天の玄武編

「はい、そこまでで結構です。上達されましたね、シリン」
 永泉はいつものような柔らかな微笑をシリンに向けた。

「永泉様の教え方が上手だからです、きっと」
 シリンは笛から唇を離し、膝の上に置いてにこっと微笑んだ。

 永泉はその笑顔を見て微笑み返したが、急に顔を曇らせて俯いた。
「永泉様?」

 具合でも悪くなったのかとシリンが心配そうに近づこうとすると、永泉はすっと下がった。

「シリン・・・貴女も随分と上達されましたから、今日で笛をお教えするのはお仕舞いに致しましょう」
 俯いた顔を上げた永泉は無理やり浮かべた笑顔でそう言った。

 シリンは驚いて問い質す。
「どうしてですか?あたしが何か永泉様を不愉快にさせるように事をしましたか?」

 最初の頃に比べて上達したとはいえ、笛はまだまだ未熟なままだ。
 指導を終えるなどと言い出すとは、自分は何か彼の気に触る事をしてしまったのだろうか?

「いいえ、貴女のせいではありません。わたくしが・・・わたくしの勝手な事情です。お気になさらずに」
 永泉の答えは歯切れが悪く、シリンを納得させる事は出来ない。

「でも、教えて頂き始めてまだ日も浅いのに、どうしていきなり辞めるなんて仰るんですか?」
 シリンは永泉に詰め寄って尋ねる。

 永泉は真っ直ぐに真摯な瞳で尋ねてくるシリンを眩しそうに見て目を伏せる。
「わたくしには貴女は眩しすぎます、シリン。その輝く髪と同じように全てを曝け出されてしまいそうで・・・わたくしは・・・わたくしはそれが怖いのです」

 震えるように俯いたままの永泉にシリンには『怖い』と言う言葉が引っ掛かった。
「あたしが・・・鬼だから怖いんですね」
 シリンの冷めた様な言葉に永泉は、はっと顔を上げる。

「ち、違います!そうではなくて・・・」
「いいんです、永泉様はお優しいから。はっきりとは仰れないのでしょう?あたしが鬼なのは本当の事ですし、今だって路を歩いていればあたしを見ただけたで怖がって逃げ出していく人はいるんですから。そんな鬼にこれ以上笛を教えるなんてイヤですよね?ごめんなさい、あたし気づかなくって」

 シリンは永泉の前に手を付いて深々と頭を下げる。
「これからは一人で練習します。今まで鬼のあたしに笛を教えて下さってありがとうございました」

 シリンが頭を上げようとすると、永泉がその手にそっと触れて来た。
 だが、永泉はシリンと目を合わせようとはせず、その表情は苦悩に満ちている。
「違うのです、シリン。貴女が鬼だとかそう言う事ではなく・・・貴女が美しい女性になってしまわれた事がわたくしには辛い事なのです」

「・・・仰っている意味がよく判りません、永泉様」
 シリンは途方に暮れたような表情で問い掛けると永泉は優しげに微笑んでシリンを漸く見つめた。
「いいのですよ、貴女は判らなくて。この思いは人に知られてはならない邪まなものなのですから」

 シリンの両頬をそっと持ち上げて顔を上げさせると
「貴女は鬼である前に一人の魅力的な女性なのですから、もっと自信を持って生きて下さい」
 そう言っていつもの儚げな笑顔を浮かべた。

 シリンはゆっくりと自分の頬から離れていく永泉の両手を握り締めて叫んだ。
「永泉様!一人で悩んでしまわれないで!あたしに出来る事があったら何でも仰って下さい!」

 鬼の自分を可愛がって慈しんでくれれた八葉の面々にシリンは恩を感じている。
 自分に出来る事があれば何でもしたいと思っていた。
 今までの自分では幼くて出来なかった事でも、成長した今の自分にならば出来る事があるかもしれないと。

 特に、この優しい僧籍にある皇子は普段なら顔を合わせることも出来ない程、身分の高い方なのに今まで自分に優しく笛を教えてくれた。
 髪飾りや匂袋といった小物を贈ってくれた事もある。

 シリンの言葉に永泉は溜息をそっと吐いた。
「わたくしの思いを聞けば、貴女はきっとわたくしを嫌いになってしまうでしょう。わたくしはそれが怖いのですよ、シリン」

「永泉様を嫌いになる事なんて絶対にありません!」
 永泉の手を握り締めて叫んだシリンの言葉に永泉は
「その言葉を信じても宜しいのですか?」
 と不安そうに尋ね返して、深く頷いたシリンににっこりと笑った。



「お〜い!シリ−ン!」
 天真が廊下を大声で叫びながらドタドタと足音を響かせて歩いていると
「シリンならこちらでわたくしと笛の練習をしておりますよ」
 と永泉の声が返ってきた。

 声のしたほうを見ると、御簾の影には二人の人影が見える。
「あ、ワリィ!練習中ならいいんだ。町に下りるから一緒に行こうかと思っただけだからさ。じゃあな、練習頑張れよ、シリン」
 天真はそう言ってまた足音を響かせながら去っていった。

「・・・永泉様、どうして天真お兄ちゃんに返事をされたんですか?」
 御簾の影からシリンが小さな震える声で尋ねると
「天真殿は貴女が見つかるまで探し回られますよ、この御簾を強引に引き上げてでも。それでも宜しかったのですか?」
 平然とした永泉が答えるとシリンはフルフルと首を横に振った。

 今、天真にこの御簾を上げられてしまったら、きっと恥ずかしくて生きてはいられない。
 シリンは今、肩に袿を掛けただけの状態で、その下は何も身に着けていない。
 代わりに荒縄が複雑にその身に回されている。

「さあ、天真殿も仰っていた事ですし、練習を続けましょうか?シリン」
 永泉はそう言っていつものように微笑むと、笛を取り出してその先をペロリと舐めた。

「貴女がわたくしを受け入れられるようになるまでこれで練習して頂かなくてはなりませんからね」
 永泉が笛をシリンに向けるとシリンは顔を赤らめながら頷いて座っている両足を広げていく。

「今日は前にしましょうか?それとも後ろの方が宜しいですか?」
 足の間にも掛けられた縄をぐっと持ち上げて永泉が尋ねると
「ひゃん、ど、どちらでも・・・永泉様のお好きな方で・・・」
 シリンは体を一瞬跳ね上げて、震える声で答えた。

「わたくしはどちらでも構いませんが・・・そうですね、こちらの方はまだあまり慣らしていませんでしたね」
 永泉はそう言うとシリンの体をくるりと後ろ向きにして袿を取り、頭を下げて腰を高く上げさせた。

「ああっ、永泉様ぁ」
 肌を覆い隠すものを失ったシリンは恥ずかしさに思わず永泉の名を呼んで抗議したが、両手は後ろ手にぐるぐると縛り上げられ、抵抗する素振りも見せない。

「恥ずかしいですか?シリン、でもその羞恥が快感をより深めてくれるでしょう?ほら、もうこんなに」
 シリンの腰を高く上げさせた永泉はシリンの足に伝い始めたものを指でそっとなぞった。

「あん、は、はい・・・永泉様・・・仰るとおりです」
 シリンは触れられるとピクリと体を敏感に反応させながら従順に頷いた。

「貴女の肌は白くて美しいですね、シリン。縄がとてもよくお似合いです」
 感嘆するような永泉の言葉にシリンは「ありがとうございます」と答える。

「この白い肌には赤いものも似合いそうですね、例えば」
 永泉はシリンの白桃のような尻に手を振り上げてパーンと音を響かせて叩いた。

「ああっ、はぁん」
 くっきりと赤く手の跡が残るほどに叩かれてシリンは思わず声を上げるが、その声は痛みによる悲鳴ではなく、艶めいていた。

「この白と赤の対比が美しいですね、おや?シリン、どうしました?」
 シリンは今の打擲で軽く絶頂に達してしまい、ずるずると体を床に沈ませてしまった。

「練習はこれからですよ?シリン」
 永泉はシリンの体を膝の上に抱き上げて優しく囁いた。

「はい・・・永泉様・・・」
 シリンは陶然とした表情でこっくりと頷いた。



「序章」へ戻る


こっぱずかしい言い訳

 警告ページにもありましたが、これはチャットで出来たお話です。
 が、ログを取っていなかったので(ウチのチャットはそれが出来ないので)私の記憶だけを頼りに再現いたしました。
 去年の10月ごろから1ヶ月くらいかけて続けたシリーズでした。
 実はチャットでは単純に呪が掛けられてから10年経った時、が設定でしたのでシリン14歳、永泉27歳のはずでしたが そうすると他の相手に問題が・・・なので泰明さんに頑張って貰いました。

 坊主はエロくて色々知ってそう(すっごい独断と偏見)チャットの時に一致した意見、コレを元に進みました。
 一旦引いてから押す、中々卑怯なやり方です、永泉様(苦笑)
 チャットでは後ろに入れただけだったんですけど・・・今回は入れてませんし永泉は脱いでもいないなぁ(イヤ、私が男の裸が嫌いだからと言う訳だけじゃなくて)

 嫌いなお初ネタを避けてしまったので肝心のシーンが曖昧ですが、初めての時永泉は入れちゃったんでしょうか?(当たり前だろ)
 前に?後ろに?
 アブノーマルが似合いそうな人です、玄武の二人は(泰明編もご期待下さい、ウソです)
 おや、笛も入れてない、しまった、書き忘れた(爆)

 快楽に堕ちていくシリン・・・ダークで実は結構好きです。

 

 


 

 

 

 

 

 

PC用眼鏡【管理人も使ってますがマジで疲れません】 解約手数料0円【あしたでんき】 Yahoo 楽天 NTT-X Store

無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 ふるさと納税 海外旅行保険が無料! 海外ホテル