■ 背徳の昼下がり ■
【2】
黄金のグラデーションに光が走った。
強引に体をひっくり返され、腰を掴んで引き寄せられた。
そのまま、慣らしもしないそこに、ゾロの剛直が突き込まれる。
「あぅァッ!!」
サンジの背がのけぞる。
それでも再会してからほぼ毎日ゾロに犯され続けているそこは、柔らかくとろけてゾロを受け入れた。
柔らかくゾロを受け止めて、きつく締め上げる。
ゾロの為の、躰。
いきなり容赦なく、太く大きな楔に根元まで穿たれ、
「ひッ! ィあああ!…!!」
サンジはあられもない悲鳴を上げた。
「でけェ声出すな。外に聞こえちまうぞ。」
後ろからそう囁かれ、サンジはぎくりと体を強張らせた。
そうだった。ここは車の中。
シェードがおろしてあるから車内から外は見えないが、声は漏れてしまうかもしれない。
慌てて自分の手で口を抑えたサンジの耳元で、不意にしゅるりという衣擦れの音がした。
驚いて振り向く間もなく、サンジの視界は闇に閉ざされる。
何か布のようなもので、目を塞がれた。
「何、ゾロ…。」
「興奮すんだろ、この方が。」
耳元でゾロの声がした。
次いで、がこん、という音がした。
ハッチバックを開けた音。
そこを開けられれば、車内は外から丸見えになる。
こんなところで全裸で絡み合っていれば、何をしているかなど一目瞭然だ。
サンジの脳天から血の気が引く。
こんな姿を、誰か、通行人にでも見られたら…………!
焦ってもがくサンジの体を、ゾロが挿入したまま抱え上げた。
視力を奪われた中、突然体が浮いて、サンジの体が強張る。
ゾロが何をするつもりなのかわからなくて怖い。
後ろから抱えられ、体を起こされ、サンジは下から貫かれる。
背面座位。
サンジの顔も、サンジの股間も、結合部も、何もかも晒される体位。
「や、やだ! ゾロ!」
サンジの体が恐怖に竦む。
「いいじゃねぇか。そこら中の奴らに見せてやれよ。てめェがどんなに淫乱か。」
言うなり、ゾロの手が、サンジの両膝の裏を掬い上げた。
大きく股を広げられる。
「いやだあっ!」
「ああ、なんか犬連れた親父がぎょっとしてこっち見てんぜ?」
「ひッ!」
逃れようと抗うサンジの体を、ゾロは深く貫く事で押さえ込む。
「ゥあっ…!!!」
「どっかの奥さんが慌てて逃げてった。」
「あ、あ…っ…!」
ゾロが、奥まで貫いたそれをゆっくりと引き抜きだした。
「んぅッ…!」
「高校生ぐらいのガキが何人もてめェを見てるぜ。」
サンジの全身がびくりと反応する。
ほんの少し引き抜いたかと思うと、勢いよく奥まで挿入される。
ひっ、とサンジの喉が鳴った。
強すぎる快楽に、塞がれたサンジの瞼の裏に、いくつも銀の花が瞬く。
「見られてるぜ、全部。ああ、ガキ共にはちと刺激が強いか。血走った目で覗き込んでやがる。」
「あ… あ あ、や…ぁ…。」
いくつもの視線に晒されている自分の体は、どんなに浅ましくみっともない事だろう。
それから逃れたくて、サンジは身を捩る。
「逃げんな。見てもらえよ。涎たらして昼間っから間男くわえ込んでる、エロい奥様のツラをな。」
かあっとサンジの全身が羞恥に熱くなった。
その瞬間、ゾロを受け入れたサンジのそこが、ひくひくと不規則に収縮した。
体内のゾロの硬さを知覚してしまい、サンジの体に羞恥だけではない熱が生まれる。
「ずいぶんと良さそうじゃないか。見られて感じるのか?」
言葉でも嬲られ、サンジの体にぞくんと快感が走る。
恥ずかしいのに、いたたまれないのに、いやなのに、感じてしまう。
いったい何人の目に晒されている、この姿は。
「んあ… あァ… ア、ふ…」
目隠しされていても、自分の股間で勃ち上がったペニスから、とめどもなく先走りがあふれているのが、わかる。
全部、見られている。
ぐちゅり、と結合部から音がした。
ゾロはわざと、腰を回すようにして抽迭を繰り返している。
見せつけてる。
見られてる。
ひくつきながら男根をくわえ込んでいる後孔も、
どろどろに濡れ続けるペニスも、
さんざん愛撫されて真っ赤に充血して勃ち上がった乳首も、
情交の痕が色濃く残るこの体も、
ひっきりなしに喘ぎ声を上げて、快感に蕩けきった顔も。
「ヒ、あああっ… ああっ!」
いきなり快感が体の奥からぐわっと駆け上がってきた。
それは脳天を突き抜ける。
びくん、びくん、と全身を激しく跳ね上げさせながら、サンジのペニスから精液が迸る。
「あ あ あ あ あ あ あ あ 」
衆人環視の中で射精している。
そう思うだけで、脳神経が焼け付くほどの快感を覚えた。
全身に電気でも流されたようだ。
強すぎる快楽は精神を磨耗させる。
吐精し終えて、サンジはぐったりと背後のゾロに身を預けた。
ゾロのモノはまだ体内に治まったままだ。
時折、名残のようにひくんひくんとそこが蠕動して、ゾロに刺激を与えているのがわかる。
快楽が去ってしまえば、後に残るのは情けなさと後悔と絶望。
他人にこんな姿を見られたという事と、見られてイッてしまったという自分への嫌悪。
「すげぇイキっぷりだな。そんなによかったか。」
また淫乱と罵られるのだろう。
そう思ったとたん、目隠しに塞がれた両目から、涙が溢れてきた。
もう限界だった。
おもちゃのように嬲られる事に。
セックスの事しか考えてない色キチガイのように扱われる事に。
それが他でもない、ゾロから与えられる事に。
それでも拒めない自分に。
それでも、触れてくるゾロの手を嬉しいと思ってしまう自分に。
ゾロから与えられる事は、それが苦痛だろうと屈辱だろうと、受け入れてしまうだろう、自分に。
もう、耐えられない。
満足か、ゾロ。
こんな風に俺を追い詰めて、弄んで、満足か?
大声で詰ってやりたいのに、それすらできない。
サンジの心に巣食う、ゾロへの強い強い負い目のせいで。
「…っ … …。」
こみ上げてくる嗚咽をこらえることもできない。
「サンジ?」
不意にギョッとしたような声が、耳元でした。
「泣い、てんのか…?」
何を今さら。
ゾロがサンジの顔を覗き込む気配がして、サンジは唇を噛んで顔を背けた。
つながったまま、ぐるりと体を反転させられた。
体内のゾロの角度が変わり、それに中をかき混ぜられるように感覚がして、サンジは思わず呻いた。
ゾロと向かい合わせにされ、目を覆ったものをむしりとられる。
ぼろぼろと涙を零すサンジの顔を見て、ゾロがちっと舌打ちをする。
舌打ちの音に、サンジの体はびくっと反応してしまう。
ちくしょう。
そう思うのだが、ゾロに対してびくつく気持ちを抑えられない。涙も止められない。
「…よく見ろ。」
ゾロが言った。
「…誰も見てやしねぇよ。」
慌てて振り向いた。
「あ…。」
ハッチバックは大きく開け放たれていたが、そこは、砂利置場かなにかの空き地だった。
近隣に住宅もなく、辺りには人一人、いない。
そういえばサンジが車に乗り込んだあと、ゾロは車を発進させて、どこかで停車させていた。
サンジは外の見えない荷台スペースにいたから、車がどこに停まったのか、知らなかったのだ。
ほっ、と息をつく。
見られてなかった。誰にも。
安堵の気持ちが広がる。
「…泣くほどいやだったんなら、本気で抵抗しろよ…。」
ゾロが小さく呟く。
「…いやだって、俺、言った。」
サンジも小さな声で答える。
喘ぎすぎて、声が掠れていた。
「口だけだろうが。お前が本気で嫌がってるのかそうじゃないかくらい、俺にはわかるんだよ。本当に嫌なら、受け入れるような真似、すんなっ…。」
何故か悲痛な叫びに、聞こえた。
ゾロがそのままサンジの体を優しく押し倒す。
両足を抱え上げられ、ゾロがゆっくりと抽迭を始めた。
「あっ… んん…ァ…。」
すぐにサンジは快感に包まれる。
思わず、目の前のゾロにしがみついた。
「ほら。…すぐ受け入れる…。」
ゾロがボソっと呟いた。
「お前がそんなだから俺は……。」
「俺は」、なんだろう。
けれどその後は続けられる事はなかった。
ゾロは黙って腰を使う。
サンジの背をゆるゆると快感が這い登っていく。
「あ、 あ… イ、あ…。」
一度高められた体は、すぐに熱を取り戻す。
「イキそう、か?」
優しい声に囁かれて、サンジは無我夢中で頷いた。
「イかせてやるよ、サンジ…。」
ゾロの声はどこまでも優しい。
さっきまでの冷たい声が、別人のようだ。
「イかせてやる…
俺がいないと生きていけなくなるぐらい…。
俺でなきゃ、イけなくなるぐらい…。
だから、…サンジ…、だから…。」
優しい声で何度も何度も囁かれながら、サンジは緩やかに絶頂に達した。
2004/11/08