○ 幸せ剣豪 ○
【8】
「違ェよ、片っぽずつ、こう。」
「こうか?」
「そうそう、それを早くしていく。」
「早く…?」
「だーっ! なんでそうなっちゃうんだよ、片足二回ずつケンケンするんだってば。」
お日様が照ってぬくい甲板の上で、剣士さんは、コックさんの指導の元、さっきからずうっと奇妙なステップを踏んでいる。
「あれ、何。」
ナミさんの三白眼が、しらーっとそれを眺めている。
「スキップ、ですって。」
それにロビンちゃんがにこやかに答える。
「はあ?」
「コックさんがね、剣士さんにスキップ教えてるみたいなの。」
「………スキップ……、できないんだ…ゾロ…。」
まあ、スキップできなくても大剣豪にはなれるもんね。と、ナミさんはとりあえずため息をついてみた。
ロビンちゃんは、一生懸命スキップの練習を続ける剣士さんとコックさんをニコニコしながら眺めている。
「うっし、そんなもんだ。」
「おう。」
「んじゃ本番だ。スキップでメリー号一周。だいじょぶか?」
「おう。」
二人で仲良く、スキップでメリー号を一周しはじめた剣士さんとコックさんの後を、船長と狙撃手と船医がはしゃぎながら追いかける。
「海賊団じゃなくて幼稚園だわね…。」
ナミさんが呟いた。
そんなわけで、剣豪は今日も幸せだった。
END
初出/同人誌「Cramp」ゲスト原稿
発行/Mong-Hai様・2005/02/19