第20話「生存可能時間」

「おい、葛城、また飲み過ぎだぞ。」

フエ〜ッ、すでにベロンベロンに酔っ払っている葛城ミサト。リツコ曰く、

「無様ね。」

とのこと。ここが、自分の友人の結婚式場だという事もすっかり忘れている。ミサトはビール5本、ワイン1本半、ウイスキー100ml、日本酒半本分、飲んでいる。これで、酔わないほうがおかしい。

(俺だったら、急性アルコール中毒で、死んでるかもな。)

新婚夫婦が、誓いの口づけをする前に、ミサトは完全にダウンしていた。


「あれ・・・、結婚式は?・・・ってここラブホテルじゃない。」

「結婚式はとっくに終わったよ。んったく、大学の友人の結婚式だってのに、酔って寝ちまいやがって。あんな状態でほっとくわけにも行かないから、安くて眠れるところに運んできたんだ。普通のホテルは高いからな。」

ははは、と、ごまかし笑いをするミサト。

「でもま、せっかくこんな所まで来て、なんにもしないんじゃ私もね。どう加持。」

<この先は書くことができません。でも、TVじゃ音声だけやったんだよな。>二人の愛の行為が終わった後、ミサトがつぶやく。

「私達、シンスケ君の言った通りになっちゃったわね。」

加持は、その問いに答えることはなかった。しばらく、二人は余韻に浸っていた。


翌日、第12使徒が襲来した。あわてて、走って発令所に向かってくるミサト。

「ごめん、遅れちゃって。」

「なに、やってたのミサト。完璧に遅刻よ。作戦会議もう始まってるわよ。」

(・・・昨日、家に帰ってこなかったし、兄さんの言ってた通りラブホテルに行ってたんだな。)

「リツコ、目標は?」

「パターンオレンジ。ATフィールド反応なし。新手の使徒かどうかは、MAGIが判断を保留してるわ。」

(使徒かどうかわからない?シンスケ君はそんなこといってなかったわね。そこまで知らなかったのかしら。)

「みんな、聞こえる、目標のデータはまったく、0に等しいわ。とりあえず、シンジ君を前方で、後の二人はバックアップに回って頂戴。」

「シンジが前方ぅ〜。まあ、命令じゃ仕方ないわね。」

実は、これはすべてシンスケの作戦である。会話もあらかじめ、シンスケの秘密を知る皆で相談して、決めてあったものだ。

(シンジが死んだら、俺のせいだな。)

使徒に接近し、バレットガンで使徒を威嚇射撃するシンジ。しかし弾が命中する前に敵が突然姿を消す。

「重力以上っ!パターン青!使徒発見!」

初号機の周囲に影が忍び寄ってきた。影に向かって発砲するシンジだが、まったく効き目がない。

「初号機、影に飲み込まれています。」

(ここまでは、うまくいったな、後は初号機しだいってとこか。)

初号機は使徒に完全に飲みこまれていった。

「アスカ、レイ退却して、速く。」

「ちょっと、まだシンジが。」

「命令よ。退却しなさい。」

誰も、これが、始めから用意してあった言葉だとは、気づいていない。


マヤによると、残りの初号機の内部電源は16時間とのこと。ミサトは暇を持て余していた。

色々シンジを助けようと、ミサイルを打ちこんではいるのだが、始めからそんなものが効かないのはわかっている。

(心配だけど、待ってるしかないのよね。)

「初号機パイロット、生存可能時間、残り30分です。」

いつのまにやら15時間以上経過していた。リツコの発案により、N2爆弾での初号機強制サルベージ作戦を実行することが決定した。作戦開始時刻まで後17分である。

(N2爆弾・・・、こんな作戦うまく行くわけないわ。この作戦の前にシンちゃんが帰ってこなかったらアウトね。)

バキッ、バキッ、バキッ、球形の使徒がおびただしい血を流し、そこから、エヴァの頭が、腕が、足が、全身が出てくる。それは、すざまじく残酷な光景だった。思わず目を伏せるマヤ。

「そんな、内部電源は0なのよ。」

リツコの言葉をよそに、使徒は真っ二つに裂け、さらに、おびただしい出血をし、もはや使徒は原型をどとめていない。見えるのは、ただ血のみである。

(シンスケ君、ここまでスゴイ光景だとは思わなかったわ。)

あわてて、シンジに駆け寄る救助班。シンジはまったくの無傷だった。

(まったく、死ぬかと思ったよ。最後のほうなんか、酸素がなくなって息も苦しくなってきたし。・・・兄さんも無理させるな。)


「今回の事件の唯一の当事者、被験者、初号機パイロットの直接尋問を拒否したそうだな、葛城三佐。」

(こいつらが、シンスケ君の言ってた、人類補完計画、っていう悪魔の計画考えてるのよね。まったく物事のわからなくなった爺め、かならず殺してやるわ。)

「はい、彼の精神状態を考慮してのことです。」

以下、使徒が心を持っているのかどうか、ミサトに聞く、ゼーレメンバー。

思いっきり不快感を感じながらも退場するミサト。突然、碇ゲンドウがスクリーン画面に現れる。

「碇君。どう思うかね。」

「使徒は知恵を身につけています。残された時間は・・・。」

「あとわずか、ということか。・・・ところで碇、あのサードマイナー(碇シンスケ)とは何者だ?」

「ただの予備です。」

「まあ、よかろう。碇、貴様の任務くれぐれも忘れるでないぞ。」

「了解しました。」

ふっと、ゼーレメンバーが姿を消す。その後、ゲンドウも、モニターから姿を消した。

(やはり、サードマイナーは、ゼーレが送りこんだ組織でもなかったか。これで、いつ消しても問題ないな。・・・だが、利用できるものはもっと利用させてもらうとするか。消すのはいつでもできるからな。)

碇シンスケの命は、首の皮一枚でつながっていた。


NERV上層部では、フォースチルドレンを鈴原トウジにすることがすでに決定していた。

「鈴原トウジの近親者のインストールは終了したか?」

「はい、すでに四号機に、彼の妹をインストールしてあります。」

NERV上層部は、四号機に高シンクロ率を求めるため、トウジの妹を生きたまま、四号機に乗せ、シンクロ率を人為的に400%にし、トウジの妹をエヴァに魂を溶かしたのだ。もう、生前の姿に戻すことはできない。

トウジが四号機パイロットに選ばれたわけは、妹との強い絆であった。

EVAにインストールされた人物とパイロットとの絆が強ければ強いほど、シンクロ率は増すのである。

シンスケは、トウジの妹がエヴァにインストールされてしまうことは、薄々感づいてはいたが、彼の力では止めることはできなった。

「では、フォースチルドレンの打診は任せた。」

「了解しました。」


その日のうちに、リツコがトウジの家を訪れた。突然のNERVからの客に慌てるトウジ。

「単刀直入に言います。あなたにエヴァ3号機の操縦者、フォースチルドレンになっていただきます。」

えっ、混乱してしどろもどろに理由をたずねるトウジ。

「なんでわいなんかが。」

「遺伝子の関係であなたがEVAの体質に合う人物だったのよ。NERVでは集団予防接種のさい、血液検査をして適格者を探しているのよ。」

「でも、わい、そんなパイロットやるほど運動神経よくないし・・・。戦闘訓練なんて受けたことないし。」

「シンジ君なんて、運動神経は、あなたよりもっと悪いわ。でも、彼は事実上のエースパイロット。理由はエヴァに乗るのに一番良い体質の遺伝子を持っているからよ。」

「はあ。」

リツコの、血液の話しはまったくの嘘である。

「それに、パイロットになってくれれば、重態の妹さんを、最高級ランクの病院に転院させてあげるわ。手術料金も含めて、すべて無料でけっこうよ。」

「ホンマですか?」

「ええ。もちろんよ。」

もちろん、この話しも大嘘である。トウジの妹はもうこの世にはいないのだから・・・。しかし、トウジはこのリツコの言葉を完全に信じ、決心した。

「わかりました。わい、エヴァのパイロットになります。」

その頃,加持の情報でシンジたち一同はトウジの妹がエヴァにインストールされたことを知った。


後書き

第12使徒戦の描写は長くするつもりだったのに。なんで、こんな短いの(爆) 私の小説ってホント戦闘シーンが短い。長くしようと思ってもできないよぅ。

次回予告

「ついに始まる第13使徒戦。歴史では片足を失ってしまったトウジ。シンジは未来の自分を超え、トウジを助けることができるのか?次回、エヴァ2回目<シンジVS第13使徒>さあ、次回も冷えたビールでサービスよん!」


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