「いろは?」
「そう」
シリンは友雅に尋ねられて思わず聞き返してしまった。
尋ねた本人はいつもと変わらぬ微笑を浮かべている。
「・・・知ってるよ、『色は匂へど散りぬるを・・・』でしょう?鷹通様に教えて貰っているもの」
字も知らないと思われていたのだろうか?とシリンは少々憤慨しながら答える。
「では、『恋のいろは』についても彼に教えてもらったかい?」
「??文字の他にあるの?」
疑問符を頭の上に浮かべて尋ねるシリンに友雅はくすくすと笑って呟いた。
「存外、彼も臆病だね。いや、慎重と言うべきかな?」
シリンは友雅の言葉が判らない。
八葉の中でも最年長の彼の言葉は抽象的過ぎて難しい。
「『恋のいろは』って何なの?友雅様。そんなに難しい事?」
今までの彼なら判らない事は素直に聞けばすぐに教えてくれたからシリンは躊躇いもせずに尋ねた。
「そんなに難しい事じゃないよ、ただ体で覚える事と言うだけで」
尚も判らず、無邪気な視線を向けてくるシリンに笑みを深くした友雅は「こちらへおいで」と手招いた。
素直に友雅に近づいて座りなおすシリンの腕をグイっと引き寄せて、倒れそうに崩れた彼女の体を腕の中に閉じ込めて顔を寄せ、唇を重ねる。
「これが『い』だよ」
突然の事に呆然となってされるがままのシリンは、唇に一瞬だけ触れて離れた柔らかいものが友雅の唇だと気づくのに時間が掛かった。
「・・・じゃあ『ろ』って?」
シリンの友雅を見上げてくる視線には怯えが感じられない。
挑戦的ですらある、その強い視線に友雅は微笑んだ。
「『ろ』はこう」
そう言いながら、友雅は着物の上からシリンの膨らみかけている胸にやんわりと触れた。
「本当は直に触れるものだけどね」
友雅の言葉にシリンは「どうしてそうしないの?」と大胆に尋ねてくる。
「急いで進むと驚くかと思ってね。シリンが嫌でなければ、もちろんちゃんとしてあげるよ」
シリンは微笑む友雅の顔をじっと見詰めてから、そっと視線を外して呟いた。
「あたし・・・友雅様に教わるの、嫌じゃない」
「そうかい?では全て教えてあげるよ」
友雅はゆっくりとシリンの体を横たえた。
「直に触らないの?」
着物の上から触れてくるだけの友雅にシリンが尋ねる。
大きな手で揉み解される様に触られていると体がムズムズとしてくるから。
「着ている物が邪魔に感じられるまではね」
友雅は微笑んで答えるが、シリンの様子を見て更に笑った。
「邪魔になった来たかい?」
問われてシリンは一瞬考え込んだ後、頷いた。
「そう、では」
シリンの答えに友雅の手は着物の袷から中へと入り込んだ。
「あっ」
直に膨らんだ胸を摑まれて、シリンは思わず声を上げて体をビクンと跳ね上げらせる。
「どうしたんだい?」
微笑んで尋ねてくる友雅にシリンは「手が冷たいから驚いただけ」と強がるような返事を返す。
「そう?それは悪かったね。でも、我慢しておくれ」
友雅の手は袷を広げて肌を曝し、震える胸の尖端を摘み上げる。
「ん・・・んん」
瞼を硬く閉じて眉間に皺を寄せ、何かを堪える様に自分の指を咥えたシリンを見詰めながら、友雅は粟立つ肌の感触を楽しんでいた。
膨らんでいる胸を手で形を変えるように玩ばれて、シリンは腰が疼く様な感覚が生まれてくるのを感じていた。
じっとしていようと思うのに、腰や足が動いてしまう。
そんなシリンの様子を見ていた友雅は裾から彼女の下肢へと指を伸ばした。
「あん!」
今まで誰も触れた事のない場所を探られてシリンは驚いて声を上げる。
「・・・友雅様、これが『は』なの?」
声を上げた恥ずかしさを誤魔化す様に尋ねる。
「いいや、これもまだ『ろ』のうちだよ」
微かに潤い始めた花弁の淵をなぞる様に触れながら、友雅は彼女の反応を窺いながら指を進める。
シリンは自分も見た事がない場所を友雅の長い指で触れられながらその形を感じている。
「あっ・・・はん!やぁん・・・ゃあっ」
友雅の指は強弱をつけてシリンの体の中を探り、翻弄する。
シリンは息を乱しながら快楽の淵に追い遣られて行く。
「っああっ、んん・・・ああん」
シリンの体がビクビクと震えて軽く絶頂に達してしまう。
「気持ちよかったかい?シリン」
友雅に尋ねられてシリンは息を切らしながら頷く。
「気持ちよかったけど・・・ちょっと怖い」
「怖い?」
怪訝そうに尋ねる友雅にシリンは紅潮した頬を隠すように横を向いて呟いた。
「だって、どこかに飛んで行ってしまいそうだったんだもの」
その答えに友雅はクスクスと笑って
「これから先はもっと怖くなるかもしれないよ、続けられるのかい?」
聞かれたシリンは友雅を軽く睨みつける。
「平気よ!あたし、もう子供じゃないもの」
大きく広げられた襟元と裾を大きく割った、着乱れた姿で強気の視線を向けてくる少女を友雅は面白そうに見詰めた。
「頼もしいね、それでは君だけではなく、わたしも楽しませて貰えるのかな?」
「友雅様も?」
「そうだよ、恋とは二人でするものだからね。君だけが楽しんでいてはわたしが楽しくないよ」
友雅の言葉にシリンは少し考え込んで、彼の首に腕を回してしな垂れかかる様にして尋ねる。
「どうすれば友雅様も楽しくなれるの?」
友雅は内心で『おやおや』と驚きながら、おそらくはシリンが無意識の内にしたであろうこの仕種に微笑んでいた。
彼女の長い金色の髪を手で梳く様に撫でながら囁く。
「私がした事と同じ事をしてくれればいいんだが、無理にとは言わないよ」
挑発するような友雅の言葉に向う気の強いシリンはムッとして「無理じゃないよ」と叫んで彼の唇にそっと触れる。
「どう?」
赤い顔をして息を切らしながら友雅の様子を覗うシリンに「これくらいではね」と微笑むと、向きになったシリンは友雅の袷の間から手を差し入れて彼の体を探り出す。
友雅様がした事と同じ事、シリンは頭の中でそう呟きながら彼の体の上に自分の白い指を這わせる。
小さな細い指がたどたどしく自分の体を弄る様は健気ですらある。
友雅は込み上げて来る笑いを抑えきれずに口の端を上げてしまった。
「気持ちいい?友雅様」
ぴったりと体を併せながらシリンが覗ってくる。
「残念ながら、気持ちいい、と言う所までは行かないな。シリンの手が小さいからかもしれない。その口を使ってごらん」
自分が幾度か吸い付いて紅く腫れ上がった唇にそっと指を滑らせて友雅が促す。
シリンは眉間に皺を寄せながらも、言われた通り、唇で彼の体に触れていく。
首筋を肩を胸を腕を、時折彼がしたように軽く吸い付きながら。
「ああ、気持ちよくなってきたよ、シリン」
柔らかい唇が友雅を刺激する。
自分の体に流れ落ちる彼女の髪を掻き上げながら友雅が呟くとシリンは顔を上げて微笑んだ。
それは妖艶な雰囲気を漂わせて、友雅は宮中の公達を虜にした白拍子の片鱗を見る。
「シリンは覚えが早いね」
自分のものを彼女の愛らしい口で昂ぶらせて貰おうと思っていたが、それまで持ちそうにもない。
シリンの体を再び下に横たえて、友雅は彼女の足を大きく開き、自分の体を割り込ませる。
「『は』を教えてあげるよ」
そう言うと、一気にシリンを突き上げた。
「はぁぅ・・・」
シリンは大きく上体を仰け反らせて友雅の腕を強く掴んだが、悲鳴をあげる事はしなかった。
「痛むかい?」
優しく尋ねる友雅にシリンは「うん、でも平気」とにっこり微笑んだ。
「本当に君は教え甲斐のある子だよ、シリン」
友雅はそう囁いてゆっくりと動き始めた。
「ねぇ、友雅様。『は』の続きはあるの?」
シリンが無邪気に友雅の体の上に覆い被さりながら聞いてくる。
「さて、どうだったかな?『は』は色々と種類が豊富だからね」
わたしが知らないものもあるようだし、と漏らした友雅の言葉にシリンは驚く。
「友雅様でも知らない事はあるの?」
「もちろんだよ」
「ふうん」
頬杖をついて考え込んだシリンの髪を玩びながら友雅は囁いた。
「これからもわたしと一緒に学んでくれるとありがたいね、シリン。君は覚えのいい子だから」
「いいよ」
シリンはにこりと微笑んで友雅の体に自分の体を摺り寄せた。
友雅はまだ些か幼いシリンの体を感じながら、果たして自分はこの少女を虜にする事が出来たのか、はたまた逆に虜にされたのか判らないなと自嘲した。
それはこれから続いていくうちに明らかになる事だろうと、のんびり考えながらシリンの体を引き寄せた。
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