Sibyl Girl 〜刻(とき)の鎖〜

at twice Story

―1―


むかし、むかし。

日本には、「もののけ」と呼ばれる輩たちが生息していた。

―その輩らは、人を襲った。村を滅亡させた…………。

しかし、彼らの横暴に対するものが現れた。

―鎮護国家の名のもと、仏神の力を借り受け、もののけを祓った者。

それは……僧であった。……それは、男であった。

……そして、また一つ。

女にし、もののけたちを祓ったものもいた。

それは………巫女であった……。

――陽射し。

さんさんと照りつける、夏特有の気分の良い。

この話の主なる人物は、女である。

―――その昔。

数々のもののけを祓い、人々を守った巫女がいた。

だがその女は、あるもののけを祓う際に悪しき呪いによって、歳月を感じさせない…

すなわち、年をとらなくなってしまった。

けだし、それだけではなく。

女がいくら物を食べずとも、自害に及ぼうとし手首を何度切りつけようと死ぬことが

出来なくなってしまったのである。

――女は、苦しんだ。

愛するものとの別れ。同じ時代を生きた者たちとの別れ。そして、次の時代のものたちとの

別れ………。  女は、数限りない出会いと別れを繰り返してきた。

……その刻(とき)の流れか。 女は、表情を失った。 女は、名を忘れた。

女は………記憶を失った―――。

夏。

さんさんと照りつける、陽射し。

そんな季節のある一つの神社より、運命は流れはじめることとなる…。

 



式ヶ崎(きがさき)神社。

見渡す限り、木々。

眼下には、およそ4〜500はありそうな石造りの階段が続いている。

そんな情景の中にある、神社で。

女が、ひとり。

女は赤い袴を身にまとい、白装束を着、竹ぼうきで、さも面倒くさそうに回廊を掃いている。

『……はぁ…。なんで、夏休みだってのにこんなだだっ広い神社を掃かなきゃいけないのよ〜〜〜。(泣)』

口では文句を言ってはいるが、その手はしっかり回廊を掃いている。

『……大体、おじいちゃんもおじいちゃんよ〜〜。何で、こんな陽の強い日に、女の子に

こんなことさせるのよ〜〜。(泣)……んっも〜〜っ!!おじいちゃんの…バカ。(ぼそり)』

ぱしぃ〜〜〜〜ん!!

何かが、はたかれたような音。 ……の後に。

『…いった〜〜〜〜〜〜〜いっ!!もう…何するのよ〜、おじいちゃぁん……。(泣)』

少女は頭を押さえ、涙目になりながら目の前にいる爺さんに話し掛けた。(文句を言った)

『知らんわい。…郁未(いくみ)、お主が「バカ」とかいうからではないか。…ワシは

何もしとらん。ただ、天誅を下っただけじゃて。』 老人は言う。

それを聞き、郁未と呼ばれた少女は悔しそうに言う。

郁未『〜〜〜…それにしても、何も榊の束で殴らなくてもいいじゃない!

式ヶ崎 元陵(きがさきげんりょう)!!!』

ぱしぃ〜〜〜〜〜ん!!!

元陵『…祖父を名指しで呼ぶとは……なんと無礼なことをする奴じゃ。…郁未、罰
じゃ。
ここはもういい、久しぶりに「ねんころの社(やしろ)」でも掃除してくる
がよい。』

その言葉を聞いた瞬間、郁未の顔が凍りついた。

郁未『…お、おじいちゃん!? 本っ気で、言ってるの!? あんな気味悪いとこ…』

あきらかに動揺している郁未。 それにとどめを刺すかのごとく、首を縦に落とす
元陵。

……結果として、郁未は3発殴られた後で泣く泣く「ねんころの社」へ向かい、歩きだした…が、その足取りはひどく重かった。



ねんころの社。

森閑とした雰囲気の中、いかにも古ぼけた社がひとつ。

この社は昔、遥か江戸の時代よりその場所にある。…という由来であるが

彼女にとっては「ただの不気味なところ」という認識しかないのは、周りの不気味な

雰囲気のせいであろう。

郁未『……いやだなぁ…。なんでこんな気味悪いとこを掃除しなくちゃあいけないのよ…(泣)。……こんなとこ、いかにも「何か出そう」じゃあないの………』

ぐずりながらも、その手は社の床を拭きはじめていた。

………なんだかんだで30分。

はじめは、蜘蛛の巣やら何やらでいっぱいだった社は、彼女の掃除の腕前の前に
見違える
ほどにキレイになっていた。

郁未『……ふぅ。ようやく終わりそうねぇ♪…疲れた……(息)』

彼女が安堵のため息をついた瞬間。

≪……う……う……≫

うめき声とも、すすり泣く声とも取れる声が社に響き渡った。

―――硬直。

表情も、体中の筋肉までも固まったかのごとくに、棒立ちする郁未。

…………その姿のまま、さらに。

≪…う………ぐぁ………う……≫

2度目の、声。

だがその声は、明らかに1度目とは違った。

それを察し、急に真面目な顔つきになる郁未。 【…一応、巫女ですから。】

目を閉じ、精神を研ぎ澄ませる。……とてもさっきまで硬直していたとは思えない
(笑)。

…………その精神の先に、ひとつ。

何らかの“鎖”でがんじがらめにされている少女。

しかし、その表情はまるで木で出来た人形のように何の表情もない。

目を開き、白装束の中より「祓いの心棒」を取り出す郁未。

そして、それを掲げ念ずる……と。

「空間」に歪みが現れた。 …瞬間、それに向かい駆け出す郁未。

郁未『……あなたたちに、この世界にいるなって言うんじゃないけど…………』

心棒を構え、それを振りかぶりながら。

郁未『……人間に迷惑を、かけさせないでね!!!』

きぃぃぃぃいいん……………ぱしゅぅぅうう……

突如、空間から少女が現れた。 その少女を受けとめる郁未。

その直後少女は目を覚まし、彼女に問う。

『……私は………………誰、なんですか……?』と。



式ヶ崎神社 郁未の家。

元陵『…………なるほど…。…つまり、社の中に捕らえられる前のことは何一つ覚えて

おらず、気付いたら「刻(とき)の鎖」につながれていた…そういう訳なのじゃな』

少女『……「刻の鎖」………とは、なんなのでしょうか?』

元陵『…うむ。「刻の鎖」とは、遥か昔に祓い尽くされたはずのもの、“もののけ”の一種。

「空間」に歪みを生じ、時の狭間に人を引きずりこむ、悪しきものじゃ。』

少女は、それを驚いた様子も見せずに聞いていた。

……が、その何もない「表情」の異変を郁未はおぼろながらに、感じとっていた。

元陵『…して、先ほどの問いじゃが……本当に何一つとして、覚えておらんのじゃな。』

少女『……はい………。』

元陵『……う…むぅ……』

―かこ〜〜ん―

郁未たちは今、自宅の応接間にいた。

記憶を失っていた少女を、まさか一人にするわけにもいかなかったからだ。

畳の上で、元陵と少女は正座しながら向き合っている。

郁未は、暑かったので人数分の麦茶を持って来てから、すっかりくつろいでいた。

そんな郁未を見、元陵は怪訝に言う。

元陵『…なぜ、こんな未熟者が「祓いの心棒」を使いこなせるのか……あれは、わが式ヶ崎家の家宝であり、“一人前の”巫女にのみ【心を力として、もののけを祓う】ことの出来るものじゃというのに……げせんわ……。』

横目で郁未に喝を入れる元陵。しかし、郁未はそんな祖父を見ずに、少女のもとへと

近寄った。

郁未『…はじめまして。 わたしは、式ヶ崎郁未。……あなたの名前は……って、記憶がなかったんだよね……』

苦笑混じりに言う、郁未。 それに対し少女。

少女『………申し訳、ございません…』

郁未『ううん。いいの、いいの。……そうだ!! これからここで暮らさない?』

突発した郁未の提案。…に、元陵は動揺すら見せなかった。

なぜなら、彼は先ほどから「ここで保護する」つもりだったからだ。

少女『……いいの……ですか…?』

郁未『うん!!ぜんぜんおっけー!!……あ、だったら私のこと、これから「お姉ちゃん」

って読んでくれない………かな?』

少女『……お姉ちゃん……ですか……?』

郁未『……(赤面)! あ、ああ、いいの、いいの。言ってみただけなのよ!……そうだ!

私が名前を思い出すまで使う名前を考えてあげるよ。』

少女『……名前……ですか………?』

郁未『うん。え〜〜っとぉ……………!そうだ……泉穂!! …如月 泉穂(きさらぎみずほ)なんて………どうかな?』 少し照れくさそうに、郁未。 

郁未の考えた名前を……いや、郁未の「本当の優しさ」を聞いた瞬間に。


少女の中で、「何か」が切れた。

――それは、遥か昔にしまいこんだもの。

――それは、言葉で語ることなく「想い」を伝えられるもの。

少女…もとい泉穂は、その問いに。

泉穂『……はい…ありがとうございます…郁未、お姉ちゃん。』

と、あふれんばかりの“笑顔”で答えた。



式ヶ崎神社 裏の山。

木々が茂っている。

どこをどう見ても、一般的な「山」である。

鳥たちは、木蔭でさえずる。

そんな鳥たちを、カメラに収めている男。

楽しそうな、一家でのハイキング。

そんな、いつもと変わらぬ情景の中。

――――ぐらり――――

一瞬、「何か」がうごめいた。

だが、それに気付くものは誰一人としていなかった。



――3日後。

郁未の家の近所に流れたひとつの、うわさ。

なにもない、ただの山で。

明らかに不自然な、明らかに不審な。

それは、ある男のカメラの端にうつっていたもの。

―「なにもないところ」から、見えたもの。

―「くさり」にがんじがらめにされた、少女のからだ。

―そのからだには、衣服はなかった。

―そして、その顔は……。

―別の場所で、同じように「くさり」にがんじがらめにされていた少女。

―そして、記憶を、表情を失っていた少女。

―それは………如月 泉穂だった…。


そのうわさを聞いてから、一週間後。

式ヶ崎神社の「ねんころの社」に、血。

それは、写真を撮っていた男の……血。

なにか鋭いもので、心の臓を一突きにされていた。

その血は、文字を描いていた。

その文字は、こうあった。

≪神無 咲夜≫と。


そのときの郁未は、まだ知らない。

この血文字が、自らを破局へと導き始めていることを。

そして、遥か悠久の時を悲しき思い出で塗り固められた少女の悲しみを

拭うこととなる……ということを…。



次回。

なんか、二回で終わるか判りません。

しかも、「ドタバタ学園もの」から「シリアスもの」へと、変化してるし…。

とりあえず、郁未の周りで巻き起こる……事件。

あきらかになる泉穂の……過去。    実は、まだ良く原案がねれてません。 

続きは、次回です。


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