LOVE is the sin..
chapter 6
side of surlent


 気付いたら、私は、シオンさんの上から退くのをやめ、彼の上着に手をかけた。

「なにす・・・やめろ!」

 怯えて、私を払いのけようとしてくるシオンさんの腕を、いつの間にか押さえつけていた。
 前開きの服ではなかったため、下からたくし上げる。
 果たして、その下から現れたものは、予想したとおりのものだった。
 鍛えられているとはいうものの、その生活具合から華奢なままで、 更に18歳という、まだまだ未熟な年齢のまま時を止められたシオンさんの、 初々しさすら感じさせる上半身・・・。
 そこには、その外見にふさわしくない大人の刻印を、いくつも刻まれていた。

「やめろ! 見るな!」 

 シオンさんは、今にも泣きそうな、悲鳴のような声で拒絶の意を伝える。
 私の腕を払いのけようとするけれど、思うように腕に力が入らないらしい。 上着を掴む私の腕を握るのが、今のシオンさんには精一杯だった。

「シオン・・・さん・・・。これは、一体・・・」

 小麦色に焼けた肌に残る恥辱のあとを凝視しながら、それが現実のものであるのを確かめようとして、 思わず紅い花弁のあとを指で辿る。

「やめ・・・」

 大袈裟なくらい身震いをしたシオンさんの声が、途端にうわずった。

「い・・・・・や・・・・だ・・・っ」

 この、純白の戦士の身に何があったのか・・・。
 驚くほどに敏感なのは、恐らく ”昨夜の記憶” というもののせいに違いない。
 そんなことを考えながら、指先がなめらかな肌の上を滑っていく。 それだけで、シオンさんは切なげな吐息を漏らした。

「・・・あ・・・あっ・・・・やめ・・・サ・・・レ・・・」

 震えながら、イヤイヤと首を横に振った。
 そんな、いつものシオンさんでは決して見られない、幼い少年のような仕草と、 堅く閉ざした瞼の端にこぼれた、一粒の涙を見とがめた瞬間、 あれほど重かったはずのシオンさんを抱き上げていた。
 そして、ベッドの上に寝かせる。

「シオンさん・・・、”彼” に、何をされたんです?」

 聞きながらも、シオンさんの肌をなぞるのをやめない。 シオンさんは、たったそれだけの刺激にすら堪えられず、ふるえる手でシーツを握りしめていた。

「・・・や・・・サ・・レント・・いや・・だ・・・あぁ・・・」

 まるで小さな少年のようになってしまったシオンさんに、いつの間にか、毒を持った感情を抱いていた。
 眼鏡を外し、テーブルの上に置く。
 これだけ近ければ、眼鏡なんて必要ない。
 シオンさん・・あなたの可愛らしい顔だってよく見える。
 そして、これからあなたが見せてくれるであろう顔も、ね・・・。

「いい子だから、言ってご覧なさい。どこを、どうされたんです?」

 指先は、シオンさんの鳩尾を上へと滑り、淡い尖りの上で止まった。それを、きゅっと軽く摘む。

「あぁっ!」

 敏感なシオンさんは、途端に頬を真っ赤に染めた。驚くほどに甘く、可愛らしい悲鳴を上げる。

「ここは、どんな風にされたんですか? これよりも優しく? それとも強く?」

 シオンさんを組み敷き、その喘ぐ姿をじっと見る。
 上気した頬。
 力無く開かれた唇。
 そこから漏れる甘い吐息。
 片方だけの青い瞳は涙が止まらない。

「可愛いですね、シオンさん。こんな事をされても、決して淫らな感じを与えないなんて、 きれいなあなたが羨ましいですよ」

 すでに私は男を知る躰だ。おそらく私を抱いたことのある人以外は誰も知らないだろうけれど、 分厚い理性の裏側には、性欲の歓びを身に刻んだ私がいる。 自分でも、嫌悪を感じてしまうくらいに乱れを知っている私が・・・。
 でも、シオンさんは、男の下に敷かれても、その清らかさを失わない。
 熟し切ってしまった躰を持つ私には、それは羨望の対象になった。

「・・・サ・・・・レ・・・」

 涙で潤んだ瞳で、すがるように私を見る。その愛らしい瞳は、はっきりと「いやだ」と告げていた。

 そんな顔をしては、逆効果だということさえ知らないんですね・・・。

 ねたましさのあまりに、私は知らず知らずのうちに酷薄な笑みを浮かべている。

「そんな目で見ても、ダメですよ。私はあなたが妬ましいんですから。 ・・・・・どうです? この世で最高の快楽を知りたいとは思いませんか?」
「・・知り・・た・・・くね・・・・」

 シオンさんは、私の悪魔的誘惑に、戸惑いもせず首を振った。 なぜかそれがとても不愉快だった。
 乱暴に顎を捉えると、羞恥のためにそむけられた顔をムリヤリ振り向かせる。

「・・・あくまで、良い子のままでいたいんですか!」
「・・・・俺・・・・・男・・・・だ・・・っ」
「でも、あの男には許すんでしょう?」

 脅すような私の追求に、シオンさんは首を振って応える。
 その返答に苛立ち、私は荒々しくシオンさんの肌に残る鬱血の痕を指でたどった。

「じゃぁ、これは? 彼につけられたんじゃないんですか?」
「・・・・う・・・・・」

 尖りの側に残る歯の痕を、指先で撫でる。

「こんな事をされたのに、今更、男だからどうだというんです?」
「・・・い・・・やだ・・・・っ!」

 シオンさんを壊れ物のように大切にしているサイゾウは、多分、シオンさんを適度に喜ばせ、 過度に刺激しないように、慎重に彼を抱いたのだろう。
 でも、私は、シオンさんを乱すことを目的としている。 意図して、必要以上に淫猥な動きでシオンさんの身体を刺激した。
 効果のほどは、私がほんの少し指でなぞっただけでも跳ね上がる、 その悩ましい姿を見ればよく分かる。

「さぁ、諦めて言ってご覧なさい。彼は、あなたをどうしたんですか?」
「や・・め・・・・サ・・・レ・・・・」
「こんな風にしたんですか?」

 はっきりと分かるくらい強く、舌でシオンさんの首筋をなぞりあげる。
 その刺激に、シオンさんの躰が痙攣するように小刻みにふるえた。
 左手の整った指先は、胸の尖りを愛撫したまま。
 右手が、その細い躰のラインを、乱れた動きでなぞる。 首筋から脇へ流れ、さするようにして腰まで手をおろす。

「・・・あ・・・く・・うっ・・・」

 尖りを解放した左手を、下肢へ降ろした。そのまま、ジーンズの上から、シオンさんを愛撫する。

「あ・・・あ・・や・・・・・だ・・・・」

 ジッパーをおろし、そこから手を入れる。手の中にシオンさんを納めて、その掌中で弄んだ。

「・・いや・・・・サ・・レント・・やめ・・・・・・あぁっ・・・や・・くぅっ!」
「イヤだ、といってる割には、ずいぶんとここは喜んでますよ、シオンさん。あなたもいけない人ですね」
「・・いやだ・・・・・・サーレ・・・・ント・・・・いや・・・・」
「ここは初めてですか? 違うでしょう? こんな事ぐらいは、されたんじゃないんですか?」

 言いながら、さすりあげる。やや乱暴なその行為に、シオンさんは自身を堅くした。

「・・あ・・・や・・・・やめ・・・いやだ・・・・怖い・・・・サ・・・・レント・・・・っ」

 シオンさんは、子供のように顔を覆ってすすり泣く。
 その初々しい行動が、羨ましく、また妬ましい。 自分では、どんなにうまく演技をしても、こんな清純さは出せない。
 いつしか、私はひどく暴力的な感情を持ち始めていた。

 どうやってもきれいな躰に戻れないくらいのことをしてやりたい。
 浅ましく男を求めるような躰に、変えてやりたい。
 肉欲を欲して、男を誘うようないやらしい躰に・・・・。

 一度は放した胸の尖りを、再び愛撫する。 指と口と舌とで、じっくりとその部分を愛される悦びを味わわせる。

「・・・・・・・・・・っ・・・・・・ん・・・・・ふ・・・・・・っ!」

 経験の薄いであろうシオンさんは、これだけですでに朦朧としていた。
 吐息ばかりが喉を滑る。
 四肢はすっかり力を失い、ぐったりとベッドの上に投げ出されていた。
 そんな弱々しい彼の姿は、思った以上に色っぽく、綺麗だった。
 拍動が一気に加速する。
 滅多に接合を求めない下肢が、恐ろしいくらい強くシオンさんを求めている。

「どう・・・したんです? シ・・オンさん。抵抗しな・・・・いんですか?」

 気付くと、私の息も、徐々に乱れ始めていた。
 滑らかでしなやかなシオンさんの肢体が、こんなにも激しく欲動をかき立てるとは思わなかった。
 躰が熱くなるにつれて、私の愛撫も執拗さを増していく。

「・・・・・・・・・は・・・・・・・・あ・・・・・・・っ・・・・」

 相変わらずシオンさんの口から漏れるのは、吐息ばかり。 いつまで経っても淫らさを見せないことに、いらだちを覚えた。

 あられもない声で喘ぐあなたを見たいのに。
 悩ましい動きで私に応えて欲しいのに。

「あなただけが・・・・清らかなんて、そんな・・・のは許しません・・よ」

 そんなに強情を張るんだったら、こちらも強引に行くしかない・・。
 私は、シオンさんの二の腕を掴むと、乱暴に引き寄せ、うつぶせにする。
 シオンさんは、掴んだ腕を払いのけようとしたらしいけれど、 それはほとんど、明らかな行動としては形を成していなかった。
 そんな弱々しいシオンさんの様子を無視して、 息が乱れすぎて苦しげな彼のジーンズに手をかける。

「・・・・・や・・・・・」

 朧気に、私が何をしようとしているのかを悟って、シオンさんが拒絶の声を漏らした。
 でも、その程度では、私を止めることは出来ない。

「怖がること・・・はないでしょう? 彼に、十分・・・可愛がって・・もらった場所じゃないんですか?」
「・・・・・・ち・・が・・・・・・・」
「もう、良いです。黙って・・・いらっしゃい」

 ジーンズを全て脱がせることはせず、僅かに腰から引き下ろして、臀部だけを露にする。

「ずいぶん・・・大きかったでしょうね、あの男のは。あなたの細い腰が、よく壊れませんでしたよ」
「・・・・やだ・・・・・」

 細い涙声を無視して、シオンさんの腰を引き寄せた。
 四つん這いで腰だけを私に向かってつきだした獣じみた姿・・・。
 日に焼けたシオンさんの肌は、刺激に応えて熱くなっており、汗のためにしっとりとしていた。 それが、ただでさえなめらかな彼の肌を、より一層艶やかに見せる。
 黄金の長い髪と、赤と青の瞳、そしてなめらかな小麦色の肌。
 美しい獣人の王のような彼の姿は、私の中に、今まではなかった感情を呼び起こす。

 独占欲。

 このまま、彼に、自分の味を覚えさせ、自分なしでは生きていけないような躰にしてしまいたい。

 突き上げる感情のまま、シオンさんの下肢の谷間に顔を埋めた。

「・・・・・・やっ!!」

 シオンさんの躰が激しくふるえる。舌で、その、小刻みに震える、最も敏感な部分をなぞった。
 その奥へねじ込むように舌を使う。
 急に力を抜いて表面だけにそっと触れる。

「やっ!! いやだっ!! サーレントっ!!」

 必死で退こうとする腰を、腕の中に固定して、執拗に舌を使い続ける。

「あ・・・・!! く・・・っ・・・・いや・・・・だ・・!!」

 か細くなっていくシオンさんの声。
 それがすすり泣きに変わる頃、ようやく顔を上げる。 口元を汚す自分の唾液を、手の甲で拭うと、そのまま、その指をシオンさんに埋め込んだ。

「・・・あぁっ!」

 シオンさんの躰が、電流を流されたように仰け反る。

「や・・・っ! いてぇっ!」

 その悲鳴の声量は、今までよりもグッと大きかった。
 私は、その声が外に漏れるのを懸念して、シオンさんの口の中にシーツを押し込んだ。
 シオンさんの悲鳴がくぐもる。
 それを確認して、指の数を増やした。

「ううっ・・・! んうっ!」

 シオンさんの悲鳴は、シーツに吸い込まれて、苦しげなうめき声程度にしか聞こえない。
 私は、巧みに指をうごめかせ、シオンさんを内側からほぐした。唾液がそれを助ける。
 時間をかけずして、シオンさんの秘門は、すっかり男を受け入れるのに適したものになった。
 それを確認して、おもむろに行動を起こす。
 今までよりももっと高くシオンさんの腰を引き寄せ、谷間を広げる。

「シオンさん。力を抜いて・・・」

 一応そう声をかけておいて、一息に奥まで貫いた。

「んんンん・・・っ!! んっんん!!」

 シオンさんの喉から、絶叫らしい声がほとばしった。 しかし、それも口の中に押し込まれたシーツに吸収されて、くぐもった呻きにしかならない。
 更にシオンさんの奥へ進むため、腰を動かす。 打ち付け、突き上げるような動きで、更にシオンさんを穿った。

「・・・・・・っ! ・・・・・っっ!!」

 その動きに、シオンさんはまもなく声を発する力もなくなり、ただ呆然として涙を流し続けるだけになった。



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