第1話 「タイムスリップ」

-1998年 6月3日 11:05 成田空港−



 俺の名は神戸ひとし……両親の命令と妹の強烈な願望によって、この度アメリカに行く事になった。

 俺の隣には恋人のサーティがいる。彼女も一緒にアメリカについて行く事になったのだ。

 俺は日本から離れたくはなかったのだが、恋人のサーティが一緒に暮らしてくれる事になったのと、ある事情により仕方なくアメリカに行く事になってしまったのだ。

 スポーツや勉強などの成績は相当悪い俺だが、1つだけ得意だったものがあった。

 コンピュータのプログラムである。他の事は不器用でまったくダメだがパソコンだけは絶対に誰にも負けない自信がある。

 …さて、これで、日本とも、しばらくお別れだ。



 「ひとしさん、なにやってるんですか遅いですよ〜」

 「ああ、ごめん。今、行くよサーティ」

 俺があせってサーティについて行こうとすると、地面につまずいてしまいバランスを崩しこけそうになった。

 …なんとか体勢を立て直すとサーティの胸に手が……しまった。

 「ひとしさんのエッチ!」

 サーティの拳から強烈な右ストレートが放たれる。

 …俺は星になって大空へと消えて行った。



-1998年 6月3日 12:00 404号機−



 「うわあ〜〜〜〜〜」

 滑走路をもの凄いスピードで走り、上空へと飛び立つ飛行機。

 …実は飛行機に乗るのは始めてだった俺は、その振動の大きさにかなりビビった。

 サーティも俺と同様始めてなのだが微動だにしない。

 斜めに機体を傾け、遥か上空へと上がって行く飛行機に俺は感動した。

 TVなどではよく見るが、やはり生のこの興奮違う。

 …さっきのサーティにさわった胸が生ならもっと良かったが。



 機体が水平に安定してきて、興奮もおさまった所で、俺は1冊の漫画を取り出した。

 …「新世紀エヴァンゲリオン」、アメリカまではに相当時間がかかるので、暇つぶし用に持ってきてしまったのだ。

 これは数年前にはやっていた漫画だったので前々から読もうと思っていたが、昨日、古本屋で全巻セットで安売りで売っていたので買ってきたものであった。

 重いのにわざわざ、それを全部持って来る今日の俺はどうかしていた……それが後に思わぬ幸運になるのだが。



 『ふ〜ん、中盤あたりまではおもしろいけど、最後の方はつまらないなぁ』

 夜になる前にイッキに全巻読み終えてしまった俺の感想だった。

 …特にTV版最後の2話はもはやストーリーにもなっておらずつまらなくて仕方が無く、映画版と言うやつの終わりかたもわけがわからなかった。



 機内食を食べると俺はすぐに寝た。…平凡な夜であった。



 目を覚ますと、そろそろアメリカに到着する時刻であった。

 「もうすぐ、着きますねアメリカ」

 「うん。はぁ〜、サーティはもうバッチリだと思うけど俺は英語なんてさっぱりわからないからな」

 「私が教えてあげますよ」

 「ありがとう、サーティ」

 俺は日本にいる頃から、このサーティに世話になりっばなしだった。

 ゴミ分別に洗濯、部屋掃除に家事…高校の宿題まで、手伝ってもらっている。…まる写しとも言うが。



 難波サーティ…クラスのやつらが言っていたように、俺にはまったくもったいない彼女である。

 とっても器用で、容姿抜群、勉強では日本全国ではTOPレベルの成績を誇っている。

 …もっとも、それは彼女の出生の秘密を考えれば当然とも言えるのだが。

 俺は彼女と現実世界で出会う前、本当に情けなかった……いや、今でも十分情けないのだが、それ以上に酷かったのだ。



 飛行機がニューヨークに着陸するとの館内放送が流れた直後、拳銃の音が鳴り響いた。…いったい何事かと動揺する。

 「ハ、ハイジャック?」

 乗客の誰かがそう言うと、サーティはシートベルトを外すと、慌てて操縦席に向かって走り出した。俺もあわてて彼女について行く。



 ハイジャック対策のために、操縦席には窓も無く、厳重な鍵がかかっており、乗客席から操縦席に行く事はできなかった。

 だが、壁に耳を当てると、なにやら激しい言い合いになっている声が聞こえる

 「サーティ、いったいなんて言ってるんだ?」

 「大変です、ひとしさん。ハイジャックするって言ってます。しかもお金を要求してないんです」

 サーティはひとしに耳打ちしてそう言った。

 もし、普通に俺に話しかけていたら、周囲はさらに大パニックになっていただろう。

 …俺は完全に動揺してしまっていたが、彼女は周囲への配慮を忘れなかった。

 「金を要求していない?…だったらなんでハイジャックなんか?」

 「わ、わかりません。…私にはわかりませんけど、ニューヨークの貿易センタービルに飛行機を突っ込ませると犯人は言ってます」

 「おい!それじゃあ犯人も死ねぞ」

 「…犯人は俺達はイスラム教復興のため、喜んで死ね覚悟ができていると言ってます」

 「じ、自爆テロかよ」

 そう言えば、3年前、オウム真理教の地下鉄サリン事件があったな。

 松本被告は数々の人殺しと詐欺行為で金を儲け、己の欲望のままに裏の世界を操る極悪人なのだ。

 しかし、彼のマインドコントロールを受けた信者は松本被告が神だと信じ切っていると言う話しがある。

 そして、松本被告の罪が明らかになった現在でさえ、彼らは松本被告のためなら死ぬ覚悟ができていると言う。

 オウム真理教はその勢力をロシアを中心に伸ばしていると言うのだから恐ろしいな。

 今回の犯人もひょっとすると、似たようなものなのか?

 「仕方ないわ。ひとしさん、私、オプションプログラム使うわ」

 「君の正体がバレてしまうけど、死ぬよりはマシだ。…頼んだよサーティ」

 (しかし、今のサーティに能力が使えるかどうか…)



 サーティは右手を前に出し、俺以外のほとんどの人間に隠している秘密の能力を使おうとする。

 「オプションプログラム#2、電流よドアを開けよ!…だ、ダメ、できない」

 やはり、彼女はもはやA.I(人口知能)ではなく完全な人間になりつつある。

 それは、本来俺にとってもサーティにとっても喜べることなのだが、今回ばかりは裏目に出た。

 「オプションプログラム#4、オプションプログラム#5、オプションプログラム#7…どうして肝心なときにA.Iの力が使えないの?」

 俺の脳裏に絶望の2文字が刻まれる……サーティにとってもそれは同じだろう。

 人間に限りなく近づけたことが、逆にこんな事になってしまうとは…。



 バァ〜〜〜ン、バァ〜〜〜ン



 2発の拳銃の音が聞こえてきた・……最悪のシナリオが俺の脳裏に浮ぶ。

 「オプションプログラム#2、電流よドアを開けよ!……よし、やっとできたわ」

 サーティがなんとかA.Iとしての力を取り戻した。

 俺とサーティは急いで操縦席に突入する。

 そこには、頭から血が飛び出している、二人のパイロットらしき人物の姿があった。

 サーティが慌てて二人を助けようとする。

 「パイロットさん、しっかりしてください、パイロットさん……ダメ、2人とも脈がない、死んでるわ」

 俺の勘が的中してしまった。これではどうしようもない

 気付くと俺達の侵入に気付いたハイジャック犯達が俺とサーティに向かって拳銃構えた

 ハイジャック犯のメンバーは全てで5人。

 そのうちの2人が俺とサーティに向かって拳銃構えた。

 …他のメンバーの1人は操縦席のハンドルを握っていた……ひょっとすると操縦ができるのかも知れない。



 「GO!」



 その操縦している男が大声で叫んだ。その顔は明らかに歓喜のものであった。

 どこへ行くつもりなのかと、前を見るとなんと巨大なビルがある。

 「おい、ぶつかるぞ」

 俺は思わず大声をあげた。

 彼らは外国人なので言葉はまったく通じていないと思うが、そう叫ばすにはいられなかった。

 …そして冷静に考えれば操縦席にいる男にその事実がわかっていないわけがないのだ。

 そう言えば、さっきサーティが犯人たちはニューヨークの貿易センタービルに飛行機を突っ込ませる気だと言っていた。

 …これは彼らの計画通りなのだ……俺はもはやどうする事もできない。



 『俺はこんなところで死ぬのか?』

 『やっと彼女ができたのに?』

 『サーティと幸せに暮らしたかった』

 『サーティと結婚したかった」

 『サーティとエッチもしたかった』

 『サーティの子供も欲しかった』

 『こんなところで死にたくなかった』



 バァカァ〜〜〜〜〜〜ン



 飛行機は貿易センタービルに突っ込んだ。

 乗客の300人の生涯は全員幕を閉じた…無論、俺もその一人のはずだったのだが?



-2011年 4月3日 2:00 第3新東京市病室−



 …気がつくと、俺はベットの上だった。

 俺は助かったのだろうか?

 俺が目を開けた事に気付いた看護師さんが、にっこりと微笑んだ。

 「よかった、意識が戻りましたね。心臓が止まって30分近く…もうすぐで死亡宣告を出す所だったんですよ私達」

 どうやら、俺はかなりぎりぎりの所で助かったらしい。

 腕には点滴の注射がうってあった。

 だが、別に身体に痛い個所などはなく、どこにも異常ははない…俺はベットから起きあがった。

 「そうですか…」

 「思ったよりずっとお元気そうでなによりです」

 「それで飛行機の方は…」

 「あなた以外の生存者は一人もいなかったそうです」

 「そんな…じゃあ、サーティも…」

 「身内の方ですか?…残念ながら…」

 その先は言わなくてもわかった。

 俺はとりあえず一人にさせて欲しいと言うと、看護師さんは気持ちを察してくれて、椅子に読んでいた新聞を置くと、部屋から出て行く。

 サーティが死んだ事実に俺を、これ以上悲しくさせた。

 なんで罪もないサーティがあのテロに巻き込まれなければならなかったのだろうか?

 …俺みたいな奴だけが生き残ってしまって。

 俺は看護師さんが置いていった新聞を手に取る。

 『飛行機事故!奪われた300人の命!』

 と大きく一面に書かれてあった。

 どうも、テロだと言う事はまだわかっていないらしい…後で事情を説明しなければいけない。

 さらに記事を読みすすめていくと、なんと事故の現場は”第3新東京市空港”と書かれている。

 飛行機が墜落したのはアメリカのはずだ。

 これはいったいどういう事なのか?

 さらに新聞には4月3日に事故が起きたと書かれていた。

 「4月3日?」…俺が飛行機に乗ったのは6月のはずである。

 さらに記事を読み進めて行くと、2011年と言う文字があった。

 俺はまさかと思い、慌てて新聞の一番上を読みとそこには2012年4月6日と書かれていた。

 間違いない!どのページを読んでも4月6日と書かれていた。

 神戸ひとしは未来へタイムスリップしてしまったのだ…。


  ←『AIが止まらない』の原作を見ずに真琴さんが投稿してくださったひとしのCG


後書き

 今回のSSはパクリの嵐でした。まずデザインはNACさんの『2ndRING』から。そして内容はセシルさんの『迷い人』から。

 セシルさんからは予め設定をパクる許可を頂いてます。…でもNACさんからは…。デザインだけでもやばいかなやっぱ?

 この作品の主人公神戸ひとしは『ラブひな』を書いている赤松先生の旧作に出てくるキャラクターです。知らない人はオリキャラあつかいして下さい。


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