第3話 「アスカ登場」

-2015年 6月28日 11:30 NERV専用ヘリコプター内−



 アスカを直接艦船に出迎えるため、ヘリコプターに搭乗している、シンジ君とミサトと俺。

 …漫画ではトウジとケンスケも乗っていたのだが、彼らが乗ると定員オーバーになってしまう。

 そのため、彼らはここにはいない。

 「うわ〜、ホントに大きな艦船ですね」

 「国連軍の誇る正式空母で<オーバ・ザ・レインボウ>って言うらしいよ、シンジ君」

 「セカンドインパクト前に建造された時代遅れの兵器だけどね」

 ミサトは子バカにした表情でその艦船を見つめていた。

 …こんなものは無用の粗大ゴミだと言わんばかりに……もっとも、その辺は、俺も同じ考えだ。

 …ヘリコプターは艦内に着陸体勢を取り始めた。



-2015年 6月28日 11:40 オーバ・ザ・レインボウ艦内−



 艦内に到着してヘリコプターを降りると金髪の少女がいた…もちろん、アスカである。

 「ハーイ、ミサト。元気してた?」

 「ええ、アスカ?…あなたこそどう?」

 「…あれ、お知りあいなんですか、ミサトさん?」

 2人が知り合いなのはもちろん知っていたが…なんとなく口から言葉が出た。

 「まぁね。…ところで、アスカ、背も伸びたんじゃない?」

 「そ。他の所もちゃんと、女らしく成長したでしょ?」

 …とても、中学生のセリフとは思えない大胆なセリフだ。

 「紹介するわ。惣流・アスカ・ラングレー…セカンドチルドレンよ」

 「その時…漫画本通り、アスカのスカートがバッと風でまくれて、パンツが見えてしまう。

 …それを思わず、まじまじと見つめてしまうシンジ君。

 …アスカの顔がみるみる内に恐ろしいものになっている…こうなったら誰にも止められない。

 「あんた、今、パンツ見たわね」

 「い、いや、そんなことないよ」

 「見たわね!」

 …そのアスカの恐ろしい顔に圧倒され、もじもじするシンジ君。

 「…うっ、ちょっとだけ」

 「このスケベ!痴漢!変態!エッチ!…くらえ、アスカパンチ!」

 …アスカの怒りのパンチにシンジ君はなすすべもなくヒットされ、空のかなたへ消えて行った。

 スカートが見えてしまったのは風のせいで…、シンジ君は別に悪くないと思うのだが。

 「これだから、男って最低!」

 拳をグーに握り締め、アスカの顔は今だに怒りに震えている…。

 …彼女には俺の考えはまったく通用していないようだ。



 艦長とミサトのEVAに対する取引が会った後、NERV諜報部所属の加持リョウジに出会った。

 漫画本では…はっきりとは書かれていなかったが…

 NERV、ゼーレ、日本政府の3重スパイをしていた事が原因でほぼ間違い無く殺されたようだ。

 …彼の心の奥底には、真実を求める熱い探求心がある事が描かれていた…・。

 「おう、久しぶりだなミサト」

 「加持先輩♪」

 なんで、加持に対してだけは《♪》マークなんだ…。

 …好きな男の前ではまるで別人…先ほどまでとは違いめちゃくちゃかわいくなるアスカ。

 …しかし…どうしてこれほどまでにアスカは加持の事に好意を持っているのか?…俺にはどうしてもわからない。

 「げっ、加持。…なんであんたがここにいるの?」

 本当はミサトが一番加持が来て嬉しいくせに…やっぱりテレなんだろうか?

 「彼女の随伴でね。ドイツから出張さ」

 「…うかつだったわ。十分に考えられる事態だったのに。…さっさと日本に帰りなさいね」

 「残念ながらミサトさん。これから加持さんはずっと日本にいるんですよ」

 「ほう〜、よく知ってるな、神戸ニ尉」

 …しまった!…言わなくても言い事を言ってしまった。

 うう、何やら探るような加持の目が恐い〜…この人もスパイなんだからきっと、相当カンが鋭いよな。

 …とりあえず、適当に誤魔化して話題を変えないと。

 「ははっ、ちょっと知り合いに聞いたんですよ。…ところでなんで俺の事を?」

 「噂は聞いてるよ。…世界一のコンピューターMAGIの責任者リツコが引きねいた天才プログラマーとね。…もっともパソコン以外の事はさっぱりらしいけどね…」

 ただの平職員である俺の事まで調べているとは…さすが加持と言った所だな。

 「もちろんシンジ君の事も知ってるよ。いきなりの実戦でエヴァを41.3%の高シンクロ率で敵を倒した凄腕パイロットってね」

 「…そんな、運がよかっただけですよ」

 「運も実力の内さ!」

 …加持はこの時点で知っているのだろうか?…シンジがEVAを操縦できるのは偶然では無く必然と言う事に。



 「ところでシンジ君。…葛城と同居してるんだって?」

 「え、ええ」

 加持の目がにやり、と光る。

 「彼女の寝相の悪さ、直ってる?」

 …その言葉にガ〜ンとショックを受けているミサトとアスカ。

 「…特にアスカは憧れの加持先輩が、よりによってミサトと既に体の関係があると知って相当ショックを受けているようだ。

 シンジ君は、まだそう言った話しには奥手のようで…よく意味がわからず呆然としている。

 「へぇ〜、お二人はそういう仲だったんですね、ミサトさん。…今まで加持さんを邪険に言っていたのは愛情の裏返しだったんですね」

 「違うわよ!…そりゃ、確かに大学時代はつきあってたけど、もう別れたのよ!」

 そこで加持はマジな目を作り、ミサトに冗談で提案する…少しは本気なのかも知れないが…。

 「…じゃあ、俺達、やり直さないかミサト?」

 ミサトの眉間にどんどん、しわがよった…危険だ…今のミサトはとっても危ない。

 「お断りよ!…あんたなんかと付き合ってたのが人生最大の汚点だわ!」

 ビシッ、と加持のほおにミサトの強烈な平手攻撃が一発…加持のほおは、真っ赤なりんごになっていた。

 「う〜、痛てぇ!…相変わらずだな」

 ミサトと言い、アスカと言い…女性と言うのは大変恐ろしいものである…。



-2015年 6月28日 12:05 オーバ・ザ・レインボウ左通路−



 愉快なやり取りの後、…何故か加持に、誰もいない艦内の左通路に俺だけが誘われた。

 「ところで、シンジ君じゃなくて俺に話しがあるってなんですか加持一尉」

 「なに、ちょっと神戸ひとしって言う、人物に興味を持ってな。…見事だよ、君の使徒戦に対する判断は」

 …この男、もう感づいてるのか。

 …さすがに「新世紀エヴァンゲリオン」と言う漫画がある世界から来たという事まではバレてないだろうが…。

 「第4使徒戦…シンジ君にエントリープラグに同級生を入れろ…なんて指示は普通できないよ」

 「……」

 「しかも、その後が見事だった。まさか、あの時点で使徒にEVAを突撃させるなんてね…。もし、失敗していたらどうなっていた事か?」

 「…ミサトさんにそう言われて、懲役1週間の刑を頂いちゃいましたよ」

 「半軍事組織であるNERVでの独断行動…普通なら即、解雇されるよ。…それがたった1週間での拘束ですむなんて異例の処置だ」

 「運が良かったんですかね?」

 「そうじゃない。すべては君のプログラムの腕のおかげだろう…。

 …悪いが君の経歴は調べさせてもらったよ。…NERVは高学歴の人材しか原則として取らないんだが…。まぁ、特に技術部は理系…その中でも電子工学の高度な知識が必要だから、どうしても学力は必要となって来る…。

 ところが君は大学どころか高校すら出ていなくて、…はっきり言って科学知識なんて中学生並だ。…だが、それでも君は、プログラミングの腕だけで、わずか22歳にしてニ尉と言う位まで昇りつめた…。

 そんな君に一つ聞きたい。…もし、強力なコンピューターウイルスが侵入したらMAGIのセキュリティはどこまで通用すると思うかい?」

 …もしかすると、この男、MAGIをハッキングして、その内部データに隠されているNERVの情報を盗むつもりかもしれない。

 だが、いくら加持が優秀なスパイでもパソコンで赤木リツコに勝てるとは思えない…。

 「…まぁ、リツコさんも凄腕ですからね。…よっぽどの事がないと無理なんじゃないですか?」

 「…じゃあ、神戸ひとしならどうだ?」
 
 …そう来たか。

 加持…あわよくば俺とも関係を作って、真実にさらに近づくつもりか?

 「まぁ、五分五分と言った所じゃないですか?」

 …そう、普通のウイルスを送ればMAGIを潰せる確率は50%だろう。

 だが、難波サーティ(NO30)を開発したあの禁断の手を使えば…ほぼ100%NERVの情報をハッキングできる自信がある。

 …でも、それは危険すぎる…絶対に実行してはならない。



 …漫画通り第6使徒ガギエルは現れた。

 この使徒の狙いは間違い無く…加持リョウジのトランクの中にあるリリン…最初の人類だ。

 だが、使徒襲来の報を聞くなり、彼は先に飛行機でNERV本部へとトンズラして行った。

 …これで使徒は出現した意味はなくなってしまったが、一度、姿をさらしたのならEVAと戦うしかないのだろう。

 使徒は激しい動きでこの艦船を転覆しそうなほど、揺らしている…。

 これを撃退するために、意味もないのに何故かシンジと一緒に出撃するアスカ。

 EVA弐号機には、あらかじめ小型カメラとシンクロ率などの情報を伝える特殊センサーをつけてあった。

 この特殊センサーを通してミサトから弐号機へと命令できるようになっており、EVAや使徒の詳しいデータをノートパソコンで解析するのが、今回の俺の仕事だ。



 「…LCL注水…神経接続開始。圧縮ロック解除。…シンクロスタート!(*ドイツ語)」

 「ピー、ピー…異常発生…エヴァ弐号機は起動できません」

 「あれ、バグ?…なんでだろう?」

 「思考ノイズ!邪魔しないでって言ってるでしょ!…ちゃんとあんたもドイツ語で考えてくれないと動かないでしょ!」

 「そんな無茶な…。わかったよ…ば、バームクーヘン…」

 …使徒が来ていると言うのに特殊装置から聞こえる漫才のやり取りにおもわず、ずっこけるミサト。…俺は知っていたから、ため息をつくだけだったが。

 ミサトは体勢を立て直すと、その顔に怒りのしわがよっている。…恐い、こういう時の女性はめちゃくちゃ恐い。

 「ちょっと、あんた達、わかってるの今は緊急事態なのよ!…き・ん・き・ゅ・う・じ・た・い・!」

 …あまりのミサトの大音量に俺の鼓膜は破れそうになった。

 「あれ、ミサト。どうしてあんたの声が聞こえるの?」

 さらっ、と返事を返すアスカ…怒鳴られたのに笑っているのが最近の若者の特徴だ。

 「いい、ふざけてないで、さっさと使徒をやっつけて来なさい!」

 「はい、はい…言われなくても分かってるわよミサト」

 むかつく女だ…まぁ、最近の女子高生(?)ってのはこんな物かもしれない…。

 ああ、こんな事を思うだなんて、俺…まだ、22歳なのにもうおっさん?



 「いい、2人とも。エヴァ弐号機はB型装備のままだから、水中戦は無理よ。…敵が水の中から来た所を攻撃して」

 「わかったわ、ミサト」

 …アスカはミサトの指示通り、攻撃しようとするが使徒の攻撃により水中へとエヴァ弐号機は落ちてしまった。

  ミサトの次なる作戦は漫画本通り…戦艦2隻によるゼロ距離射撃。

 …無人の戦艦を使徒に突っ込ませ、使徒がその攻撃に動揺している隙をつき、目標の口の中から攻撃すると言うもの。



 「エヴァ弐号機…目標と接触まで後20秒…

 「15秒…」

 「10秒…」

 「開きなさいよ、開きなさいよ、この硬い口!」

 …アスカの迫力に使徒もびびった(?)のか口を開かされ、そこから弐号機が使徒の体内ヘ侵入。

 「今よ!撃って」

 …ここで、戦艦2隻によるゼロ距離射撃…。

 はたから見るとこの攻撃で使徒を倒したように見えたのだが…ノートパソコンのデータによると実際には口の中にコアを発見した弐号機の攻撃により、敵を殲滅したとの事。



 …今ごろは本部で人類補完計画の要となるアダムを加持がゲンドウに見せている事だろう…。

 人類補完計画…この世界を滅亡させる俺が防がなくてはならない計画。

 …本当の戦いはまだまだこれからである。


後書き

 …ああ、加持とひとしとの会話シーンは予定にはなかったのに。

 まったく第3話のプロットって 『アスカとの出会い 第6使徒戦』 という一言だからこんな事になるんだ…。

 短い使徒戦は「綾波育成補完計画」を参考に書きました。
 


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