cold 07


こい請い乞い来い恋しい人よ
そしてそのまぶたを見開いておくれ
この私がお前のまなこにくっきりと映るように
こい請い乞い来い恋しい人よ




――――『Dream Seeker』・別館339…待合室

「………おはようさん、火村センセ?」
 肩を軽く揺さぶられて、火村はうっすらと瞼を開けた。突き刺すような日の光が、目に痛い。どうやら、無我夢中でアリスを朝井女史に任せて、待合室で眠ってしまったらしい。座ったままの状態で。
「……ッ、!!」
 ゆっくりとした覚醒の後、火村は叫ぼうと口を開いた。しかし、空気が喉を通り抜けるだけて、音にならない。
「大丈夫や、あの子、大した事あらへんかった。ただ、急に動いたもんやから、体がついていかんかったんやな…。軽い貧血と、少し酷い筋肉痛。…全くもう、火村センセが必死な形相で『頼む!!』なんて言いはるから、てっきり急患かと思ったわ」
 片目をつぶり、おどけて火村に言う。
 火村は、ぐ、と止めていた息を、ほう、と吐き出した。そしてそのまま、両目を閉じて力の入っていた肩をすとんと落とす。無理な体勢で寝ていた体が、昨日の疲労を回復できずに悲鳴をあちこちで上げていた。でもそんな事が気にならないほど、今、火村は安堵している。

 アリスは、生きている…―――――

 その事実が、いかほどに今の自分を支えているか……。
「よ、かった……」
「…………あの子、なんて言うん?」
 少し躊躇して、火村は言った。
「アリス、です」
「ふぅ〜ん………で?どうする??」
「え、?」
「………もう、起きてはるよ?会う…って、火村センセ!?」
 会う?と言い終わる前に、火村は既に走りだしていた。その後ろ姿をあきれ気味に眺め、小夜子はため息をつく。
「………あらぁ…私病室教えてないんやけど……」
 診察をした部屋と、今アリスなる青年がいる病室は当然違う。その部屋を教える前に走りだしてしまった火村は、おそらく途中でそれに気づいて帰ってくる…。
「ふふ、あんな必死な火村センセ、初めてみたわ。ちょっとからかったろ……」
 と、忍び足で物陰に隠れるのだった……――――




第七話 『夢追い人』

 ――――病棟B・263号室廊下にて

 朝井女史から教えられた病室の前に、火村はいた。
 ドアをノックしようとして、持ち上げた拳を、考えに囚われて止める。
 表札を見、何も書いていないそれを、苦笑をしながら指で弾く。
 本来なら、そこに名前が書かれている筈だ。アリス、と…―――。

 書かれていないのは、火村が朝井女史についさっきまでアリスの名を告げなかったからだ。  どうやって、この研究所に帰ってきたのかすら、記憶にない。

『頼む……助け…!!』

 必死に、そう叫んで朝井女史にすがったトコロまでは憶えている…。我ながら失態だと天井を仰いでしまう…おそらく後々根ほり葉ほり聞かれる事だろう。
 あの時は、本当に必死だったのだ。息も絶えるほど、アリスを腕に抱いて走った。通信機が使えるエリアに出て、自分が冷静に状況を朝井女史に伝えていたか、かなり曖昧だ。ただ朝井女史が以前有名な医師であった事を思い出し、彼女なら助けられるのだと妄信的な信じ込みも手伝って、まるで子供のように何度も同じ事を繰り返して言っていた気がする。…それでも、アリスがまだ目覚めたばかりだと言うことだけは、必死に伝えたような気も。それによって、アリスが倒れたのは急に動いた為だと朝井女史には分かったのだ。

『早く、助けて…!!』

 研究所のヘリが数分後に到着して、自分とアリスは別館のここに運ばれた。厳しい表情で朝井女史が自分に近づき、早口で質問される。朝井女史自身に聞くと、その時の自分は相当焦っていて、要領を得なかったそうだ。アリスが数名の助手によって運ばれ、自分の視界から消えると途端に壁に倒れ込んだような気がする。
『……酷く震えててねぇ、私は火村センセのがずっと心配やったよ?』
 と、言われた。
 自分の足で、歩けもしなかったと。
 抱えられるようにして応接室に座り、眠るよう諭されたのに、自分はがんとして首を振っていたと。
『せやから、まずセンセをどうにかせなと思うてね、悪いけど、催眠スプレーを使こうて眠ってもらったん』
 それでも、火村は横にはならなかった……朝まで。
『……でも、ホントによかった……大した事あらへんで。火村センセのがよっぽど怪我多いで?』

 ドアを叩こうとしていた拳を、そっと開く。手のひらでゆっくりとドアに触れると、ひんやりとして気持ちいい。こつん、と額をドアにくっつけて、ため息をつく。

 アリスは目覚めて、すぐにフェノミナ(?)を行使して、走ったり飛んだりの激しい運動をした。…あの時、自分はアリスが覚醒して間もないと言うことに気づいていた。なのに、何故動くのを制しなかったのかと、ふとする度に悔やんでいる。もしも止めていれば、最悪貧血で倒れる事はなかったかもしれないのに…。
(貧血……――――あれが?……本当に??)
 アリスが俺の名前を唇に乗せた途端に、アリスを包むように発生した突風。
 火村はその瞬間、恐怖すら内に秘めて倒れかけたアリスを抱き留めた。気を失った彼を包む風もやがて吹き消え、おそるおそるのぞき込むと、腕の中でアリスが静かに涙を流していた。
 それを目の当たりにして、自分は我を忘れてしまったのだ。

 アリスはあれを『宣誓』だと言っていた。
 聞こえなかったが、確かにアリスは何かを呟いていた。火村の名を呼び、何か誓いをたてたのだろうか。
「……………」
 でも、と思う。
 何度かゆっくりと瞬きをして。
 そう。それより、そんな事より。
 詮索など、後でいくらでもすればいいのだ。今は、彼が無事であることが重要なのだ。
 再び、手のひらをこぶしに変える。

 ―――――今度こそ。

「火村ぁぁ――♪」

 ばん!と内から開けられたドアに、火村が直撃した。



――――別館339・診察室


「あっははは………おっかしいわぁ〜!!」
 診察カルテを持ち、机に叩きつけながら、小夜子は今日何度目かの響き渡るような笑い声をあげていた。彼女の前には、額に大きな湿布を貼った火村。その横でおろおろとしているアリスの姿があった。
「朝井さん……もう、笑うの止めてください…いい加減に」
「だ、だって……あの、あの、火村センセが……あっはは!おで、おでこ……」
「あ、あの、こ、これ……痕残ってしまうんですか?」
 患者専用の白衣を身に纏ったアリスが、おろおろとしながら火村の様子を伺っている。猫の耳がさながら、しょぼくれてぺたんとしているように小夜子には見える。小動物を思わせる愛らしさに、小夜子はまた笑いを誘われてしまって、アリスの問いに答えられない。
「大丈夫だ、アリス。早く部屋に戻ってろって」
「で、でも……」
「いいから!」
 少し強めの言葉に、アリスはびくっとして肩をすくめた。
 その様子をみて、火村もすぐに眉をひそめる。強く言いすぎたと後悔しているのだろう。
「大丈夫や、アリス。本当に火村センセの怪我は大した事ないねん。ただ昨日の疲れが残ってて、そのままよろめいて、ち、ち、近くの…く、あはは…」
「朝井さん!!」
「あはははは、しばらく、笑うぐらいええやん、笑わせてな、センセ。だ、だって、」


 ―――あの、『黒の騎士』という『クラッカー』でもで別格のような存在が、内側から開かれたドアにぶつかり、そのままよろめいて壁でたんこぶを作るなんて!


 その扉を開けたのは、もちろんアリスだった。
「お、可笑しくて、たまらないねん」
 めじりに涙が溜まり、それを指でぬぐう。
 以前の、小夜子の火村に対するイメージは、『近寄りがたい』それのみであった。
 人とは異なる能力者……その中でも、またはるか上を行く存在。
 このプロジェクトに勧誘をしたときも、火村の印象は、決してよいものではなかった。ただ、お互いが利害が一致するから、利用出来るならしようと思い雇ったのだ。もう数年のつきあいになるが、火村の方もそう考えていたのではないだろうか。軽口を叩きあうようになっても、互いに互いを詮索するような事は無かったし、興味もなかった。2人は常に背中をあわせながら、それぞれに違う道を目指して歩いていたのだ。

 けれど昨夜、それが、変わったかも知れない。
 この、アリスという青年によって。
 
 あんなに取り乱した火村を、小夜子は一度だって見たことはない。おそらく天才であった為に、火村は他人の助けを乞うという事も今まで無かったのだろう。

 その彼が、プライドも体裁もなげうつ程に入れ込んだ存在、………アリス。
 火村に聞いたところによると、探索した現場の地下に眠っていた言うのだが……。

 正直、正体の分からない存在をこの施設の中に入れるのは躊躇っていたのだ。形式上ここの局長は自分で、あらゆる権限を与えられてはいるが、ここの研究費を出費してくれているオーナーには、なんの報告もしなかったのだ。了承も得ないままに強引に引き入れてしまった。
「………ほらほら、火村センセも怒ったらあかん。アリス怯えてるやんか」
「………、いや、怒るつもりじゃ…」
 ただ、気にするなと言いたかっただけなのだが。
「部屋に戻り、アリス。体にまた負担かけたら、倒れてしまうで?装置から出てすぐに動きまわるやなんて、無理にも程がある」
 その言葉に、アリスよりも火村が顔をしかめた。
 まだ、アリスが不思議な力を持っている事を報告していない。
 だから、アリスが急に動いたのは、トイから逃げる為に走ったと説明した。
「……………」
 しかしこの研究所に雇われている以上、いつか報告しなければならない。
 ……アリスをすぐに研究対象にするとは思えないが、火村は一抹の不安を抱いている為に言葉に出来なかった。一つ解決したと思ったが、それもつかの間のことで、再び問題が出てきた。嫌になって顔をしかめた火村を見て、アリスもつられて顔をしかめる。
「………火村。」
「……なんだ?」
「…………………………怒ってるん?」
「怒ってねぇよ」
「嘘、顔、怒ってるやんか」
「怒ってねぇって」
「嘘や!」
「嘘じゃねぇって!!」

(―――――――しまった!)

 つい怒鳴ってしまった。
 はっとして、両手で口を押さえる。
 慌てて顔あげてアリスを見る……泣きそうだ。
「わ、悪い、アリス。だから、怒ってないっ!!」
「嘘やぁぁ〜」
「嘘じゃないって」
 その光景を、こぼれ落ちそうな程両目を見開いて小夜子は見ていた。
 人間、ここまで変わるものなのか……。

「…………なんでもええから、部屋に戻ったらええやんか。2人とも」





――――病棟B・263号室にて

 病室のベットに入り、アリスは横の椅子に座った火村に、おそるおそる視線を何度も投げかける。
 火村もその視線に気づいてはいるが、口を開いたらまたアリスを泣かせるような気がして、あえて気づかないふりをしていた。
 朝井女史が渡された赤いりんごを手に取り、テーブルの引き出しから出したナイフで、おもむろに皮をむき出す。
「ひ、火村……」
「………なんだ?」
 りんごから視線を外して、片眉を器用にあげて、アリスに向き合う。
「また怒ってるのかとか聞いたら、俺は今度こそ本気で怒るぞ?」
「あ、すまん」
「………別に、謝ってほしい訳じゃない」
 はぁ、と深くため息をついて、火村は皮を剥く手を止めた。
「アリス………お前倒れる直前に、俺に自分を目覚めさせて後悔しているか、と聞いたな?」
「!?」
「…………もしかして、アリス。お前の方が俺と来た事後悔してるんじゃないのか」
「違う!!」
 間髪入れずの即答に、尋ねた火村の方が驚いた。
 アリスは可愛らしい顔を両手で覆って、肩を震わせている。
 その姿を見て、火村はまた舌うちしたい気分に駆られた。

 どうして俺はアリスを泣かせる様な事しかいえないんだろう…

 それは激しい後悔が絡んだ、痛みを伴うもどかしいという感情だった。
 笑顔が見たいのに。
「………後悔なんかしてない」
「そうか、俺には、そうは見えないが」
「ただ……分かるねん……」
「何が?」
「これから、火村は、俺を目覚めさせたから大変な目に遭う」
「……………どうして分かるんだ、そんなこと」
「………俺は、ずっと探してたんや。俺を呼んでくれる存在。泣きそうなくらい、一生懸命叫んで、声がかれそうなくらい永遠にも近い時間、ずっと探してたん……」
 ぽろ、と。指と指の間から、透明な雫が落ちて布団に小さな染みを作る。
「アリス……?」
「火村は、俺が怖くなるくらい大切に俺に触れてくれる……変な目で、俺をみん……」
 静かに、火村はアリスの言葉を待つ。
「……ピエロが言っておったやろ。俺は『破壊者』やて」
「あれは、脅しだろ?」
 あのピエロのトイが、アリスの事を語る時の口調を思い出すと、嫉妬が込められていたのだと分かる。アリスが、マスターに気に入られているから、忌々しげに。
「脅しなんかや、ないねん」
「何……?」
「火村、俺が使った技、見とったやろ?」
「ああ……」
「あれは、破壊プログラムなんや」
「破壊プログラム…?」

 こくん、と頷く。
「俺は、この世界の理が見えるねん。……せやから、相手の構成が全て分かる。見ようとすれば、今すぐでも」
 ひっく、と泣きじゃくる。換気の為に開けていたベットの右側の窓から、風が入り込む。薄いブルーのカーテンが、ひっきりなしにはためいてアリスの髪に触れる。乱暴に切られたざんばらな髪が風に揺れる様は、痛々しい。
「あとは、相手の構成の中に、『破壊の言葉』を書き込んで送り込めばええ。そうすれば、跡形もなく消え失せる……」
 震える声で語られた言葉に、火村は昨日見た現象を思い出した。
「…………じゃ、」
「見て……火村」
 右手で顔を覆ったままで、左手の人出し指を火村の持つ剥きかけのリンゴに向けた。空中に金色の文字が数個横に並び、それをアリスが無言で弾くと、火村の手を傷つける事なく、リンゴは跡形もなく消え失せた。

 ……おそらくミクロ単位に分解された……

「――――――っ」
 息を飲んだ火村に、アリスは左手を引っ込めて再び泣き始めた。
「…………すぐに、言うつもりやった。でも、俺……火村に呼んでもろうて、めっちゃ嬉しかって……」
 言いたくなかったのだ、と。
 言ってしまえば、きっとこの人は……。
 そう思って。
 泣き続けるアリスを呆然と見つめ、火村は無言だった。
 アリスの力は、恐らくフェノミナでないと思っていた…思ってはいたが、ここまで異質の力だとは思いも寄らなかった。
 『破壊者』などと言っていたピエロの言葉も、大して重く考えてはいなかった。
「………アリス、あの時…、」
「あのとき……?」
「エレベーターの時だ」
 涙を袖で拭い、アリスは顔を上げた。
「……あの時、何故俺の名前を聞きたがらなかった…?」
 火村の問いに、アリスはもどかしげに何度も首を振るだけだ。

「何故ミラーハウスから出て、改めて聞き直したりなんてしたんだ…?」
「わからへん………」
「わからない?」
「それが、たぶん代償だったんや……」
「代償??」
 視線を自分の両手に移し、アリスは体を震わせた。
「……俺は、何かの目的の為にずっと、あそこで眠っとった……。あの装置の中にいるとき、俺は何か、ずっと強く願ってたんや……」
「目覚めるのを…?」
 ぎゅ、と体を抱きしめて、アリスは言葉を続ける。
「違う…そんなんやない。…ううん、願っとったのは本当なんや、火村。でも、もっと違う。ずっとずっと、必死で誰かに訴えてた……」
 更にうつむいて、声を震わせるアリスが痛ましくて、火村は肩を抱き寄せた。自分まで、つられて泣きたい気分に駆られてしまう。それを必死にこらえて、先を促す。
「…もっと、もっと暗い感情やった……。でも、分からへんねん…。何か俺は目的を持ってた…目覚めたら、何かしなきゃいけない事があったんや!!」
「アリス、落ち着け…っ」
「俺の中の俺が、何か言ってる!!早う、早うて!!焦る気持ちばっかりで、どないしても思いだせんのや。何故俺があそこでずっと目覚めを待たなあかんかったのか!!なんでこんな気持ち悪い力持ってるんか!?」
「アリス…っ、アリス…」
 すがるアリスの指が、痛みを感じるほどに強く火村の体にくいこむ。それに、火村は顔をしかめた。自分の痛みに、ではなく、そうまでして泣き、怖がるアリスが痛ましかったのだ。
「怖い…怖いんや…。こんな力っ」

 でも、この力で、自分は何かをなそうとしていたのだと。

「火村に言った、『宣誓』が、俺にとってどないな意味を持つのか、分からないんや……いや、違う……忘れてしもうた!!」
「………なに?」
 問い返す火村の言葉をどう取ったのか、慌ててアリスが喋り出す。
「ホンマなんや、忘れてしもうた!!………あの時、俺はこうなる事を”分かって”た。目覚めた時の俺は、一種の神のような存在やった……っ。何をしたらどうなるて、もう”知って”た。あの時、俺はやるべき事を決めたのに…っ、迷うて…」
「……迷う?どういう事だ?」
「何を捨てて何を得るのか、全てちゃんと分かってた筈やのに、俺は……」
「落ち着けアリス、頼むから、俺に分かるように説明を……」
「……声が聞こえたんや…」
「声…?」
「そうや……汝の願いを遂行するか……。俺は、すぐにする、て……」

 その為に、ずっと目覚める事を望んでいたのだから…。

「する、て言うつもりやったん……、でも。」
 ぎゅう、とアリスは火村の胸に顔を埋めた。
「もしそうなったら、君と別れる事も分かってしまった…っ」
「あ、りす……っ?」
「離れたくなかったんや!!」
 震える声を必死に張り上げて、アリスは訴えた。
 火村と一緒にいたかったのだと。
「……あの時、自分がすると命を懸けて決めた事を、一瞬でも俺は躊躇った…。心が引き裂かれるかと思った…ッ!!――――…『宣誓』は、迷ってしもうたら、いかんものみたいやった…。でも、俺はぎりぎりまで迷うて……」
「その『宣誓』の為には、お前を目覚めさせた俺の名前が、必要だった…?」

 腕の中で、頷く気配。

「結局、俺は記憶と知識の殆どを、その時飛ばしてしもうた…。今残ってるのは欠片や」
「どうして、俺が狙われるなんて思ったんだ…?」
「思うたんやない。欠片の知識が、俺に訴えてる。『お前の力は、世界支配を望む者には絶好の駒』て。目覚めさせた者に、俺は従うらしいんや。火村が命を失わない限り、火村以外の人間に従ったりしない…せやから。みんな俺を手に入れようと、君の命を狙う…っ」
 カッ!!と、瞬間的に、火村は自分の中で怒りが燃え上がるのが自覚できた。
 震える手を持ち前の自制心で押さえ、アリスの話に耳をすます。
「それもあの時分かってた。だから、目覚めさせた君もすぐ危険が及ぶ…一緒にいたらあかん……でも。火村、俺にキスしてくれたから………っ。俺に、触れてくれたからッ」
「アリス……」
「いかん、いかんて。俺の理性が訴えてたのに!!火村の優しさ、失うのはいややったん…ッ!!」

 止まる事のない涙を。

「火村と一緒にいたいんやって、一瞬でも…強く、強く願ってしまった…!!そしたら、残ったんは……」
 アリスはすがり付いていた手を離し、自分の両手を憎しみすら込めて見つめていた。
「破壊の力と、中途半端な知識…そしてこの世界を憎む心………それだけや……ッ」
 ぎりぎり、と爪が食い込むほど両手を握りしめて、アリスは泣きながら呟いた。
「目的を持たない破壊の力ほど、危険なモノはない……。分かってた…分かってたんやッ。それがどれほど危険な事かも、愚かな事かも…ッ!!――――君を危険な目に遭わせる……許してもらえるなんて、俺は思うてへんよ……でも、でも火村、分かって…?」
――――世界が、いろんな人々が己の能力で危険にさらされると分かっていても。

「……それでも、俺は火村と一緒にいたかったん……っ」





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+Atogaki+
*こんにちわ、真皓です。トイ7をお届け致します!やっと火村センセとアリスの話に持っていける…ふぅ。前回の鮫山さんと森下くんは、数回後に登場。ふははは!まだフルメンバー出演をしていないのだ!!あとに三名出していないのだ!!………早く書かなきゃ書かなきゃ…っ。………それにしても、これは二桁いくのは確実ですね…。ああ、自分の馬鹿……もっと、こう、さっさと行けないのか!!!?

*しかし、るる姫に自分の小説を押しつけてしまった以上、この作品は絶対完成させなきゃ顔むけ出来ない…。それでなくてもネタがいっぱいあって、急がしい人なのに…。でも、るる姫が書いてくれるのを心待ちにしているのです♪どんなお話になるんだろう♪皆さんも楽しみに待ってましょうね!……それでは、失礼します。

*今回も、感想待ってます!掲示板か、メールにお願いします。
2000/7/13 定期の払い戻し…涙涙でありませう。がってんごう!  真皓拝

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