翌日にはまもりも本当にロケットベアをふっ切ろうとしているのか憂いも落ち込みも見せなくなっていた。
いつもと変わらぬ日々が続き、そしてまもりの誕生日当日を迎える。


「まもり姉ちゃん、誕生日おめでとう。」
「ま、ま、まもりさんっ。た、誕生日おめでとうございますっ!」
「これモン太と僕からの誕生日プレゼント。」


 部活が始まる前、まもりの前にやってきたセナとモン太がまもりの前に差し出して来たのは綺麗にラッピングされた包みだった。


「わぁ、ありがとうセナ、モン太君!」
「開けてみてよ、まもりねえちゃん。」
「セナと一緒にまもりさんの好きそうなの選んできたっス!」


 まもりの喜ぶ顔にデレデレのモン太と照れるセナはまもりに開封を促した。
促されるままに嬉しそうな顔でカサカサと包みを開けるまもりだったが、突然後ろから伸びてきた手がまもりの手の中の物を奪い去った。
 驚いたまもりが振り返ると、ヒル魔がまもりのプレゼントを高々く掲げている姿が目に入った。
しかしその目はまもりを見ておらず、まもりの前でやや怯えているセナとモン太に視線と銃口が向けられていた。


「糞チビ共、そんなに餌付けをしたいなら糞マネより可愛くて賢いヤツを紹介してやる。」


 ヒル魔がそう言ってにやりと笑ったその後、大きく息を吸い込むその姿にセナもモン太も更にすくみ上がった。



「「ケルベロスッ!!」」



 地を揺るがす程の雄叫びにピクンと反応したケルベロスの姿に、セナとモン太は慌てて逃げていく。


「よし、喰ってこい。」


 ヒル魔がビシッと指差した二人の背中を標的にしたケルベロスは猛スピードで追い掛け始めた。


「ちょ、ちょっと‥ヒル‥‥!」


 ヒル魔の行為に抗議の声を上げようとした時、ヒル魔がぱっと手を放したものだからセナ達からのプレゼントが上から落ちて来たので、まもりはその声を上げる前にプレゼントを両手で受け止めた。


「テメェもだ。部活後の予定を切り捨てたくなかったら部活を早く終わらせるように努力しやがれ。
 ま、テメェがそれでいいならオレもそれでもいいがナァ?」


 にやりと笑って言うヒル魔にまもりはハッとした。
忘れた訳ではなかったけれど、部活の片付けやらが長引けば学校を出るのが八時を過ぎる時もある。
 それから帰りにケーキを買ってヒル魔の家でご飯を食べてケーキを食べて‥とやっている間に10時などすぐに過ぎてしまう。
  当然明日も学校がある。あまり遅くなる訳にはいかない。
遅くなればなるだけ無事に自宅へ帰還することが出来なくなるからだ。
 そんなまもりの心中を察してか、ヒル魔の口が更に意地悪く釣り上がる。


「‥まぁ遅くなっても家でのんびりしていって下さって結構ですがネェ?」
「だ、大丈夫!テキパキ終わらせてちゃんと家にも帰りますから!」


 少し頬を赤めてまもりはセナ達から受け取った包みをロッカーにしまうと、すぐにマネージャーの仕事に取り掛かった。














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