Angel Sweeter〜天使の吐息〜
SCREEN004 【翼と少女】
前の話。
「ディアの天使」と名乗る天使が現れ、セリスたちを襲う。
そんな状況で仕方なしに、ミルフィーユはセリスに力を貸し与えた。
ディンバリー遺跡。
ディアの天使が放った魔法による砂煙は、徐々に収束していく…
…その中から。
―――少年と、少女。
二人である。 三人のはずが二人である。…それに気付き、フィー
フィー『…ミルフィーユさん??……!?まさか…!??』
彼女の頭によぎったのは、最悪の事態。―――死、である。
しかし、ほんの2、3秒もたたぬうちに彼女は気付き、そして問う
フィー『……セリス…………』
振り返る、セリス。
フィー『………背中、見て……………夢かしら……?』
再び振り返り、セリス。――そして叫ぶ。
『なんだこりゃぁ!!??』と。
そう、彼の背にあるのは「ミルフィーユ」に生えていた、翼。
……呆然とする二人。ふと、セリスのあたりの“空間”から声がした。
《セリスさぁん、フィーさぁん♪…私は「セリスさんの中」に
いるんですよぉ。だから心配しないでくださぁい♪》
セリス『…僕の中って!?それに「心配すんな」ってもさ……』
ふと、ディアの天使。
『‘天使’の力を得た人間か…さほど恐ろしいものでもないが
……邪魔だな…』
――詠唱・・光。そして、セリスにそれを放つ。数は…10から20。
セリス『………………え?』
棒立ちのセリス。…状況を把握していないようだ。…が、2秒後。
セリス『えええっ!!?? なんか、攻撃されてる!!』(←パニック)
ふと彼の中から、声。
《セリスさぁん。…‘翼’を広げてくださぁい!…そしてぇ……》
言い終わる前に、セリス『翼を広げろって…わかんないよ!』と。
………声は‘がっかり’したというより、‘あせった’様子でいう。
《…じゃぁ、あなたの木剣を自分の前に掲げてくださぁい!!
‘天使’の力を流しますぅ!!!》
彼(セリス)曰く。「あせるのはこっちだと思う」
ともかく、セリスは木剣を掲げた。
――直後、光が正面まで迫り……直撃。
…には至らなかった。 彼の木剣から青白い光が放たれて、
迫りくる光をかき消していく。
その光にディアの天使は「…“風の”フォースエンジェルか…」呟く。
そして、天使は少し目を細める…。 そしてまた開き、言う。
『…なら、今の内に……消すか』 と言い放った。
――――――――――静寂。を破ったのは、ミルフィーユ。
《…まずいですぅ。……あの天使に本気でこられたら
間違いなく…。》
セリス『なんで!? さっきの攻撃は防げたのに!?』
《あれで…私のフルパワーなんですぅ……今度来られたら…》
――いままでは、ただ浮かんでいただけの「ディアの天使」が
地に降りた。 そして一言「……消すか」と。
瞬間。 天使の姿が消え、セリスの前に現れた。
『……死ね』 剣を振る…が、セリスも反応していたのだ。
木剣で剣を受け止めていた。 天使はそれを嘲笑し
『…………木で、防げるか』
刹那。 セリスの木剣は粉々に吹き飛んだ。
セリス『!?』 天使『…遅い』
天使の振った剣が、セリスを捕らえようとした瞬間。
―――パアァァアンン!!
かんしゃく玉のような音を立て、天使に何かが直撃した。
…フィーである。 タングラーを放ったのである……が。
特に効いた様子もなく天使は詠唱をし、フィーに向かい唱えた。
フィー『……いやああぁぁぁぁぁっ!!!!?????』
ふと大声をあげるフィー。 微笑をうかべる天使。
セリス『フィー!? どうしたんだよ!!』
ミルフィーユ《…!?あれは…ディアの天使が人間を奴隷に
するために使う魔法。……【人格天挿(じんかくてんさ)】》
セリス『なんだよ?その……人格天挿ってのは?』
ミルフィーユ《それは…人の自我を破壊し、その自我の
変わりに従順な意思を埋め込む……魔法です。》
フィー『ああああぁぁぁああああっ!!!????』
ミルフィーユの言葉の後、絶叫をあげるフィー。
タングラーを投げ捨て、胸をかきむしる様に身もだえ
気を失ってしまった
セリス『……普通、こんな状況でフィーを助ける方法は……』
彼は心の中の‘少女’に語りかけた。
その後、すぐに天使に向かって走り出した。
セリス『……おまえを、倒すことだ!』
天使『天使を相手に、素手とは………死にたいとしか思えんな…』
セリスの拳が天使に当たるかと思った瞬間、彼の脇に激痛が走る。
天使『しかも…すきだらけ、とはな……貴様、死にに来たのか?』
セリスの脇が、赤くにじんでいく。 そして彼は倒れた。
天使『手間をかけさせる………そろそろ、殺すか……』
天使はその手に持った剣を握り締め、彼を睨み付けた。
―――ふと。
彼の背から、風が吹いていた。 小さく、力強い‘風’が。
天使『……風か…まあいい。…………いくぞ』 翼を広げる。
そして、彼を斬りつけるかと思った瞬間。
――――――風。
周りにあるものすべてを巻きこむような、まるで竜巻のような風。
その竜巻に天使は、目標を見失わさせられた。
その直後、竜巻の中から現れたひとつの影。
―――脇に傷を負い、粉々になったはずの剣を携えた……
セリスが。
次回。
セリスが風をまとい、よみがえった。
果たして、この戦いの行方は? 今回はこれで終わりです。