目が覚めた。今日は女満別(めまんべつ)空港に向かうバスで美幌(びほろ)駅に向かうことになっている。バスはけっこう時間が遅く、10時ごろだ。しかも9年前と違い、宿のすぐそばがバスターミナルだ。ゆっくり起きて朝食に向かう。
朝食が済むとまずは宿の公衆電話で実家に電話しておく。3日ぶりの電話である。今回の旅行ではこの宿が唯一の宿で、あとは車中泊の予定なのだが、無事ぐっすり眠れてよかった。電話が済むと宿を出た。
バスターミナルに向かう。9年前と同じ殺風景なターミナルだ。まだ誰もいない。
そのうち係員がやってきたので美幌駅までチケットを買う。お客がやってきた。でも2〜3人だ。さすがに冬はこんなものだろう。ぼくみたいに雪祭りのついでに観光する人も少ないようだ。
バスがやってきた。9年前は6月で、やはり客は少なかった。しかも雨だった。今日は天気が良くていい。乗ってみると阿寒湖から来た客も数人しかいない。全部合わせても10人にもならず、そのまま出発だ。
まずは摩周湖だ。坂道をどんどんのぼっていく。9年前は霧で何も見えなかったが、今日はどうだろう。
摩周湖第一展望台に着いた。霧はない。まずは摩周湖を見てみよう。
うーん、湖面は凍っている。2月だもんなあ。まあいいながめではある。9年前の分までながめておこう。
じゃがいも売りもいないようだ。しばらくながめてバスに戻る。
9年前は6月だったのでここから摩周湖第三展望台に行ったのだが、冬はそこには寄らず、別ルートで川湯温泉に向かうようである。いったん釧網本線沿いまで戻って、釧網本線沿いに進むのである。川湯温泉でもほとんど客の入れ替わりはない。
次は硫黄山である。9年前はぼーっと噴煙の出ている山を見ていたが、今日は温泉卵を買っていこう。
山の斜面にいるおばさんから温泉卵を買ってバスに戻る。
次は砂湯である。屈斜路湖の湖岸である。バスを降りた。
9年前の6月は、なんのへんてつもない湖岸だったのだが、2月の今日はきのうのとうふつ湖と同じく白鳥の声が聞こえた。
なんでも屈斜路湖も2月は湖面が凍結しているのだが、湖岸に温泉がわいていて、わいているところだけ氷が溶けているとのことである。そしてそこをめざして白鳥がやってくるというわけである。
さてそろそろ発車時刻かな、と思いバスに戻ってみたが、まだ誰も客が来ている様子がない。
あれ?と思ってバスの時刻表を見ると、9年前はトイレ休憩くらいですぐ出発していた砂湯だが、今日は約1時間休憩で食事タイムなのである。しょうがない。食事だ。今日も定食を食べた。そしてまたしばらく白鳥をながめていた。
そして美幌峠に向けて出発である。途中9年前に寄った和琴半島(湖に突き出た半島)は素通りで、すぐに峠をのぼっていく。
美幌峠は9年前と同じである。雨だったあの時とは違い、屈斜路湖がよく見える。みやげもの屋があるが、まだ旅行は続くから買わなくてもいいだろう。
そして美幌駅に向かう。食事タイムの分だけ時間が遅くなっているが、美幌から乗る列車には余裕があり、問題はない。
猿とか見えると運転手さんが車を停めて見学タイムである。そしてまた進む。
硫黄山で買った温泉卵でも食べてみよう。なかなかいい味である。早く食べないと腐ってしまうから2個くらい食べて、それからあとは北見から乗るふるさと銀河線で食べることにしよう。
こんなふうにして無事美幌駅に到着した。女満別空港に行く客はなく、みんな降りてしまった。
ぼくは次に乗る列車までしばらく休むことにした。
弟子屈(てしかが)バスターミナルから乗ってきた女満別(めまんべつ)空港行きバスを美幌(びほろ)駅で降りた。9年ぶりの美幌駅である。
9年前と違うのは、あの時は食事がまだだったのでほっかほっか亭で弁当を買って食べたけど、今はもう砂湯で食事しているので食事が必要ないこと、9年前は網走に向かったが今は北見に向かうこと、そして9年前は6月だったが今は2月で雪ばかりだということである。だからぼーっとして札幌行きオホーツクを待った。
改札の時間が来て、ホームに入る。オホーツクがやってきたので自由席に乗る。9年前と同じくすいていて楽にすわれた。そして発車。
北見までは雪の積もった森に囲まれたいい景色だった。昼間の石北本線の景色もけっこういいものだ。そのうちなんとなく都会の景色になっていく。そして北見に着いた。
これから乗るふるさと銀河線の列車まではかなり時間があるので、北海道フリーきっぷを見せて改札の外に出た。とりあえず道を進んでみる。郵便局があった。はがきでも買っていこう。
それから裏道をうろうろすると、カギ屋があった。ん?カギ屋?そうだ!あれを直してもらおう!と思った。
それは9年前にウトロで買ったキーホルダーだった。木彫りの熊の手にキーホルダーがついたものだったが、キーホルダーの部分がこわれているのだ。ここで直してもらおう。
カギ屋に入り、キーホルダーを見せると、キーホルダー部分を交換しようという話になった。交換してもらってお金を払った。
ネジ式のものになったが、これでまた使える。会社のロッカーのカギでもつけることにしよう。そして駅に戻った。
もうすぐふるさと銀河線が出るので、きっぷを買うことにしたが、まず窓口に行くことにした。
北見駅で、ぼくは駅の窓口に向かった。窓口で駅員に言ってみた。「ちほく高原鉄道の安いきっぷはありませんか」「前は売っていたけど、今はないねえ」
ぼくは今日はちほく高原鉄道の置戸(おけと)駅に行って、とある本に載っていた「いなだ屋」というそば屋に行ってそばを食べ、さらに池田に行って夜行列車に乗ろうと考えているのである。
そして別の本には、ちほく高原鉄道の北見〜池田間の片道分の運賃で、乗り降り自由のきっぷがあると書いてあったのである。しかしこのきっぷは廃止されたようである。しかたがないので自動券売機で置戸まできっぷを買った。
改札が始まったのでホームに入り、階段をのぼっておりて置戸に向かう列車のホームに向かう。夕方なのでかなり池田行きは混雑していた。
そして発車。北見を離れるとたちまち都会を離れ、畑の広がる風景になった。日が暮れていく。あまりお客が降りないまま置戸に着いた。ぼくに続いて半分以上のお客が降りていく。
さていなだ屋はどこだろう。駅を出てどっちに曲がろうか。ぼくは右に曲がった。
ちょっと進むと、あったあった。いなだ屋だ。おとといは幌加内の松屋食堂でそばを食べたし、今日はいなだ屋で、本に載っている店をめぐるのはおもしろいな、と思った。
店に入ったが、まだ6時前なのでカウンターにはお客がいない。とりあえずすわって天ざるそばを注文した。そばが出てきて食べるともちろんうまい。
おなかがいっぱいになって店を出たが、次の最終の池田行きまではもうちょっと時間があるので、もう少し街を歩いてみよう。ぼくは駅前に戻り、さらに進んでみた。
お店があった。お菓子とか売っていそうな店である。何か買っていこう。
店にはいると「置戸の置っとっと」とか書いてある。何なのだろう。
「置っとっとって何ですか」
「置戸名産の日本酒のことですよ。」
残念ながら日本酒はあまり好きではないので、森永のおっとっとだけ買って駅に戻った。
池田まできっぷを買って改札を待ち、ホームに入って池田行きの列車に乗った。さっき乗った列車と違い、がらがらでまるでお客がいなかった。景色も見えないことだし、午前中に硫黄山で買った温泉たまごを食べて池田まで過ごした。
時刻表を見てみると、あれ?北見から池田まできっぷを買うよりも、北見〜置戸と置戸〜池田の和の方が運賃が安い!と気がついた。もし乗り降り自由のきっぷが売っていたら損するところだったなあと思った。
池田に着いた。運転手さんにきっぷを渡して乗車証明書をもらった。改札には北海道フリーきっぷを見せて出たので証明書が手元に残った。これから白糠(しらぬか)まで特急おおぞらに乗り、札幌行きの夜行おおぞらに乗り換える予定である。
ちょっと腹が痛くなってきた。温泉たまごの食べ過ぎかな。
ここの駅はトイレがけっこうピッカピカだ。あ、そうか。国鉄(JR)から第三セクターになるとお金がもらえるんだっけ、そのお金でトイレを作ったんだろうな、と納得した。
トイレに入ってひといきついた。