Angel Sweeter〜天使の吐息〜

SCREEN005 【風】



前のお話。

「ディアの天使」に、大怪我を負わされて倒れたセリス(+ミルフィーユ)。

絶体絶命のときに、突如セリスが風をまといよみがえった。



ディンバリー遺跡。

ディアの天使が倒れるセリスにとどめを刺そうとした瞬間、突如。

ひん死の重症のはずの彼の体の奥から、風。

天使『…なんだ?……なぜ、人間から風が……』

少し戸惑う、天使。  その言葉の後に、彼を見やる天使。

天使『……ふん…どこをどう見ても何も変わっていないではないか…?』

その言葉を言い終わるか、終わった後にか。

ふと、セリスと彼の周りにある“風”が動いた。 殺気…天使の直感はそう告げた。

――ひゅ………。       きぃぃんっ。

風の音。 金属と金属が触れ合う、音。

その後、一つのうめき声。

天使『…………………くっ。…なんだと……!!!???』

くずれる天使。 その顔はまるで、“ハトが豆鉄砲くらった”ような表情といった方が

わかりやすかった。

その天使に向かい、セリスは言う。

セリス《……ディアの、天使よ。……汝の、名は……?》

それは途切れ途切れの、まるで操り人形のような声。

天使『……なんだ…こいつは…??……なぜ、いきなりこうまで“風のフォース”を

使いこなせるようになっているんだ…?』

明らかに狼狽の色を隠せない天使、…そして天使は、くぐもり消えそうなくらいの声で

こう言った。   『……リィフィース……』と。

………天使の名を聞いた刹那、セリスを操っている者が、セリスの声で言う。

『……ディアの天使…リィフィース…汝を…………』

剣を携えていた右手に力をこめ…瞬間、翼を広げリィフィースに向かう。

それに呼応し、リィフィースも剣を握りなおし、翼を広げる。

――きぃぃぃぃぃぃぃぃいいいんっ。

けたたましいほどの、金属と金属がこすれ合う音……の中、セリスの声は
叫ぶように言う。

『………封印する……!!!。』 と。

その言葉が原因か、もしくは金属音が原因か、とにかく彼の中にいた“天使”の少女が目を

覚ました。

ミルフィーユ《……ふにゅ??……ぅう〜〜ん。……ぁ……セリスさん??》

彼女はセリスの“中”から語り掛ける。……だが、いつもなら返ってくるはずの
返事は間を空けても、返ってこない。 それは、異常だった、そして、彼女に
不信感を持たせるには十分であった。

ミルフィーユ《…セリスさん!!??セリスさん!!??……一体、何が
あったんですか!!??
……セリス……さん……。》

 叫ぶミルフィーユ……に対し、今彼女がいるセリスの中よりも奥深いところ、
彼の中の中心部
(つまり心臓)より、声。 それは、彼女の中に直接、語り
掛けるようだった。

声【……少女よ…心配することは、何も無い……ただ、今この危機を乗り
越えるために
こやつの体の奥ふかくに眠る力を使わせてもらっているだけ
じゃて…】

その声は、老人だった。   ただし、「人ではないもの……である」と彼女は
理解したが。

だが、その声は彼女に懐かしさを与えた。彼女の記憶の断片を引き起こさせた。



――それは、空。

――それは、3人の天使。

――その姿は、自分。

――それは、幼いころの記憶。

――それは、父と母に囲まれ屈託無く笑う、笑顔。

――だけど、その顔を見ることは出来ない。

――まるで、霧を見ているように、見れば見るほどかすれてゆく。

――それは、笑顔。

――その空に浮かんだ3つの笑顔が、遠のいて行く。

――そして、それは消えて行く。

―― 一つの言葉を残して。

――幼い自分の声を残して。

―― 『…ルーティア…おかあ、さん』という声を残して…。



そして、懐かしき記憶の淵より目覚めたミルフィーユ。

彼女は、泣いていた…。 しかし、‘悲しみ’ではなく‘喜び’の涙。

そして、涙と一緒に湧き上がるものが一つ。

そして、それはセリスの体を優しく…まるであらゆるものから守るように包み
込むもの。

それは、彼女の象徴の……力。

それは………風、だった。



 

次回。

記憶の欠片を取り戻したミルフィーユ。 その後でセリスを包む、風。

果たして「リィフィース」と名乗った、天使との戦いの行方は?

今回はここで締めです。



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