LOVE is the sin..
chapter 3


 居間へ行くと、窓から不吉なくらいに紅い満月が光を投げかけている。

「・・・にしても、シオンもひでえよな・・。あんなとこまでいっといて、B止めなんてよ」

 冗談で混ぜっ返してみたが、自分の躰がかなりやばいのは誤魔化せなかった。 下肢は、もはや俺自身にすら宥めだれないほど、猛っていた。
 あまりの熱さに堪えかねて、思わず手を伸ばす。
 情けない、などと思う余裕もなく、そのまま、欲望が望むままに、 なし崩しに自慰へと向かっていく。



 紅い月の下で、俺は自らを慰めた。
 目を閉じると、瞼の裏に先ほどの、しどけないシオンの姿が浮かぶ。
 耳には、まだシオンの切なげな声が残っている。
 それらを反芻するだけで、躰の芯が燃えるように熱くなる。

「は・・・・だめだ・・・。相当いかれちまってるぜ、俺も・・・」

 心ではこんな自分を嘲りながらも、躰はそれをまったく無視してたぎっていく。

(・・・シオン・・、抱きてえ・・。お前を抱きてえ!)

 妄想の中で、シオンが脚を開く。潤んだ瞳でじっとこっちを見たまま。
 俺は、その映像を必死で打ち消そうとしながら、 それなのにそのシオンに己を埋め込む姿を描き出してしまう。
 仰け反るシオンの首筋が、月の光に照らされて、紅く光る。妖艶な姿。

(あり得ねえ・・・あるはずがねえ・・。シオンはこんなイヤらしい奴じゃねえ)

 自分に愛撫されている間も、シオンは常に清らかだった。
 よこしまな快楽など、一切求めることのない永遠の少年。
 熟することのない果実。
 そんなシオンの甘酸っぱいくらい無垢な瞳を思い出すと、 俺の心臓がキリキリと針を刺されたように痛むくらいに潔癖だった。

 それなのに、今脳裏にいるシオンは、妖しいまでの媚態で俺を誘う。 その姿は、どんな女性よりも艶めかしい。
 恐ろしいまでに生々しく、肉体をつないだときの感覚が下肢に宿る。 それは今までの経験をもとに、偽造されたものでしかないのだが・・・。

 相手に困るようなことは滅多になかったが、それでも何度となく行ってきたことのある行為。 それはいつも、本当の行為に比べたら無いよりはマシ、というくらいのものでしかなかった。
 それが、今日に限ってこれほどまでに猛々しいのは、やはり間接的に視姦しているのが、 シオンであるからなのだろうか。

(変態だぜ、これじゃ。・・・男相手にマジで勃ってるなんてよぉ・・・)

 男に欲情するなどとは、正直、俺にとっては鳥肌の立つ物でしかなかったはずである。
 だが今、俺は明らかにシオンに情欲を抱いて、のみならず、シオンを抱く妄想で己を慰めている。
 頭の中でどんなに自分に毒づいても、躰は言うことを聞かない。 己の無遠慮な言葉の攻撃にも萎えることなく、更に猛って行くばかりで・・・。
 すでに複数回絶頂を迎えた。それにも関わらず、下肢は衰えることをしない。

(・・・シオン・・・・・・・シオン・・・・・・・・・・・)

 何度もその名を呼ぶ。呼ばれる度、脳裏のシオンは俺に歓びをもたらした。
 惜しげもなくその身を俺の前にさらけ出し、俺を受け入れる。
 俺が動かせば、あられもない歓喜の声を漏らした。

(・・・・・サイゾウ・・っ・・・・・・・あ・・・・・・あぁっ・・・!)

 まるで男(おれ)の肉欲を満たすためにいるように思えるくらいに・・・。



 その時だった。

 背後に気配を感じて、思わず反射的に振り返った。 戦いの中に生きてきた習性が、無意識に俺をそうさせた。

 そしてそれは、「俺達」にとって、最悪の事態を招く、引き金となった・・・。



 汚れを知らない瞳が、大きく見開かれている。その青い湖面の奥に、酷く怯えた色をたたえて。

「・・・サ・・イゾ・・・なにやって・・・・・・・」

 獣のように己を慰める自分が、シオンの瞳に映っている。

「・・・・・・・・・・・」

 一瞬真っ白になった頭の中で、諦めとも付かない何かが産まれた。
 汚らわしい姿をシオンに見られた事へのショックなど、感じなかった。

 舐めるようにシオンを見る。
 さっき脱がせた夜着で躰を包んでいるシオンは、細くて折れそうで、柔らかそうだった。

 あの躰に歯を立てたら、どんなにか気持ちいいだろう?

 汚れた視線でシオンを見ながら、おのが肉欲に忠実な、ただの獣と化していく。
 ゆっくりと立ち上がり、そしてシオンへ歩を進めた。
 はっきりと分かるほど、俺の様子は異常だったんだろう。 自分に向かってくるのを見て、シオンは怯えた。とっさに逃げ出そうとする。
 だが、俺はシオンをここから逃がしたくない。 腕に抱いて、強く抱きしめて、何もかも手に入れたかった。
 気が付いたときには、俺はまるで獲物を捕らえる肉食獣のように、シオンに襲いかかっていた。

「や・・・はなせっ!」

 骨が軋むほど強く腕を捕まれて、シオンが確実な恐怖の色を浮かべる。 まるで腕を失ってでも逃れようというように、激しく抵抗した。
 だが、俺と力比べをして、勝てるはずがない。こんな細い両腕の自由など、簡単に奪える。 こんな華奢な躰など、簡単に組み敷ける。

「ちくしょぉっ! てめぇ、何考えていやがるっ!」

 怒鳴るシオンを無視して、先ほどあんなに慎重に脱がせた夜着を、乱暴に破り裂く。
 露わになった肌に、貪るように口を付け、歯を立てる。 愛しい者の素肌に歯が食い込むその感触は、全身が戦慄くほどに官能的だった。

「・・! ・・っ・・・・や・・いて・・・・サイゾ・・・・っ!」

 シオンの悲鳴が聞こえた。
 だが、そんなものはもうどうでもいい。そんなことよりも、俺ははやくシオンを抱きたい。 躰を繋いで、思う様貪りたい。
 無理矢理腰を持ち上げて、シオンの下肢を覆う物を取り払う。

「や・・・・・・!!」

 シオンの細い両脚を力ずくで押し広げると、強引にその間に躰を割り込ませた。 俺の躰に割り入られ、シオンの細い脚は更に大きく広げられる。

「・・・なにす・・・・・・っ!!」

 逃れようとして躰を起こしたシオンは、恐らく俺の、 今まで見たこともないほどに猛ったものを見たんだろう。 そして、俺が、今まさにそれで、自分を貫こうとしているのを・・・。

「いやだっ! やめろ、サイゾウ! や・・・・・っ!!」

 激しい拒絶の声は、無理矢理押し付けられた俺の男性のせいで途切れる。

「うああぁぁあぁっ!!」

 身を裂かれる痛みに、シオンが絶叫する。確かに、このままではあまりにも痛々しい。
 可哀想になって、俺は腰を退いた。 そして、シオンが俺を受け入れやすくなるように慣らすために、指を入れた。

「・・・・・・・・・・っ!!!!」

 途端に、引きつった呼吸が飲み込まれ、躰が石のように強張る。
 青ざめた顔の中で、怯えたような瞳が、助けを求めるように俺を見つめてくる。
 そう・・・シオンに何かあったときに助けてあげるのは、俺の役目だ。
 だが、俺がシオンに何かしてしまったとき、シオンを助けてくれる存在はいない。

「いてぇっ! やめ・・・サイゾウ!!」

 必死に躰を退かせて俺の指から逃れようとするシオンを、しっかりと押さえつけ、更に指を増やす。

「ああぁあぁああぁぁぁっ!!」

 シオンの悲鳴が空を裂いた。痛みを耐えるために、瞳を堅く閉ざし、俺の腕に爪を立てる。
 だが、そんな痛々しい姿を見ても、俺は自分を止められなかった。
 激しい欲動が、内側から突き上げてくる。抑えきれない劣情は、 自分でも信じられないくらいの力の解放を伴って、俺の理性を破壊し尽くしていく。
 月が照らし出した影を見て、自分がすでに人の姿から離れたことに気付いた。

「い・・・っ!!  サイゾ・・・・・・っ!! や・・く・・・ぅ・・っ!!」

 全身の筋肉を強張らせて痛みを耐えながら、なおも逃れようと床をのたうつシオンの姿は、 堪らなく俺の情欲を掻き立てた。もはや、僅かの間も疼きを抑え留めることは叶わない。
 躰を起こし指を抜くと、再びシオンの両脚を押し広げた。

「力・・・抜け・・・」

 躰の芯を襲う戦慄と興奮のせいで、俺の拍動はこれ以上ないくらいに乱れていた。
 荒々しい息の下から言うと、シオンは、あまりの激痛のためか、涙をこぼしながら俺の顔を見た。
 そして、俺の姿に気付き、瞠目する。そこには、もはや俺への信頼は微塵も見つけられなかった。 あるのは、明らかなまでの恐怖だけだ。青ざめた頬を熱い涙が伝い、全身が戦慄いている。

「・・・・し・・・・て・・・・っ! どう・・・して・・・・っ!!」

 震える唇から漏れる、心臓を鷲掴みにされるほど悲愴な声。 だが、その心臓の痛みにすら、俺は高ぶっている。
 シオンの瞳が、留め金を失ったように涙をこぼす。 あふれる涙に視界をにじませながらも、必死に俺を睨んでくる。
 哀しみが怒りへと変貌していく様を、俺は食い入るように見つめていた。

「どうし・・・て・・こんなこ・・・と・・す・・るんだ・・・よ!」
「・・・・どうして!? 理由なんかねえ。俺がこうしたいからだ!」
「俺がお前に何をしたって言うんだよ!! 何でこんな酷いこと・・・・!!」

 シオンの拳が、手加減無しで俺の横っ面を張り飛ばした。 肩に爪を立て、引き剥がそうとする。 開かされた脚が、懸命にその間から俺を押しのけようとする。

「お前の言うとおりになんか、なってやらねぇ!! 絶対に!!」

 シオンは息を乱して、俺の下から逃れようとした。多分、その為ならば、俺を傷つけても、 殺しても構わない、という覚悟で。
 鋭い瞳が、その光を俺に突き刺しながらそう言っている。
 だが、そんな攻撃的な瞳が、今の俺にとってはたまらない刺激にしかならないことをシオンは知らない。
 征服欲を極端なまでに掻き立てられ、とてつもなく暴力的な劣情が俺を狂わせた。

「何が何でも抱いてやる!! お前を俺の物にしてやる!!」

 叩き付けるように、シオンの首を手で上から押さえた。 乱暴に床に打ち付けられて、シオンは一瞬だけだが意識を失ったようだった。

「・・・・う・・・・・・っ!!」

 シオンの両腕を片手で掴むと、無理矢理押さえつけた。 空いた手は、猛り狂う己の下肢を掴む。 完全に張り詰めていたそれは、少し鼓舞しただけであっさりと絶頂を迎えた。



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