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かまぼこ板職人

 私の父はかまぼこの板を作る、かまぼこ板職人でした。
 父の作ったかまぼこ板は、厚すぎず薄すぎず、かまぼこがきれいに取れて、角が立ったそれは見事なかまぼこ板だったそうです。
 しかし、かまぼこ板は機械化の波に押され、手作りにこだわる職人気質の父の生活は苦しくなっていきました。
 いつの間にか母は家を出て行ってしまいました。
 父はひとりっこの私にかまぼこ板職人になって欲しかったそうですが、私はそれを嫌がりました。しかし、父は私に何も言わないで東京の大学に進学することを許してくれました。
 私は大学を卒業してから、普通の会社に就職しました。それから2年経って、父が倒れました。
 寝たきりになってしまった父は、そのまま帰らぬ人となってしまいました。
 それから私は父と同じ職人の道を歩むことを決意しましたが、父はもう最後のかまぼこ板職人だったので、私はちくわの芯を作る職人の門を叩きました。
 私はちくわの芯職人として成功し、大学時代から付き合っていた彼女と結婚し、子供も生まれました。
 私の作ったちくわの芯は、太すぎず細すぎず、焼きあがったちくわを抜くときに抜きやすいと評判でした。
 しかし、もう昔ながらの手作りのちくわは減ってゆき、ちくわも機械で量産されるようになり、私の生活も苦しくなってきました。
 妻はそれでも手作りにこだわる私の元から去っていってしまいました。
 私はそれでもなんとか男手ひとつで息子を育て、息子も大きくなりました。
 私としては息子にはちくわの芯職人をついで欲しいのですが、やはり息子はそれを嫌がっています。息子は東京の大学に進学したいようで、私もまたそれを黙って許してやろうと思います。
 息子には父や私と同じような職人の道を歩んで欲しくないと思っています。
 この頃、私はあの時の父の気持ちがようやく分かったような気がして、寂しい気持ちになるときがあるのです。

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