+LOVE is the sin..+ chapter of DUNE 1 |
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昨夜はキッドのしでかしたへまのせいで、『仕事』に思った以上の時間をとられてしまった。
忍び込んだ先で見つかりそうになって、あらゆる手を使って追っ手をまいた。 やっと背後の迫る気配が無くなって、自宅に帰ったのはほんの1〜2時間前だって言うのに・・・。
俺の目覚めは最悪だった。 「うっせぇ! 今何時だと思ってやがる!」 苛立ち紛れに怒鳴りながらドアを開ける。
「・・・・・あ・・・悪ィ・・・寝てたのか?」 ドアの向こうには、戸惑ったような顔をしたシオンが立っていた。
取り敢えずシオンを招き入れる。 下手に「昨日は仕事が長引いて、ほとんど寝てないんだぞ!」なんて言おうものなら、 きっとこいつはあっという間に『隊長』の顔になるんだ。 ここは、友好的に行くに限る。 「朝早くって・・・・・もう、11時じゃねえか?」
そこそこ頻繁にここへ訪ねてきているシオンは、
勝手知ったるといった風情でコーヒーなんか煎れている。
「俺が夜型なの知ってンだろ?」
それでもやっぱり遅すぎる。
「で、結局何の用だったワケ?」 唐突なくらい急な話に、思わずカップをテーブルに置いた。 「いきなりなんだってんだ? 何で月?」
思い切り不思議そうな顔をしていただろう。 「サイゾウとちょっと揉めた。あいつ、月に逃げやがったんだ。だから話し合いに行きてえんだ」
いつになく、真剣な表情だった。
無愛想なのはいつもだけど、そのあんまり表情を浮かべない顔に、
何とも言えず切羽詰まった色が見える。 ・・・・シオン、お前、俺の気持ち知らないから当然だと思うけどよ・・。
いくら何でもそれは、ちょっと残酷なんじゃない? そんな気持ちが、ついつい意地の悪い返事を返させてしまう。
「突然言われたって、俺にも都合ってもんがある。今日や明日には無理だ」
多分シオンは、俺が二つ返事で引き受けてくれると思っていたんだろう。
かすかに戸惑った気配があった。 でも・・・・・・。
今回は嫌だ。正直に言えば、絶対に送りたくない。 そう・・・・・俺であってもいいはずだ・・・・・。 逃げている間に、俺に取って代わられて、シオンの側に、戻る場所が無くなっていても、 それは、いつでも戻れるとでも思い上がっているだろうサイゾウの、自業自得だ。
これは千載一遇のチャンスだ。 「悪ィな、ホントはすぐにでも送ってやりたいんだけど、どうしても外せない用事があってさ」
さっき思わずぶつけてしまった不機嫌さを誤魔化すように、優しく言う。 「いや、俺の方こそいきなり押し掛けて悪かったな」
そういうと、冷え切ったコーヒーのカップを残して席を立とうとする。
「お・・お前、すぐ戻ンないといけないのか?」 シオンは、すぐには決めかねているようだった。 本音としては、俺の申し出を受けてしまいたいんだろう。それを邪魔してるのは、俺への遠慮か? 「もちろん、ただで寝泊まりさせてやる気はないぜ。夕飯くらいは作ってもらいたいね」
意識して屈託のない口調で、冗談めかして言う。
シオンが理性を選ぶよりも先に、本音を選びやすいように環境を整えてやった。
「じゃあ・・・そうさせてもらうぜ」
ごく自然に、いつも通りの展開に持っていく。
シオンは、「仕方ねえ」と苦笑しながらキッチンへ向かった。 「そういえばさ、さっき言い忘れたんだけど、俺の用事いつ済むか分かんねーから、 なるべくここにいるようにしろよ」 もちろんこれは、シオンを、俺からより離れにくくするための口実だ。 「ん、ああ。分かった」
同じようにスープを口には運びながら、シオンは何の不審も抱かずに素直に頷いた。
「ずっと家ン中にいるのはちょっとつまらねえが、これだけ汚けりゃ掃除してるるだけでも、
いい運動になりそうだ」
その裏側に俺が張った罠にかかったことを、シオンはまだ知らない。 |
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