【16】
「あああー…ッッッッ!!!」
逃げを打つサンジの体をがっしりと抱え込んで、熱くて太くて硬いものが、ずぶずぶとサンジの中に沈んでいく。
閊えると、いったん引き抜かれる。
そうしてまた、今度は更に奥まで入ってくる。
無意識の内にサンジは手を振り回し、サンジの腕を拘束した鎖ががしゃがしゃと音を立てた。
「あ、うあ…、あっ…、や、あ、…う…。」
びくびくと脈打つ、逞しい熱が、体の中に入ってくる。
どろどろとした汚い膿だらけのサンジの体内に、ゾロの─────命が。
「あ、あ、あ、…ゾロ…、ゾ、あ、ゾロ…。」
ダメだダメだと思うのに、サンジは全身が震えるほどの幸福感に、抗えなかった。
犯されている、とは思わなかった。
ゾロの命を自分の体が包み込むことができた。
それが、嬉しくて嬉しくてならなかった。
体の中のゾロの熱が、びくん、びくん、と力強く脈打っているのがわかる。
ゾロの命が自分の中で息づいている。
ゾロが自分の奥深くまで入ってくる。
眩暈がするほどのエクスタシー。
体の奥から、ぐわっと大きなうねりがこみ上げてきた。
全身に鳥肌が立つ。
うねりは腰を突き抜けて、サンジは呆気ないほど簡単に遂情していた。
弾みで、体内のゾロを力いっぱい締め付けてしまい、背後でゾロが唸る。
強く締めすぎたのだろう、何事かと覗き込んできたゾロの、息を呑む音が聞こえた。
「お前…、挿れただけでイッちまったのか…?」
サンジの性器は、可愛らしく震えながら射精し続けている。
それをゾロは信じられない思いで見つめた。
苦痛を与えたくないと思っていた。
気が遠くなるほど気持ちよくさせたいと思っていた。
とろけるほど優しくしたいと思っていた。
なのに、サンジから「もうやめろ」と言われて、拒まれて、一瞬で逆上した。
目が眩むほど我を忘れて、力任せにその体を貫いた。
挿れた瞬間にサンジがあげた悲鳴が、まだ心に刺さっている。
それなのにサンジの体は、柔らかくゾロを包んで、嬉しそうに吸い付いてきた。
まるで懐くようにやんわりとゾロを締め付けてきた。
体を進めて、サンジの奥を探ると、突然サンジの体が痙攣した。
しなやかな体が優美にたわんで、喉の奥から、子猫が鳴くような声を漏らした。
きゅうっと苦しいほどに、ゾロのモノが締め付けられる。
その有様に、嫌がっているのか、と眉根を寄せて後ろからサンジを覗き込んで、────ゾロは絶句した。
勃ち上がったサンジの性器が、ひくんひくんと小刻みに揺れながら、白濁を溢れさせていた。
触れられもしていないのに。
顔を見れば、サンジの蒼い瞳はとろりと潤み、白い頬は上気して、完全に気を飛ばしている。
官能にまみれたその表情に、ゾロの体が熱を持つ。
呼吸するのも忘れて、ゾロはサンジの顔に見入っていた。
うっとりと蕩けていたサンジの瞳に、ゆっくりと正気が戻ってくる。
「あ…………。」
何かに気がついたように、サンジが小さく呻く。
その瞳から見る見るうちに涙が溢れ出したのを見て、ゾロは焦った。
「お、おい、コック…。」
「ご…め、ゾロ…。」
─────あ?
吐かれた言葉の違和感に、ゾロは面食らう。
ごめん、と謝らねばならないのは、ゾロの方のはずだ。
サンジの意思を無視して、サンジの体を犯して。
サンジの瞳からは、あとからあとから涙が滴り落ちる。
「俺…、こんな…、てめ…、けが……じゃ、なかっ…。ごめん…。」
「あ? 怪我?」
嗚咽交じりの小さな呟きは聞きとりづらく、ゾロは「怪我なんかしてねェぞ、俺は。」と言おうとして、…不意に慄然とした。
─────てめェを汚すつもりじゃなかった。ごめん。
確かにそう、聞こえた。
「…………なに言ってんだ…お前…。」
「おれ、俺が…ぜんぶ悪…、おれが…おれさえ…てめ、を好きになっ…たりしなけりゃ…、こんな、こん…」
「待て、てめェ。」
なんて言った。今。
「ごめん、おれ、お…、おれ、きたね…っのに…、てめに、ぜんぶ、みえちまう…、きたねぇの…。」
「あァ?」
─────汚い…? 誰が…?
サンジは、まるで正気が飛んで幼児退行でも起こしたかのように、ぐすぐすと泣き続ける。
それがあまりに痛々しくて、ゾロは無我夢中でその体を後ろから抱き締めた。
その拍子に、ゾロのモノがサンジの中により一層潜り込み、サンジが呻く。
構わず、ゾロはぎゅうぎゅうとサンジを抱き締める。
「何言ってんだ。お前のどこが汚い?」
「きたね…よ、そこから、裂いてみろよ。俺ンなかっ…ぐちゃぐちゃで真っ黒でっ…。」
ぎょっとするような事を言う。
「裂いたってきれーなピンクだと思うがな。お前の中は。」
「んなわけねー…。薄汚ェ…。俺…ずっとルフィに嫉妬して…。」
─────ルフィに嫉妬…?
「てめ…と、ルフィの、あいだ…に、割りこも…な…て、思ってな…のに…、なかったはずなのに…、おれ…おれ…、てめ、に、惚れちまっ…から、うらやまし…て、あきらめられなくて…、ごめん…、きたないことさせて…、ごめんっ………」
「おい…、おい、コック…。」
「こんな…てめぇに、こんなこと…っ…、こんなふうにてめェを汚すつもりじゃ…なかった、のにっ…!」
堰を切ったように、サンジの目から涙がどっと溢れてきた。
それをゾロは息を詰めて見つめていた。
サンジがすすり泣くたび、ゾロを受け入れたそこも、きゅくん、きゅくん、と蠢く。
泣きながら、甘えてくるように。
どうしてあのクソ生意気なコックが、こんなにも弱っているんだろう、と思っていた。
何がそんなにも、この男から何もかもを削り取っているんだろう、と思っていた。
─────原因は全て、俺、か…?
あの恐ろしくプライドが高く、意地っ張りで人に弱みなど見せないコックが、ゾロを好きだ好きだと何度も口にしながら、子供みたいにあけすけにしゃくりあげている。
満座の視線に晒されているのに。
この男がこんなにも無防備に泣いているのは。
この男がこんなにもたやすく傷ついているのは。
全てゾロのせい。
ゾロのための涙。
ゾロがつけた傷。
ぞくり、と戦慄に似た何かが、背筋を貫く。
それはゾロの下半身を直撃する。
「ひあッ…!!」
サンジに捻じ込んだゾロのそれが、太さと質量を増し、サンジの体が大袈裟なほどにびくついた。
構わずゾロは、ゆっくりと抽迭を開始する。
上半身はしっかりとサンジを抱きこんだまま、ゆっくりと引き抜いて、じわじわとまた埋め込む。
「や、あ…っ…あ…あっ…、うぅ…んッ…。動か…動かすな…ッ…!」
「甘ったるい声出しやがって…。」
そんな声で動かすなといわれても、ねだっているようにしか聞こえない。
ぱたぱたぱた、とサンジの瞳からまた涙が零れる。
この涙も全部、全部ゾロがつけた傷だ。
ゾロだけがこの男にこんな涙を流させられる。
ゾロだけがこの男に傷をつけられる。
ぞくぞくとゾロの全身を満たす、喜悦。
凄まじいまでの獰猛な独占欲。
「コック…、俺が今どれだけ嬉しいか、てめェにわかるか…?」
「うあ…っ、やめ…、抜けっ…! はぅ…。」
「誰が抜くかよ。」
「やめろ…おれんなか…ぐちゃぐちゃできたねぇ…っ…、ふああっ…。」
ずん、とゾロが強く突き上げると、サンジの中はきゅうっと絡みついてくる。
「あああっ…!」
「確かにぐちゃぐちゃにはなってるな。ぐちゃぐちゃっつうか、ぐちゅぐちゅっつうか、ぬるぬるっつうか。汚かねぇぞ? エロいだけだ、問題ねェ。」
「ば…馬鹿野郎っ…! ぅあっ…、そ、そういう意味じゃ…。」
「ならどういう意味だよ。」
「おれン中に突っ込んだら、てめェが汚れる…ッ!!」
きゅううううっとサンジの中が締まる。
放せ、とか、やめろ、とか、サンジがそう言うたびに、サンジの中は、言葉とは裏腹に、ゾロを痛いほどに締め付けてくる。
放すな、やめないでくれ、と言わんばかりに。
たまらなく愛しくなって、ゾロは後ろからサンジの顎を掴んで頭を固定し、その耳たぶに噛り付かんばかりに口を寄せた。
「俺が…? バカ言ってんじゃねェ。汚れんのはてめェの方だ。」
わざと淫猥に囁いた。
ぞくん、とサンジの体が震える。
「てめェがどんだけ自分を汚ェねぇと思ってるか知らねェが、そんなもん目じゃねェくらい、これからてめェん中は俺のザーメンでぐちゃぐちゃになんだよ。」
まるで睦言を囁いているような甘いテノールがサンジの耳を擽る。
「てめェの中をぐちゃぐちゃにすんのは俺だ。てめェのハラワタの奥まで犯すのも俺だ。てめェん中の奥の奥まで、全部犯してやる。ケツからあふれてくるほど腹ん中にザーメンぶち撒けてやる。」
「あ…、あ…っ…。」
「てめェの全部、俺で満たしてやる。」
「…………ッ!!」
サンジが感極まったように目を閉じた。
その顎を掴んだゾロの指に、かたかたと震えが伝わってくる。
「どー…しよ…、ゾロ…。」
熱に浮かされたような声だった。
「あ?」
「お、れ…、のーみそ…溶けちまいそう…。」
ゾロの口元に笑みが浮かぶ。
「溶けちまえよ。」
ゾロががつん、と強く、腰を突き上げた。