Control Girl
Factor01
それは、ある王国のこと。
それは、戦乱の中にあったひとつの王国のこと。
このお話は、その王国のために表情を、意思を、感情までも失わさせられてしまった……。
そんな少女の、お話です。
エイサー国 会議室。
そこでは、今まさに会議の真っ最中であった。
鎧を着た者、剣を携えているもの、杖を横においているもの…いかにも「戦士」と
言ったような感じの風貌のものがほとんどである。
その中で一人、ホワイト・ボードの前にたち今後の意向を伝えている女性。
『……と言う訳で、今後さらに動きが活発化するかと思われる。気を抜かぬように、厳重に
守備を続けてくれ。…以上、解散!!』
その女性の一声で、室内にいた人々は‘我先にと’飛び出ていった。
その女性は、エイサー国司令官・メリースと言った。
そして、あらかた出ていったあとに室内に残っていたのは、たったの五人であった。
『やっと終わったぁ……。(脱力)……もう、暑くて暑くて………』
一人の女性が、机にぐったりした様子で突っ伏せる。
『テトラさん?……この程度で音を上げてどうするんですか??われわれの任務は彼らよりも重要なモノなんですよ?(にこにこ)』
テトラ『う……それは、わかってますけど、暑かったんですから…本当に。シンセさんも
暑かったでしょ??』
シンセ『全然…ですわ(にこにこ)』
その二人のやり取りに、干渉する素振りを見せずに一人の女性がメリースに問う。
『…メリース司令。…我々の任務内容を』
メリース『分かっているさ、サラ。……メイヤー』
声を聞き、エルフの少女がうなずく。
メイヤー『ええっと…今回の‘天使’の任務ですが………。最近、噴火した“アストリュール”山なんですが、そこから未確認の反応体が発見されまして、皆さんにはその反応体が何かというのを確認、生物なら捕獲…あるいは抹消していただく、と言う内容ですが…あれは…』
なにか腑に落ちないような終わりでメイヤーは言う。
サラ『…Yes。メイヤー嬢、被写体の外観を写したものがあれば確認したいのですが』
メイヤー『え〜と……明確な映像はありませんが、大体の外観を撮ったものはあります………スクリーン、お願いします』
その言葉と共に、彼女らの座っている席の後ろのクリア・ウィンドウが映像を映し出した。
その映像は、噴火の中にひとつ黒い物体をとらえていた。……だが、その黒い物体は…………。
メイヤー『…………………犬……みたいなんですよね………(汗)』
テトラ・シンセ・サラ『………………………………………………………………………』
メリース『とにかく、この物体の正体解析を頼む。それと、もし物体が生物であった場合は…』
シンセ『……捕獲を最優先に、ですわねメリース司令(にこにこ)』
メリース『……そういう…ことだ』
その言葉で彼女らは、会議室を後にした。
とりあえず、任務のために必要なもの…平たく言えば、食料・地図・薬草など…のことだが。
それらを調達する者と、現場までのルートを確認、調整する者とに別れることとなった。
まあ、妥当と言おうか。
メリースの口添えによって、必要資源調達はテトラ・シンセ。ルート確認はサラ、となった。テトラは何か言いたそうだったが。(笑)
と言うことで天使たちは、各々に課せられた仕事をこなしていった。
肉・パン・飲料水・果物……それぞれの店舗を回り、物資を集めていくテトラ・シンセ。
軍事室で地学・風学者などと、ルート確認・調整などを進めるサラ。
時間にし、約3時間。
準備はすべて整い、彼女らは旅立つことととなった。移動には、竜を使うこととなった。「やはり火山地帯では竜が最も適正だ」と判断されたためである。
移動時間、4・5時間。風の影響、ほぼ皆無。地質、正常。…かくして、彼女らはアストリュール山へと向かった。
アストリュール山 噴火口。
日頃はよく、観光地などに訪れる者が多くにぎわいがあるのだが。
……火山の噴火を目の当たりにし、観光できる人間などいるものだろうか。
答えを出すかのように、この山の近くにはなんの影もない。 命あっての観光だからね。
天使たち(テトラ・シンセ・サラ)は、噴火口の近くに竜を止め、地図を広げていた。
テトラ『……あっつぅ〜〜いっ!! うわぁ…ぐつぐついってるぅ………(汗)』
サラ『…現在地は赤印。そして、未確認体の発見現場が青印。ここより周囲、1km内で発見されています。』
シンセ『……この位の範囲なのですか? なら、この辺りをくまなく散策すればいいだけのことですわ(にこにこ)。』
サラ『Yes。―地理的要因により、ここより東側に回る方がいいと思われます。』
テトラ『……あ。 あ、あんなところに鳥の巣が………あ!! ヒナが落ちそう!』
シンセ『OKですわ。なら、東側からまわりましょう。……テトラ、さん(にこにこ)。』
しかし、テトラはいなかった。 ……のも、ほんの10秒程度。 すごい勢いで駆け戻ってきて、間髪いれずに言い放つ。
テトラ『し、し、シ、シンセさん!? サラさん!? …逃げ、ましょう!?』
と叫ぶ彼女の後ろには“ガトール”という鷲に似た種類の鳥が猛然とテトラを追撃していた。
シンセ『テトラさん?…これは一体、どういうことですか?(にこにこ)』
テトラ『え、え、え!?わ、私はただ‘ヒナが落ちそう’だったから「助けに」行ったら…』
シンセ『…それで「助けに」行ったつもりが、「盗みに」行ったと勘違いされたんですか?
(にこにこ)』
テトラ『………みたい、ですね……(汗)どうしよう!?』
その言葉を皮切りに、今まで黙りこくっていたサラが口を開く。
テトラ『……え…? …………それって、つまり……』
シンセ『‘おとり’ですわ。(にこにこ)』
テトラ『ひ〜〜ん(泣)………やっぱりぃぃ〜〜!!』
サラ『テトラ嬢。ガトールは肉を主食とします。肉を持ち、ガトールの気をそらしてください。』
テトラ『はい……………』
シンセ『もし捕まった場合は………どうなるのかわかっているのかしら?(にこにこ)』
テトラ『………誰か…………助けてぇぇ〜〜!!』
そのむなしく響く叫び声で、ガトールは“食料”を発見した。無論、それに向かって接近するガトール。
テトラ『は、はひぃぃっ!?』
サラ『テトラ嬢、‘翼’を』
シンセ『…早く逃げて欲しいものですわね。(にこにこ)』
テトラ『はぁぁいっ!?…絶対、助けてくださいねぇぇ〜〜〜っ!?』
“ばさり” 一対の翼を背に広げ、テトラははばたいた。
――速度はほぼ同等だった。……いや、さすがは鳥か。
ガトールのほうが、テトラよりも少し速いようだ。 徐々に、その差が詰められてきている。
シンセ『…あら? ガトールの方が速いみたいですわね?(にこにこ)』
テトラ『ひぃ〜〜ん……飛ばしても飛ばしても、ついてくるうぅ〜〜!?』
サラ『…速度OK。テトラ嬢、【レムフォトン・スタッフ(エイスエンジェル2nd 第1話参照)】を』
テトラ『‘レムフォトン・スタッフ’ですか? え、それはつまり…ガトールを‘消滅’させ
る…』
シンセ『……そういうことですわ。 任務優先…ですから。』 一瞬、笑顔が消えたような面持ちで言うシンセ。
それを聞き、テトラは仕方なくガトールの方を向き、動きを止めた。当然ながら、すごい加速がついているのだが。
テトラ『……ごめんね……』 悲しそうな目で言うテトラ。
それを見たのか見ていないのかは、つゆ知らず。 突如、ガトールは方向を変え飛び去っていった。 …テトラの‘目’を見てわかったのだろう。ヒナを「盗みに」来たのではない、と。
まあなんにせよ、ガトールを退けた一行は本来の目的である“未確認物体”の探索にとりかかった。
まあ、当然なのかもしれない。
…結果を言うと、そんなものはまったく見つからなかったのである。
姿も形もはっきり把握していないものを“探せ”と言われて、探せる人などほとんどいないだろう。それは、彼女ら‘天使’にとっても同様であることは言うまでもないのだ。
――単に言うと、結果的に‘アストリュール山’に到着後15日目にして、彼女らはそこを後にした。 だが、彼女らはおろか、まだ誰も知らない。
その‘未確認物体’が、この後起こる災害に大きく関与することになろうとは。
そして彼女らは、意地でもその生物を探すために、そこに留まるべきであったことを。
しかし、その災害を責めることは出来ない。 誰かのせいにすることは出来ない。
運命を変える……そんなことは出来ない。
万能の力を得ても、巨万の富を得ても、不老不死を実現できたとしても――
誰にも、どんなものにも変えられない‘もの’がふたつ。
―――それは“時間”と“運命”である―――
だから。
―――――そんなことは、誰にもわからない―――――
――――――たとえ、‘メリース’という名の女性でも――――――
―――――――たとえ、‘サラ’という名の女性、いや‘天使’でも―――――――
……未来は、誰にも見ることは出来ないのだから…………
そして、それを実現するかのように。
“運命”が、音を立て廻り出した。
それは‘悲しい’運命である……が。
それより悲しい運命が、ひとつ。
それは――――
‘サラ’という名の天使の“運命”であった――。
次回。
なんか意味不明な作品傾向になってきたような気が……(あせ)。 ……とにかく、
アストリュール山を元凶とし、王国を襲う災害。 はたして天使たちは、その災害を
食い止めることが出来るのか? ……こんな感じです。 では、引きます〜♪
追記。 (それは俗に、おまけともいう)
実は、この小説を書き終える直前に「Kanon」のノベルを読んでしまいまして…。
何やら難しいことを書きたくなって、意味不明になってきて……ダメダメですねぇ(汗)
作品について一言。
結果を言ってしまうのも何なんですが、サラの“運命”の内容とかは明かされませんので、