鬼の少年編

 セフルは一瞬眼を疑った。
 あれは・・・あの八葉と一緒に居る少女は・・・でもまさか。

 木の上で藤姫の屋敷を覗っていたセフルは八葉の一人と一緒に門を出てきた少女の髪の色に気づいて二人の会話を聞こうと近づいた。

「今日は市で何でも買ってやるぞ、護衛の給料が出たからな」
「え〜?無理しなくってもいいよ天真お兄ちゃん、安いお給料なんでしょ?」
「こ、こら、シリン!最近生意気だぞ、お前!」

 高らかな笑い声と共に立ち去った二人をセフルは唖然と見送った。
 シリン・・・確かにシリンと呼ばれていた。
 でも、あの姿は?
 最近、姿を見せないと思ったらこんな所で何をしているんだ?


「お休みなさ〜い、天真お兄ちゃん」
「ああ、お休み」

 明かりを持って寝所に入ったシリンは部屋の隅に佇む影に気づいて声を掛ける。

「誰?詩紋お兄ちゃん?」

 明かりに反射した髪の色で思わずそう尋ねるが、近寄ってきた影は別人だった。

「あんた誰?」

 誰何するシリンの言葉にセフルは忍び笑いを零す。

「誰とはご挨拶だな、シリン。俺の事を忘れたのか?」

 そう言われて、傍に近寄られてもシリンには判らない。
 詩紋と同じくらいの背格好の自分と同じ髪をした少年に見覚えはなかった。
 少年は笑っているが、彼は詩紋と違って優しそうな雰囲気など持ち合わせては居なかったからシリンの答えも素っ気無いものになる。

「知らない、あんたなんか」

 セフルはシリンの物言いに激しく詰め寄る。
「知らないだと?俺はお前を知ってるぞ、鬼のシリン。どうやって八様を誑かしてここに潜り込んだんだよ!」

 シリンは思わず後ず去りながらもセフルを睨み付けて叫ぶ。
「あたしは誑かしてなんかいない、泰明の呪で小さくなったから藤姫様が引き取って下さったんだよ!」

 シリンの言葉に事態を察したセフルは鼻先で笑い、叫んだ。
「フン、それで良い様に言い包められて八様に尻尾を振ってるって訳か?俺やお館様の事を忘れて!」

「お館様?」
 セフルの言葉に怪訝そうな顔をしたシリンにセフルは尚も詰め寄る。

「そうだよ!お館様の為なら何でもしてきた癖に!」
 あれほど忠誠を誓っていた彼の事まで忘れてしまったのか。

「ひどい女だな!お前は!!」

 セフルは怒鳴ってシリンの肩を押し突き飛ばそうとするが、何とか踏み止まったシリンはカッとなって負けじとセフルの肩を突き飛ばす。

「何よ!覚えてないんだから、仕方ないでしょ!」

 まだ少女のシリンの力は小さいが、自分に向けられた敵意にセフルはカッとなる。
「覚えてない?本当に忘れたのか?貴族の屋敷に引き取られて甘やかされて忘れた振りをしているんじゃないのか?こんな良い物を着て!」
 セフルはシリンの袿を掴んで彼女の胸倉を掴み上げる。

 シリンは自分より少しだけ背の高い少年に掴み掛けられながらも、気丈に睨み返す。
「あたしは昔の事なんか覚えてないし、あんたなんかも知らない!」

 あくまでも自分を拒絶する言葉に感情の糸が切れたセフルは少女に手を振り上げた。
 パーンと小気味良いほどの音がして、シリンの体は床に投げ出される。

「許さない、許さないぞ!鬼であった事を、昔の事を忘れる事は!」
 床に倒れたシリンにセフルは跨って、何度も平手打ちを繰り返す。

「っ、やっ!」
 シリンは逃れようとするが、腰の上に座り込むように跨られていては逃げ出せない。
 次第に唇が切れて血が滲んで来る。

 セフルは激しく抵抗するシリンの襟元が緩んで露になってきた白い肌に気づいた。
「そうだ、こうすればお前も思い出すかもしれないな」
 シリンの緩んだ袷を引き裂くように広げて胸元を露にさせる。

「いや!何すんのよ!」
 顔を赤く腫らしたシリンは叫ぶが
「お前は体を使って男を誑かしていたんだ、それを思い出して貰うんだよ」
 残虐そうなセフルの笑顔にシリンは爪を立てて抵抗しようとする。

「大声を出せばあんたなんか、天真お兄ちゃんや頼久にやられちゃうに決まってるんだから!」
 そう言って睨み付けて来るシリンをセフルは嘲笑った。
「呼べよ、八様を大声で!お前が鬼の仲間に戻ったと奴等にも判るだろう」

 セフルの言葉にシリンは押し黙った。
 この少年は信用出来ないが、自分が鬼であるのは確かな事。
 昔の自分を知っているというこの少年の言う事が本当なら・・・天真や頼久から追い立てられるのは自分も同じになる。

「どうした?出せよ、声を」
 セフルは露になったシリンの胸を鷲摑みにしながら身元で囁いた。

「そんなに怖いのか?鬼に戻って八様に追われる事が」
 シリンはギュっと眼を瞑って顔を背け、セフルの追及をかわそうとしたが、少年はそれを許さなかった。
 シリンの顎を捉えて自分の方を、正面を向けさせる。

「忘れるなんて絶対に許さない。お前は鬼の女で、俺の仲間だったんだ。八葉は味方じゃない、敵だ」
 セフルはシリンの着物の裾を乱暴に捲り上げると、足を広げて自分の体を割り込ませた。

「嫌だ!止めて!」
 シリンはこれからされようとしている事に気づいて必死で抵抗しようとするが、強い力で押さえつけられたまま、体は動かない。

「こうされたらお前も思い出すだろう?」
 セフルは愛撫も前戯もなにも施さぬまま、強引にシリンの中に押し入ってきた。

「やあっ、痛い!」
 首を振って叫ぶシリンに構わず、セフルは乱暴に腰を振り続ける。

「どうだ?思い出さないか?お前は男にこうして腰を振っていたんだよ」

 嘲笑いながら罵るセフルにシリンは尚も首を振り続けた。
「いや!今のあたしは違う!覚えてなんかない!」

 頑なに拒み続けるシリンにセフルは舌打ちした。
「チッ!体だけでなく、記憶も戻っちまったのか?でも、お前が男を食い物にしてきたのは本当の事だ」

 シリンはセフルの容赦ない攻めで受けた体を切り裂くような痛みに意識が朦朧となりながらも首を振る。
「知らない・・・あたしは知らない」
 うわ言の様に呟きながらシリンは否定し続ける。

 手と足を投げ出したようにぐったりとさせながら呟き続けるシリンからセフルは体を離した。 
「お前が思い出すまで、何度でも来てやる」

 シリンは起き上がる事も着ている物を直す気力も体力も失って立ち去っていこうとする少年を見ていた。
 そして、彼の去り際の言葉もしっかりと耳に届いた。

「忘れる事は許さないからな、シリン。その身に刻んで思い出させてやる」

 影が消えるように音もなく立ち去った少年の気配が消えるのを感じたシリンは瞼に溢れる涙が零れるのを拭う事も出来ず、ただ床を濡らした。

 今までこの屋敷で幸せに暮らしていた事はそんなにいけない事だったのか?
 鬼である事を忘れてしまうほどの幸せな時間は自分には与えられるべきものではなかったのか?

 鬼である事がいけないのか、忘れてしまった事がいけないのか、シリンには判らなかった。
 ただ、これからもその責めを負わなければならない事だけが判った。


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こっぱずかしい言い訳

 警告ページにもありましたが、これはチャットで出来たお話です。
 が、ログを取っていなかったので(ウチのチャットはそれが出来ないので)私の記憶だけを頼りに再現いたしました。
 去年の10月ごろから1ヶ月くらいかけて続けたシリーズでした。
 実はチャットでは単純に呪が掛けられてから10年経った時、が設定でしたのでシリン14歳、セフル24歳のはずでしたがそうすると他の方に問題が・・・なので泰明さんに頑張って貰いました。

 いや〜ノリノリでした。セフル編(笑)
 鬼畜モード全開!
 泣き叫ぶシリンを乱暴にする逆転した年齢のセフルとシリン。
 続けて2回位したような記憶があります。
 でも、チャットではもっとスムーズにセフルがガンガン攻めてたのになぁ・・・14と24では力も迫力も違いすぎるかなぁ。
 言葉ももっと荒々しくて乱暴で・・・少年のセフルの面影がありませんでした(チャットのセリフをはっきり覚えているわけではありませんが)ので、今回は苦労致しました。(ただ単に、私が彼のキャラクターを掴めていないだけという話も・・・)

 泰明編で彼にあまり乱暴にさせなかったのはコレがあるからでもありました。
 セフルの中にはシリンだけが幸せそうにしているのが気に入らない、憎しみとそれ以外のものもあることになっていましたが。

 チャットでは10年間、セフルは一人で生き延びていたという設定。
 その孤独をシリンにぶつける、と言う展開になっていました。
 救いはなく、ひたすらダークになって行く・・・。
 もはや、京にたった二人だけとなった鬼なのに・・・メロドラマだなぁ(どこが?)

 セフルはこの後もシリンを脅しつつ体を重ねて・・・どうなっていくんでしょうねぇ?(無責任)
 ラブラブなら二人で山奥へと逃避行、ダークなら心中かな?(酷過ぎる)


 ともあれ、これでシリンのお誕生日企画は終了です。
 もし、全話を制覇された方がいらっしゃいましたら、お疲れ様でした。そしてありかとうございます。
 短いようで長い物にお付き合い頂きまして。
 オリジナル設定に手を出すのはこれっきりにしときますから、許して下さいね(はあと)

 

 


 

 

 

 

 

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