+LOVE is the sin..+ chapter 8 side of saizoh |
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シオンの家に戻ると、手伝いのために呼んだ連星竜が、慌てて奥から出てきた。
「サイゾウ様! シオン様が・・・!」
連星竜に薬草を渡すと、慌ててシオンの自室へ向かった。
「シオン・・」 声を押し殺した泣き声が痛々しい。思いっ切り抱き寄せたいのを、シオンが怯えてはいけないから、 と必死で抑え、そっと布団の上から背中を撫でる。
「シオン・・・」
俺の手の暖かさが、シオンの気を緩めたらしい。枕を掻き抱くようにして、シオンは声を放って泣いた。 「シオン。もう、大丈夫なんだぞ。な? 分かるか? 俺が、ちゃんとここにいてやるから。 ずっといてやるから。だから、何も怖い事なんて、ないんだぞ」 腕の中で、シオンが躰をひねって俺にしがみついてきた。 俺は、その躰を包み込むように、腕の中に納め、髪や背中を優しく撫でた。 「大丈夫だ。もう、怖くない。な? 大丈夫だぞ」
優しく何度も繰り返して言い聞かせる。
「シオン・・・」
か細く俺を呼ぶ声が、俺をいっそうつらくした。
それでも、俺までが暗い顔をしては、逆にシオンに不安を与えるだけになる。
「何だ?」 二、三度しゃくり上げると、シオンは、それ以上何も言わず、俺の胸に顔を埋めていた。
「シオン・・・?」
「サイゾウ・・・・」
どこかおかしなシオンの受け答えが、俺に話しかけたごく普通の会話ではなく、
『サイゾウ』という存在の確認であることに気付くのに、少し時間がかかった。
「シオン様。薬湯です」
差し出した茶碗を、シオンではなく俺が受け取った。 「飲んでみな。落ち着くぞ」 腕の中のシオンをのぞき込むようにして、そっと茶碗を手渡してやる。 すっかり俺の腕の中に収まっているシオンは、それを両手で受け取り、そっと口に運んだ。 「ありがとう」
ゆっくりと薬湯を飲み干したシオンは、茶碗を連星竜に差し出す。 「何か召し上がりたいものは、ございませんか?」
シオンは黙って首を振る。 こんな苦しみを、シオンに与えたのは自分だ。 俺は、それ以上シオンの姿を見ていることが出来なくなり、部屋を出た。
「サイゾウ様・・」
連星竜も察しているらしく、深くは追求してこない。
どこへ行くわけでもない。ただシオンの側にいるのが辛かっただけだ。
ぶらぶらと無意味にその辺りを徘徊する。
いつ来ても、ヴァドは、異質のものを排斥しようという性格のない、大らかな町だ。
シオンがこの町に生まれて、本当に良かったと、ずっと思っていた。 その時、俺は自分の躰の異変に気付いた。町の入り口あたりで声をかけてきた主婦に適当な返答をすると、 不自然さを感じさせない程度に急いで町を出た。 |
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