだわ。

あたいは意を決して服を脱いで、大浴場に入っていった。

何人か女の人が入っていたけど、何しろ浴室が広すぎて世間話をする距離でもない。

わざわざ寄ってくのも変だし。

体を洗ってから、浴槽に入る。

「いたたたたたた………」

すっごい熱い。

耐えられないほどじゃないけど、どうもバトルでスリ傷キリ傷つくったらしくて、それにお湯が沁みて痛い。

なんか肌がぴりぴりする。

我慢して肩まで浸かっていると、だんだんと痛みが和らいでいく。

はふー…幸せ…♪

疲れも取れてくる感じ。

お湯の中の肌に触ると、ほんとになんだかすべすべした感触がした。

なんか嬉しい♪

 

ふと気がつくと、浴室の中はあたい一人になっていた。

もう遅い時間だもんなあ…。

こんな広いお風呂をあたい独り占め♪ うふふ♪

 

「………ぁ………」

 

え? 何?

あたいはどきっとして辺りを見回す。

誰もいないのに、声がした…?

ななななな何???

途端に怖くなる。

「……っ……」

再び、気配。

けれど、あたいはもうびくつかなかった。

声の正体に気がついたからだ。

…誰かこんなところでヤッてやがる…。

男湯の方だ。

なんとなく、もうお約束のように誰か分かっちゃった気までするな。

こんな、誰が入ってくるか分からないような所で堂々とヤれる奴なんて、そうはいないだろう。

あたいは、水音を立てないように、気配の方…男湯の方に泳いでいった。

浴槽を隔てた作り物の岩に手をかけて、そうっと向こうを覗き込む。

…ほーらね。

「んん…っ ふ… んっ… う…」

案の定、やってるのはグレイだった。

女は、船を降りて早々に声をかけてきた、あの女だ。

ちゃっかり宿まで張ってやがったのか。

女は、グレイの足の間に屈みこみ、おっぱいでグレイのでかいのをしごきまくり、先端をすごい勢いで舐め回している。

グレイはといえば、薄笑いを口元に浮かべながら、女の喉の奥をご自慢のブツでえぐってみたり、指で女の乳首を捻り上げてみたり、足の指を女のアソコに突っ込んでみたりして遊んでいる。

そのたびに女は、声を押し殺しつつもあふんあふんと喘ぎ声をあげるのだ。

「あァ… 素敵ィ…」

すっかり勃ち上がってヘソまで反り返ったグレイのを、いとおしそうに舐めあげながら、女が言った。

女が立ち上がって、グレイの腰に跨る。

思いっきり股を広げているため、あたいからは女のアソコからお尻の穴まですっかり見えた。

やっぱり商売女プロだ。アソコの毛がきれいに手入れされて、ラビアにリングのピアスが光っていた。

女が、もう熟れきっている自分のそこに、手馴れた仕草でグレイの太いのをあてがう。

肉厚のラビアを押し分けて、極太のブツがずぶずぶと沈んでいく。

「あう… あひィ…ッ…!」

信じられないほど太く長いモノが、女のアソコに収まった。

「ふ…うっ…」

女が抽迭を開始する。

相当に慣れた女のようだったが、さすがにグレイのモノはもてあますらしく、激しいピストンはせず、腰を回すようにして、ゆるやかな動きで腰を使い始めた。

「おふぅ…っ はんん… こ、こんな、の…初めて、よ…。スゴイぃ…」

本気でヨガッてる。

女のアソコが、グレイのを根元まで咥え込むたび、じゅぶっ ぢゅぐっ というエロい音を立てて、だらだらと淫液があふれ出てくる。

「そんなんじゃ俺はいつまでたってもイかねぇぞ。」

それまで自分は全く動かず、女がするのに任せていたグレイが、不意に女の腰に手を添えた。

両の手で、力強く女の腰を掴み、固定する。

そうしておいて、グレイは、思い切り下から自分の腰を突き出した。

「ひいいいいいいッッッ!」

女が、そのでかい乳を大きく揺らしてのけぞる。

構わず、グレイはがんがんと腰を振る。

「ひいッ! ひいィッ! ああッ! ふ、深いぃぃっ!!」

女が悲鳴のような嬌声を上げる。

グレイが力任せに突き上げるたび、女の乳がたぷんたぷんと弾む。

「あひっ! あひぃっ! ああんっ!」

もう女は半狂乱だ。

「いくっ! いっちゃうっ! いっちゃううううっ!」

女がグレイの首に両手を回して縋りつく。

女の乳の中に、グレイの顔が埋まる。

グレイが、乳から少し顔を離して、その乳首を歯を立てた。

「んああああっ!」

グレイの首に縋り衝いたまま、女が激しくのけぞった。

その背中ががくがくと震えたのが、あたいの位置からもはっきりと見えた。

 


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