+LOVE is the sin..+ chapter 1 |
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それはいつも、すぐ手の届くところにあった。
その寝顔を見た途端、胸の奥にあったざわめきが落ちついていくのを感じた。 ああ、そうか・・・。俺はシオンに会いたかったんだ。
それは、本当におかしなことだ。ほんの数十分前に「おやすみ」と言って、
互いの寝床へと向かったばかりだというのに。
自分でもおかしいと思いながら、それでもシオンの側を離れがたくて、その傍らに佇んでいた。
見事な黄金の髪。 自分の視線が、いつの間にかシオンの髪や、唇や、 細い四肢を値踏みするようなしつこい色を帯びていることに気付いた ・・・・・まずい・・・・・。 ような気がする。
これ以上ここにいると、良くないことになるかも知れない。 「・・・・・・・サイゾウ?」 片方だけの眠たげな瞳が、不思議そうに俺を映している。 「すまん。起こしちまったな」
何事もなかったように取り繕って、そっとベッドの端に腰を下ろす。
「どうしたんだ?」 シオンの頭を軽く抱き寄せると、宥めるように低く耳元で囁く。 それが耳朶を震わせたのか、シオンの躰がビクリと震えた。 「ガ・・・・ガキ扱いすんなよ!」
頭に回した腕を払いのけつつ、シオンが抗議する。 「・・・・・そうだな」
頭の芯が麻痺しているような、虚ろな気分で長い睫毛を見つめていたら、シオンが顔を上げた。
シオンは、俺の瞳をじっとのぞき込む。 「サイゾウ?」 急にシオンの顔色が変わった。何かとても不安そうな瞳で俺を見つめている。 「ほんとに大丈夫なのか? なぁ・・・?」
一瞬行き先を決めかねたシオンの手が、俺の髪にのばされた。
ぼんやりしている俺を気付かせるように、一房掴んで、それを軽く引っ張ってくる。 ・・・まるで何かをねだって甘えているようだ。 そう思った途端、下肢に激しい疼きを覚える。
上目遣いの瞳にかかる、乱れた黄金の髪。 俺の心拍数は急激に加速していた。
「シ・・・・オン・・・・・」
シオンは、俺がおかしいことに、気がつかなかった。
「サイゾウ・・、何か、息苦しい」
シオンは不思議そうに首を傾げた。 こんな感情は、持つだけでも罪だというのに、今自分はそれをシオンに施そうとしている・・・・・・。 罪の意識が頭の奥で呟いているが、目を覚ましてしまった欲動は、 今や俺にすらも止めることが叶わなかった。 「・・・おい、サイゾウ・・・?」
覆い被さったままゴチャゴチャ考えていた俺に、シオンは訝しげに声をかける。
その声が、俺を思考から引き戻した。 「・・・・・!!」
シオンの躰が硬直した。シオンの唇は、声を発したままの状態で、俺の侵入をあっさりと許す。 暖かく柔らかいシオンの唇の感触が、俺の心の内にずっとあった何かを、 埋めていってくれるような気がする。
俺はずっと、シオンが欲しかったんだ・・・・。
今、シオンは俺の腕の中にいる。
ゆっくり唇を離したときには、すでにシオンは声を出す力さえ失っていた。 「・・・・・好きだ。シオン」 その言葉に、シオンは何らかの反応を示そうとしたらしい。 だが、まるで麻酔が効いたように、その躰は自由が利かなかった。 ただ、俺をじっと見つめただけで・・・。 「ごめんな。びっくりしたろ? いきなりで」
宥めるようにシオンの髪を撫でる。
何度か撫でたあと、そのまま流れるように髪から細い首筋へと手を滑らせた。 「細いな・・・・」
シオンが強く抵抗できないのを幸いに、軽くだが、しつこいくらい日に焼けた首筋を何度も撫でる。 「・・・シオン・・・・・・」
まるで引き寄せられるように、唇が首筋に口付けていた。 「・・・・や・・・・・・・」
掠れた声が、思い出したようにその喉を滑り出た。だが、それも、ただそれだけのこと。 高ぶり始めた下肢を無理に宥めて、シオンの躰をゆっくりと紐解いていく。 夜着のボタンを、のんびりすぎるくらいのペースで一つ一つ外していく。 あまり急いでは、シオンを怖がらせる。
確かに、いきなりことに及んでしまった。それでも俺にとってはこの上なく大切なシオンだ。 「ちゃんと喰えよ」 こんな時にわざわざ言う台詞ではない。最もそぐわない言葉かも知れない。 でも、痛々しくて、愛おしくて、言わずにいられなかった。 「・・・・・・サイゾ・・・ぉ・・・・」 俺の言葉に応えたシオンの声は、脱力感のせいで、この上なく甘いものだった。 そのせいで躰に、カッと熱が灯った。
「ば・・か・・っ! 変な声出すな」
自分の下で驚くほど素直にうなずくシオンが、心の底から愛しかった。
髪を撫で、口付け、そして、そっと行為を進めた。 自分の感情を一方的にぶつけてはいけない。
堰の切れてしまった流れを、せめて濁流にしないことが、シオンへの罪滅ぼしだ。 |
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