南宮崎駅前のローソンで食べ物と飲み物を買ってホームに戻る。
けっこう混雑している志布志(しぶし)行きのディーゼル車がやってきたが、座れないほどではない。
かなり繁盛しているようだ。発車し、さきほど宮崎空港に行く時に通過した田吉(たよし)駅に今度は停車する。そしてまた発車だ。海が全く見えないので、海岸線からはかなり遠い場所を走っているようだ。数十分過ぎたがあまりお客も減らず、かなり遠くまでのお客が日南線を使っていることがわかる。
時間的にかなり志布志に近づいたところでようやくお客が減り、海が見えてくる。やはり志布志は鹿児島県なので、鹿児島側、つまりバスでの行き来がおもなもので、宮崎とのつながりは薄いのかもしれないと思う。
志布志に着いた。どうやら無人駅のようだ。
駅には「ここで乗務員が眠っておりますので夜10時以降は大きな音をたてないでください」と書いてある。日南線の運転手さんは苦労しているなあ、と思う。
ここから都城行きのバスに乗る予定だが、駅前に停留所はない。
近くにある大きなショッピングセンターに寄ってみたがそこにもなく、ショッピングセンターと反対方向に行くとバスターミナルのようなものがあった。
そこには「この時刻のバスはここには停まりません」と書いてあり、停留所の案内があった。ちょっとした坂をのぼると停留所があり、先客もいたのでそこで待つ。
バスが来た。どうやらどこか近くにバスターミナルがあるらしく、お客を数人乗せてやってきた。とりあえず一番うしろの席に乗って発車だ。
志布志駅上の停留所からバスに乗った。今日は平日であり、今はお昼の12時過ぎであるはずなのに、学生っぽい人がいる。期末テストにはまだ早いはずなのにな、と思った。
バスはNHK第一のラジオを流していた。香田晋の「酒場のきんぎょ」が流れていたが、じきに国会中継になった。なにやらむずかしいことを議論しているようだった。
バスは平地から山の中の道になった。本当にここに国鉄志布志線が通っていたのだろうか?たぶんちょっと離れた場所を走っていたんじゃないかと思った。
そのうちバスは市街地に入り、西都城駅の駅前に来た。そこからまちなかを走り、終点都城駅だ。西都城駅よりも小さな駅のようだ。駅前にファミリーマートがある。
まずは予定通り急行えびのに乗れるなと思いながら、バスを降りた。
志布志から乗ってきたバスは無事都城駅に着いた。
ここから急行えびので肥薩線の大畑(おこば)まで行く予定だが、まだえびのまで時間があるので、ちょっと散歩してみた。すぐ散歩に飽きてしまったので駅に戻り、ファミリーマートで遅い昼食を買った。
ゾーン券でホームに入ってえびのを待つ。
やってきたディーゼル車はけっこう新しい列車だった。女子高生が降りてきた。あ、そうか、宮崎から都城までは快速列車だったっけ、と気がついた。
自由席に入るとお客が1人もいない。
つらい列車だなあ、と思った。さすがにこの季節に旅行する人もいないのかなあ、夏はいつ台風が来るかわからないし、九州を旅行するなら冬なのになあ、と思った。
まあ雪も降るけど。
えびのは発車し、弁当を食べて飲み物を飲んで、あとはぼ〜っとしながら過ごした。トンネルも少なく、山と山の間の谷間を過ぎていく。確かに高速道路を通しやすそうな地形だ。車掌さんにゾーン券を見せる。
お客が全く乗ってこないまま吉松に着いた。
吉松駅のホームには駅弁売りがいたが、さっきファミリーマートで買った弁当を食べたばかりなので見送ることにした。もしここに戻った時もまだこの駅弁売りがいたら買うことに決めた。
吉松までは吉都線だが、ここで向きを変えて肥薩線に入る。ここから先は1年数ヶ月ぶりに乗る路線だ。スイッチバックの真幸(まさき)駅や矢岳駅を過ぎ、高原のさわやかな景色と若干のトンネルを見て、急行えびのはいったん停車した後、バックして右手にお墓を見ながら大畑(おこば)駅に到着した。ここで降りる。
もちろん無人駅で、あたりは森しかなく、いちおう道路はあるようだが人家もない所である。
あたりを散歩するうちに階段を見つけ、見上げると神社があったので階段を昇ってみた。
おみくじがあったので引いたら末吉だった。
階段を降りた。スイッチバックの行き止まりを確認してみたいと思うのだが、そこまで道が通じていない。さすがに線路を通る気にもなれない。
あとは特におもしろいものもなく、駅に戻ってホームで列車を待った。
今度は宮崎行きのえびのに乗ってまた真幸を過ぎて、吉松に戻ってきた。ここでえびのを降りることにする。
吉松駅のホームには数時間前にいた駅弁売りがまだいた。都城のファミリーマートで買った弁当を食べてから時間がたっているのでここで駅弁を買うことにした。隼人行きのディーゼル車に乗り、ロングシートがあいていたので迷わず座る。
発車だ。
駅弁はボリュームのある肉が入っており、お値頃な弁当であった。なにしろ明日は早朝に指宿枕崎線に乗るので、西鹿児島に帰ってくる午前11時ごろまで何も食べられない見込みなのだ。ありがたくいただく。
どこに高校があるのかわからないが、高校生が乗ったり降りたりしており、活気がある。
肥薩線は八代〜人吉、人吉〜吉松は風光明媚な区間であり、それに比べると吉松〜隼人間はどことなく地味な雰囲気である。しかしお客の絶対数は、実は一番多い区間なのかもしれないなあ、と思う。
そうこうするうちにディーゼル車は隼人に着いた。
隼人(はやと)駅にやってきた西鹿児島行きのディーゼル車は、日が暮れてからの県庁所在地行きとあって、今まで乗っていた肥薩線よりもはるかにすいている。暗い景色を見ながら進んでいく。
そのうち1年数ヶ月ぶりの桜島が、ぼんやりとではあるが見えてきた。
もう吉松駅の駅弁を食べてしまったので今日はもう食事なしでいいだろう。海沿いを走ったディーゼル車は、鹿児島駅を過ぎるとトンネルに入り、ぬけると終点、西鹿児島駅である。
階段を昇ってゾーン券を見せて改札を出て、長〜いエスカレーターを降りて西鹿児島の駅前に出た。
公衆電話から予約しておいたかごしま第一ホテル西駅に電話すると、ホテルは左側らしい。
しばらく進むと見つかった。チェックインして部屋に行き、風呂に入る。今日は夜ふかしするわけにはいかない。
あしたはこの旅行一番の難関、指宿枕崎線に乗るのだ。朝5時ちょっと過ぎの列車に乗らないと、11時過ぎまで枕崎に行ける列車が全くないというつらい路線なのである。
そういう事情なので、あしたは早起きしなくちゃと思いつつ、眠りについた。