フォースチルドレンは、鈴原トウジになった。この情報は、ミサトによってシンスケ達にすぐ伝えられた。松城での起動実験は後、3日後との事だった。その日の学校帰り、シンスケとシンジはトウジに、話しがあるとのことで、家に誘われた。
「どうや、わいが作った、オリジナルカレーは。」
「・・・話しってのは、フォースチルドレンの件だろ。」
「なんや、もう知ってたんか。・・・パイロットになれば妹を、今よりもっと施設の良い病院に無料でしてくれるって言われて、勢いで承諾したんやが、どうも心配でな。」
「まあ、お前の場合は、まだいいよ。シンジなんて、始めてEVAを見た日に、いきなり使徒との実戦だぜ。」
「まさか、それは、妹・・・いや、シンジが転校する直前に来たあの使徒のことなんか。」
無言でうなづくシンスケ。シンジを殴ったことを、ますます後悔するトウジ。
「その、シンジあのとき殴ったのは、本当に・・・。」
「もうそれはいいよ、トウジ。」
しばらく、考え込んでから、いつもより、ずいぶんゆっくりした口調で話しだす、トウジ。
「EVAの起動実験とかいうのが、松城で3日後にあるんや。なんでもEVAって言うのは、ロボットのように、操縦するんじゃなくって、心で動かすって言われたんやが、どういうことなんや。」
「歩けっと思えば、EVAが勝手に歩いてくれるし、走れっと思えば、EVAが勝手に走ってくれるんだよ。」
トウジは、驚きで、目を丸くしながら、
「ホンマにそんなことで動くんか。・・・ワイにそんなことできるんやろか。・・・心配やな。」
「まあ、そう心配してたら、きりないぜ。こんな情けないシンジでも、できたんだから、大丈夫だろ。」
「そやな。」
(・・・大丈夫なんかじゃない。トウジがEVAに乗った瞬間、使徒に乗っ取られちゃうんだろ兄さん。兄さんの正体がばれると、色々ヤバイのはわかるけど・・・。やっぱり、僕にはトウジに危険な事をさせたくはないよ。)
「トウジ、実はトウジが乗ると、EVAが使徒に・・・。」
「シンジ。」
珍しく、人に怒鳴りつけるシンスケ。シンジは思わず沈黙してしまった。この二人のやり取りに、トウジは自分がEVAに乗ることに危険要素があることを、シンジ達が隠していると判断し、すっかりおびえてしまった。
(そやけど、いまさら、やめるわけには、いかんわな。)
「まあ、俺も、おまえらに話し聞いてもらえと、ちょっと気が楽になったわ。これからは、同じパイロットとしてよろしくな。」
「ああ、起動実験がんばれよ。」
レイの家で、シンジ・シンスケ・レイが紅茶を飲みながら、恒例になりつつある、使徒戦の作戦会議を開いていた。
「兄さん、トウジはEVAに乗って片足失ったんでしょ。やっぱり話した方が良いんじゃ。」
前回の第13使徒戦を思い出すシンスケ。自分が第13使徒戦に攻撃しなかった為、父がダミープラグを発動させ、トウジの片足は永遠に失われることとなった。
なぜ、あの時、エントリープラグを引きぬくと言う作戦を思いつかなかったか悔やまれる。
最後の使徒戦はゼーレにとって、自分の心を傷つけ、サードインパクトのよりしろにする為の策だったのかもしれない。
「兄さん、どうしたの。」
話し掛けても、無言の兄に心配をするシンジ。
「俺の正体をバラすわけにはいかん。なぁに、エントリ-プラグさえ、引き抜ければ、トウジは前の世界のようにはならん。頼んだぞ、シンジ。」
シンジは無言のままであった。
「もしもし、あっシンジ君。すぐNERVに来て、大変なことが起こったの。」
かなりあせっているマヤの声。
「わかりました。すぐ向かいます。」
(ついに、三号機が使徒に乗っ取られたか。)
急いで、NERVに行き、EVAに乗るシンジ。アスカ、レイもすでにEVAに乗っている。
モニターから見える、使徒に乗っ取られた四号機。これは、すでに知っている事実なので、パイロットに驚きはない。
「エヴァ三号機を現時刻をもって廃棄。目標を第13使徒と認定する。」
驚き、抗議の声を上げるオペレータ達。しかし、指令のゲンドウが一喝して、沈黙さぜるを得ない。
レイが、バレットガンで使徒の体制を崩し、アスカがプログナイフでその隙を攻撃しようとする。
しかし、使徒はバレットガンをよけようともせず、プログナイフで攻撃する隙がまったくない。
(打つ手がないわね。って、キャー-。)
使徒の攻撃で、地に倒れる弐号機。そのまま戦闘不能状態に陥る。
「レイ、近接戦闘は避け、バレットガンで耐えろ。今、初号機を回す。」
命令通り、バレットガンで攻撃するレイ。しかし、攻撃に集中するあまり、守備の隙をつかれた。
(しまった、やられたわ。)
使徒が獣のように零号機に飛びつき、零号機を地に伏せる。そのまま、使徒は強烈なパンチを数回、零号機にくらわせる。
使徒の腕の隙間から、触手が伸びてきて、零号機の右腕に侵食していく。
(使徒に零号機まで、乗っ取られるわ!)
「零号機の神経接続を切断しろ。」
「りょ、了解。」
「キャーーー-ーー。」
かなりのシンクロ率だったレイは、右腕に激痛が走る。普段クールなレイの顔すら、非常にゆがむ。
「零号機、弐号機とも戦闘不能状態になりました。」
(ここまでは、兄さんの世界と一緒になってしまったか。・・・僕が本当に歴史を変えられるのか。)
「シンジ、近接戦闘でエントリープラグを引き抜け。」
(そうだ、兄さんの言うとおりだ。こいつにバレットガンは効かない。近接戦闘しかない。いくぞー。)
猛烈な勢いで使徒に突っ込む、シンジ。しかし、敵の体当たりに吹っ飛ばされる。だが、シンジは起きあがると、再び使徒に突進する。初号機が使徒を地面に押し倒す。
(しまったエントリープラグが壊れる。)
しかし、EVAのパイロットを守る為、エントリープラグは非常に強固にできている。この程度で壊れるはずがなかった。
エントリープラグを見てほっとするシンジ。だが、そのほっとした瞬間を使徒につかれた。
バアッコーン、使徒が起きあがり、その勢いで初号機をふっとばす。
「初号機、ダメージは大きいですが、まだ戦闘可能です。パイロットの意識もはっきりしてます。」
(・・・こうなったら、第4使徒戦と同じ作戦で行くぞ。)
「ウオ-ーーー-ー。」
プログナイフを、剣道の中段の構えのままの状態で、使徒に突進するシンジ。その突進のスピートはすざまじく、使徒はよけきれず、プログナイフが腹に突き刺さった。動けない使徒。
(よし今だ。)
エントリープラグを強引に左腕の力で引きぬくシンジ。それをひきちぎることに成功すると、右手で、使徒に強烈なストレートをおみまいする。
今度は、使徒が吹っ飛ばされ、地面に仰向けになる。起きあがることもできない。
シンジは、エントリープラグをその場におき、先ほど同様、体当たりで、使徒の上にのっかかる。
(よし、首ごと、ひきちぎってやる。)
初号機は、首を腕に巻きつけ、使徒の首を折ろうとする。必死にじたばた抵抗する使徒、パイロットのシンジは激痛を感じたが、ついに使徒の首は切断された。
「第13使徒、活動を停止しました。」
「救急隊より連絡が。EVA四号機パイロットが無事生還したとのことです。けがも、軽傷とのこと。」
「ワア-ーーー-ー。」
発令所全体が、歓喜の声に包まれた。
(歴史が変わったな。よくやった、シンジ。まさか、使徒の首を切断させるとはな。)
後書き
なんとか、第13使徒戦終わりました。うむ、今回は少しだけ戦闘シーン長くできたかな。でも、まだまだ短い。僕の場合、短くまとめているのではなく、短くしか書けないのが悲しいです。「新たなる道」はまだマシだけど。
次回予告
「第14使徒戦、ついにシンスケが出撃する。今まで、常に力をセーブしていた彼だが、ついにそのベールが開かれる時が来た。次回、エヴァ2回目<シンスケ出陣>お楽しみにね。」