第20話「2つの人類補完計画」

停電がある事がわかっていた信長の指示で、あらかじめNERV本部に待機していたチルドレン3人。使徒が来ると直ちに出陣の準備に移る。エヴァのスタンパイは残ったわずかな電力を節約するため、可能な限り手動で行なわれる。

従業員は慣れない作業に汗だくだく。…リツコもミサトも忙しく動き回っている。…信長は周りを見渡し、作業のおおまかな進行具合をチェックする。

(…まったくこんな時に、ついてねぇな。俺が準備してなかったら、使徒と戦う前に人類滅亡だぜ!?)

通常より二倍以上の時間をかけ,ようやく出撃体勢が整った。信長はすぐさまエヴァ3体、すべてを発進させる。…いつものEVAの電力ケーブルが使えないため、EVAの内部電源5分で決着をつけねばならない。

「目標は強力な融解液で本部に直接進入を狙っているもようです。」

(自分の口から融解液…まったく使徒ってのは本当に人間と0.11%しか違わねぇってのが信じられないぜ。リツコの調査結果に間違いはないだろうが…。)

EVAが地上に出ると信長はすかさず、パイロット全員に指示を出す。制限時間5分、再充電ができないため、逃亡=人類滅亡を意味する。…三対一とは言え、不利な戦いだ。

敵に対する情報も少ない…。だが、ここで使徒を倒さねばならないのがNERV作戦部長である信長の仕事だ。…信長は無意識のうちに、自分の手をおもいっきり握り締めていた。

「アスカ、20秒間バレットガンで使徒にけん制攻撃を。シンジとレイはアスカのカバーに回ってくれ。」

アスカがにんまりとした笑顔を見せた。攻撃タイプの彼女は様子見・防御と言った作戦を嫌う傾向がある。この時点で、アスカを攻撃役にしたのは正解である。

「任せてください信長さん。じゃ、シンジとファーストはそこで私の華麗な戦いを黙って見てなさい。」

アスカは時々、『戦いは華麗に無駄なく美しく』と言う言葉を好んで使う。…だが、信長はこの発想が嫌いだった。…戦いは血が吹く殺しあいだ。そこに美しさなど存在するわけがない。

「はいはい。わかったよアスカ。」

「気にさわる返事ねぇ、バカシンジ。」

戦闘が始まった。バンバンバン,弐号機のライフルより攻撃が加えられる。…だが、使徒はすぐさま反撃に出た。融解液をエヴァ弐号機に向けて発射したのである。

その融解液は弐号機のボディを直撃。…弐号機の足の部分が少しずつ融けて行く。…人間で言えば、まるで火傷の跡の様なものができている。

NERV本部の職員の顔が一斉に青ざめる。…このままでは弐号機の足がすべて融けてしまう危険があるのは明白である。信長も慌ててシンジ達に解決の指示を出す。

「いかん!…シンジ、レイ撃て!」

バレットガンでエヴァ3体による,同時攻撃が加えられる。…と言ってもバレットガンの威力は弱く、たいしたことはないのだが…なぜかこの使徒には有効だった。

「ウラン弾による使徒へのダメージ,かなり大きい模様。」

まだ戦闘中にもかかわらず、アスカが思わずほっとため息を漏らした。シンクロによって、足が融けていきそうになる間隔がパイロットにも伝わってきたため,恐ろしくて仕方なかったのだ。

「よし。そのまま一気に倒せ!シンジ。」

(…始めてだな。こんなにバレットガンでダメージが与えられる使徒は。…今までけん制くらいにしか役にたたなかったからな。)

使徒の体はみるみる融けて行き、やがてその姿を消した。…拍子抜けするほど、あっけなく幕切れであった。…NERV本部からは安堵のため息が漏れた。

「よし、シンジ、EVAの電力はまだ残ってるな。エヴァパイロットはそのまま歩いて帰還しろ。」

(こうやって戦闘が終わって落ち着いてみると…簡単過ぎる、あまりに使徒を倒すのが簡単過ぎる。なんだこの歯ごたえの無さは。…まるで勝つ事が運命付けられたようだ。…碇司令もしかすると、これもあんたが仕組んだのか!?)

今回の使徒戦での死人は無く怪我人も数人。いつもは莫大なEVAの修理予算も1000万円の範囲で済んでしまった。NERV初の圧勝である。

「シナリオどうりだな、碇。」

「ああ、計画は順調に進んでいる。」

その1週間後、信長は冬月に話しがあるといわれ司令室に呼ばれた。…がら〜んと広い部屋にいるのはゲンドウ・冬月・信長の3人だけ。…かなり殺風景だ。

「いったいなんの話しですか?冬月さん。…こんなとこまで呼び出して?」

「…私と碇が南極に出張でな。その間、代理NERV司令として全権を信長君に委任したい。これがその関係書類だ。」

「南極!?…承知しました。」

(南極…。いったい、セカンドインパクトが起きた、あの死の大地に何の用だ!?…それに、前の使徒戦の事もある。…すぐに加持に話しを聞く必要があるな。)

この話しの後,冬月とゲンドウはすぐに南極へNERV専用航空機で飛んでいった。これで、信長は一時的にだがNERVの全指揮を取る事になった。

仕事が終わるなり,すぐに加持に電話をする信長。…いつもは加持の方から、かけているのでこれはけっこう珍しい。

「…司令と福司令が南極に行った。…あの死の大地にある裏の理由知らんか、加持?」 

「たぶんアレだと思います?…アダムとリリス、そしてロンギヌスの槍。」

「アダム?…たしか昔、フロイスが……いや、キリスト教の?」

「ええ、そうです。…今から、NERV本部のB3地区に待って頂けませんか?…おもしろいものを見せてあげますよ。」

「…わかった。」

(…確かにおもしろい事になってきたな、これは。…ふっ、俺はこう言う事は大好きな性分だからな。)

元々,NERV本部にいた信長は5分でB3地区に到着する。加持も10分遅れで来た。加持が道を案内する。

「さて、こちらですよ。」

…加持が向かった先は出入りするにはLV6のセキュリティーカードが必要な部屋だった。だが、本来LV6のカードは司令と、副司令,赤木リツコしか持っていないはずなのだが。

「そのカード、お前が作ったのか?」

「…まあ、そんなとこですかね。…さあ、しっかり見てくださいよ信長さん。」

加持がカードを通し,部屋の扉が開かれる…。信長が目を疑った。そこは体中、目玉だらけの怪物が十字架で貼り付けにされ、その体には見た事もない巨大な槍がささっていたのである。

(…なんだ、この気色の悪い怪物は!?)

「これがリリス。…第二使徒ですよ。15年前に現れました。…こいつと第一使徒アダムが人類補完計画の大事な要素なのです。そして、おそらくあのセカンドインパクトの原因だとおもいます。」

人類補完計画…これが何を指しているのか明確には加持も知らない。ただ、今までのスパイ活動で人類を幸福に導く計画などではないことははっきりしていた。

そして、命懸けでこのアダムとリリスが人類補完計画に関わっているとの情報を手にしたのだ。…だが、これがどうして人類補完計画に必要なのかはわからない。…ちなみに加持はその部分以外の人類補完計画の全容をほぼ知っていた。

「…碇ゲンドウ、あの男いったい何をたくらんでいる?」

「…俺の調査ですと、おそらく碇司令の考えている人類補完計画とゼーレの考えている人類補完計画は別物です…。司令は表向きはゼーレの補完計画に従っているようですが…。」

「2つの人類補完計画か…。」

ゼーレとゲンドウ…彼らの真の目的は何処にあるのか?…現時点での情報はあまりにも少ない。…だが、彼らの目的が人類の為にならないのは、ほぼ確実であろう。

「あと、信長さん。2つの人類補完計画はどうも途中までは、ほとんど同じらしく、今のところほとんど狂いなく進行してるようです。…使徒の順番、能力、人物の名前、派閥関係までほぼ全て…。」

「…なるほど。まさかそこまで。だからゼーレと碇司令は互いに信用してないのに協力していると言うのか…。」

「でも、この計画…1つ違う点があるようなんです。…それは信長さん、あなたの存在です!…おそらく信長さんしかこの計画を止められる人物はいません。」

リリスが保管されている秘密の部屋…セントラルマグマに緊張が走った。重大事でもテキパキ行動するのが真骨頂である信長もさすがに加持のこの言葉には即答ができない。

「止めてください信長さん。2つの人類補完計画を!」

「…わかった、俺も人類滅亡させるようなふざけた計画はご免だ。…だが、どうやって阻止する?俺達に味方は少ないぞ。」

そう、こんな話しを信用できる人物などほとんどいないのだ。ましてや味方になってくれる人物と言うと。…例外は濃と信長に強い信頼感のある戦略自衛隊の長井総帥くらいな者だろう。

加持は知らなかった。…ゼーレの予言書には細かすぎて書かれていなかった事なのだが、予言では長井は本来すでに死んでいる人間なのだ。

だが、予言では長井が死ぬはずだった、2010年の四国反乱で信長の活躍により彼はその命を救われたのだ。長井はその後も何度か同僚(のちに部下に)の信長に命を助けられた。

…これが、長井が信長を信頼する大きな理由なのだ。彼なら、この途方もない話しを信じてくれるだろう。戦略自衛隊はゼーレやNERVに操られているが、やはり彼は信長達にとって大きな戦力だ。

信長と加持はその後、人類補完計画を阻止する作戦を話し合ったがまったく結論は出なかった。…帰宅後、信長は長井総帥と濃にこの事実と計画をすぐに告げるのであった。…もちろん、極秘扱いで。


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