まもって守護月天!オリジナル小説

「万難地天の恋愛事情」

 

 

第三話 君だけしか見えない・・・・

 

 

市立鶴ヶ丘中学校

幸せそうに廊下を歩く女子生徒とその友人二人

花織「ラ〜ン、ララ〜ン。」

ゆかりん「花織、何かいい事あったの?」

熱美「うん、すごく幸せそうだけど・・・・」

花織「そりゃ〜やっと出番が・・・・じゃなくて、今日の占いで私すごく運がいいって書
いてたの。自分の意見をキッパリ言うといい事があるって。」

ゆかりん「ふ〜ん、花織って占いとかおまじないとかホント好きだよね。・・・・そう
だ、いいこと教えてあげる・・・・って・・・・聞いてる?」

などと言ってももはや花織の耳には届いていない。

花織「もしかして七梨先輩といい関係になれるかも・・・・」

熱美「・・・・ゆかりん、いつもの乙女チックモードに入ってるよ。」

ゆかりん「まったく、乙女チックモードに入るとまわりが見えなくなるんだから・・・
・。お〜い、花織、もどってこ〜い。」

ゆかりんの言葉で我に返る。

花織「何?ゆかりん、なんか言った?」

ゆかりん「花織、新しく転校して来た人って知ってるでしょ?」

花織「あっ、そういえば七梨先輩のクラスに来たっていってた。」

ゆかりん「そう、その人がね、占い得意でいつも放課後に店を出してるんだって。」

熱美「あっ、それって秀一先輩でしょ。すごくかっこいい人だったよ。」

ゆかりん「熱美ちゃん、知ってるの?」

熱美「うん、だって前に行ったことあるもん。気に入ってたペンケースがなくなっ
ちゃって、見つけて欲しいってお願いしたら。部屋の引きだしの奥に隠れてるって・・
・・」

花織「それで、ペンケースは見つかったの?」

熱美「うん、本当に引きだしの奥のほうに隠れてたの。探し物だけじゃなく恋愛運と
かもすごいって、実際に占いで恋人ができた人もたくさんいるみたいだよ。」

花織「すご〜い!私も占ってもらってこよ〜っと。」

言うが早いか、花織はすごいスピードで走っていってしまった。

熱美「ちょ、ちょっと花織、店は放課後から〜って、あ〜あ行っちゃった。」

ゆかりん「熱美ちゃん教室戻ってよう・・・・」

呆然としながら二人は教室に戻っていった。

 

 

 

 

廊下を歩きながら秀一は一人でそっとつぶやいた。

秀一「キリュウ・・・・何処にいるんだ・・・・」

秀一は学校に来てからキリュウを探したが、何処を探しても見つからなかった。

もちろん太助たちに居場所を聞いたが皆首を横に振るだせだった。

秀一が廊下の角を曲がろうとするといきなり少女の姿が目の前に現れた。

ドンッ!

花織「いった〜い!」

花織は瞳に涙を浮かべ廊下に倒れ込んだ。

秀一「いたたた、大丈夫?怪我はない?」

秀一は痛みに耐えながらも花織に手を差し伸べた。やはり出雲の親戚、女性への気配
りは忘れない。(笑)

花織「あ、大丈夫です。・・・・すいません、私ったら前見ないで走っちゃって・・・・」

秀一「いや、俺もちょっと人探しててちゃんと前見てなかったから・・・・」

花織「人探し・・・・あ〜!急がなきゃ〜。」

いきなり花織が大声を上げた。秀一も思わず驚く。

花織「すいません、霧島先輩を探さなきゃいけないのでこれで失礼します。」

そう言い残し、花織は風が如く去っていった。

秀一「・・・・それって俺のこと・・・・?」

キーン、コーン、カーン、コーン

授業のチャイムが鳴ったので、秀一は仕方がなく教室に戻った。

一方、1年3組の教室。

先生「おや、愛原さんは休みですか?」

ゆかりん「先生、花織は朝から具合が悪いって保健室に行きました。」

先生「そうですか・・・・わかりました。それでは、授業を始めます。」

ゆかりん「(まったく花織ったら、何やってるのよ〜)」

熱美「(はぁ、乙女チックもここまで来たら才能通り越して、特技だよ・・・・)」

友達辞めようかな・・・・と思う二人であった・・・・

 

 

 

 

キーン、コーン、カーン、コーン

チャイムが昼休みの始まりを告げる。

翔子「秀一、ちょっと。」

翔子が秀一を呼び止めた。

秀一「何?俺忙しいんだけど・・・・」

それはいつもシャオや太助の世話を焼く翔子にとっては愚問であり、翔子は秀一の忙
しい理由は手に取るように分かる。

翔子「キリュウのこと・・・・だろ。」

秀一「・・・・翔子には分かっちまったか・・・・」

真剣な表情で翔子は言葉を続けた。

翔子「話があるから、屋上に来て・・・・」

秀一「・・・・話?」

翔子「うん。」

秀一は翔子の様子が変なことに気付き、言われたとおり翔子の後ろについていった。

 

 

 

 

屋上

屋上についてしばらく時間が経ったが翔子は口を閉ざしたままだった。

秀一「・・・・とりあえず昼飯食おうぜ。」

翔子「ああ。」

互いに自分の持ってきたものを食べる。

秀一「お前、こんなもん毎日食ってんのか?」

翔子は焼きそばパンにスポーツドリンクだけの昼食だった。

秀一は翔子の昼食を奪い、自分の弁当を渡した。

翔子「な、何?」

秀一「お前こんなんばっか食ってると体壊すだろ。俺のと交換だ。」

翔子「これ、誰が・・・・」

秀一「俺に決まってんだろ。ちゃんと栄養考えて作ったから体にもいいんだぜ。」

翔子「お前ホントに何でもできるよな・・・・」

秀一「んなことどうでもいいだろ。とっとと食っちまおうぜ。」

秀一は焼きそばパンを食べ始めた。

秀一「そういや、お前話があったんだろ。」

秀一の一言で翔子はゆっくりと話し始めた。

翔子「・・・・キリュウのことどう思う。」

秀一「どうって、好きに決まってるだろ。」

翔子「そんなの分かってる。私が言いたいのは、キリュウを宿命から解き放ちたいと
思ってるかどうかだよ。」

秀一は少し時間を置いて決意するような声で口を開いた。

秀一「・・・・ある。人間と精霊の壁なんて俺が壊してやる。」

秀一はいつかの太助のようにキッパリと告げた。

翔子「そっか、秀一ならできるかもな・・・・」

嬉しそうな、悲しそうな複雑な表情を翔子は浮かべた。

秀一「どうかしたの・・・・か。」

秀一が心配して近寄ると翔子は秀一を抱きしめた。

秀一「な、しょ、翔子?」

翔子「私さ・・・・あんたのこと・・・・好き・・・・だった。」

涙を浮かべ潤んだ瞳で翔子は告げた。今まで、ただの幼馴染みで・・・・

男として見ていなかった・・・・

自分の気持ちに気付くのに5年もかかった・・・・

その好きな人がこれから難しい壁にぶつかる・・・・

その前に・・・・その前に自分の気持ちを伝えたかった・・・・

たとえ、断られるのが分かっていても・・・・

翔子「ふぅ、これですっきりした。みっともない姿見せちまったな・・・・」

涙を制服の袖で拭い、翔子は秀一の頬に軽くキスをした。

翔子「じゃあな、また明日。」

そう言うとニコッと微笑んで翔子は帰っていった。

秀一はもはや何も考えていなかった。むしろ考えることができなかった。

秀一「(な、翔子が俺のことを・・・・でも、俺はキリュウが・・・・)」

秀一が一人で悩んでいるとそこにすごいスピードで花織がやってきた。

花織は屋上にいるという情報を聞き1階から全力疾走でここまで走ってきたのだ。
(乙女チック・・・・恐るべし・・・・)

花織「霧島先ぱ〜い。占ってくださ〜い、って、あなたは今朝の・・・・えっ、それじゃ
あなたが霧島先輩?」

秀一「あ、ごめん、今はちょっと・・・・」

状況が状況だけあってさすがに占いなんてしている場合じゃない。

花織「・・・・霧島先輩、どうかしたんですか?なんか悩み事ですか?」

普通、初対面の人に自分の悩みを相談するなんてしないのだが、今の秀一にはとにか
く相談する相手が欲しかった・・・・

秀一「たった今さ、告白されたんだ・・・・」

花織「告白ですか・・・・?」

秀一「その娘はさ、ちょっとおせっかいだけど、しっかりしてて素敵な娘なんだ・・・
・」

花織「だったら良かったんじゃないですか?」

秀一「でも・・・・俺は、好きな娘がいるんだ。・・・・人付き合いが苦手で・・・・あまり感情
を表に出さないで・・・・それでもすごく優しくて・・・・」

花織「だったら、その人と付き合ったらいいんじゃないですか。」

秀一「でもね・・・・その娘は人間じゃないんだ。」

花織「(えっ、それって。)」

秀一「それでさ、どうすればいいか分からないんだ・・・・」

花織「・・・・キリュウさんですよね。霧島先輩の好きな人って。」

秀一「な、何で分かるんだい?」

花織は秀一の問いかけには答えずに自分の世界(乙女チックモード突入)に入り話し
始めた。

花織「・・・・私の好きな人ってシャオ先輩のことが好きなんです。いつも一生懸命、キ
リュウさんの試練を受けて。」

秀一「(太助のことか・・・・)」

花織「そんな、優しくて暖かい先輩が大好きなんです。」

秀一「でも、太助はシャオちゃんのこと・・・・ほかの人が入ることなんて・・・・」

「できない」と言いかけたとき花織はその声をかき消すように話した。

花織「あきらめたら・・・・そこで終わりですよ・・・・今は無理かもしれないけど・・・・でも
きっといつか叶うはずです。」

花織の言葉に秀一はハッとした。そして「人間と精霊の壁なんて俺が壊してやる。」
と言った自分の言葉に今まで以上に重みを感じた。

花織「恋をする人は、いつか必ず幸せになるんですよ・・・・その人が好きでたまらない
んだったら、それだけでいいんじゃないですか・・・・私はあなたが好きです。って、
堂々と胸を張って言えるって素敵じゃないですか。」

秀一「ありがとう・・・・おかげで目が覚めたよ。俺はキリュウが好き、ただそれだけで
いいんだ。今は無理でもいつかきっと・・・・」

花織「頑張ってください、霧島先輩。」

秀一「そういえば、君の名前まだ聞いてなかったな・・・・」

花織「花織、愛原花織です。」

名前を聞いて思い出した。以前、太助から聞いたすごく乙女チックな後輩の話を・・・・

秀一「(そっか、この娘が・・・・)ありがとう、花織ちゃん、今度お礼にただで占って
あげるから。」

そう言うと秀一は、走って行ってしまった。自分の好きな人のもとへ・・・・

花織「約束ですよ〜!」

秀一とキリュウがうまくいくといいな、などと思いながら花織は教室に戻って行った
・・・・と、そこにまた。幼い少女の姿があった。

フェイ「・・・・霧島秀一・・・・また一人、見据える必要のある人間が出てきたか・・・・」

 

 

 

 

あとがき

 

 

三話目ってことで書きました。う〜ん、秀一君、キリュウファンだけでなく翔子ファ
ンにも恨まれそう・・・・まあそれはいいとして(よくない)私的には全5話で 完結し
たいと思います。それでは、4話目でまた会いましょう!

 


ハルカの勝手コメント

 

 ちょ〜ささんから、「万難地天の恋愛事情」第三話を頂きました。

 なんと今回は翔子まで手込めに…じゃなかった。告白された秀一。

 …なんというか羨ましい通り越して既に崇拝の対象なんですが(オイオイ

 さて、冗談はともかくとして全五話とするなら既に半分以上が終わってしまいました。

 しかしまだまだ紀柳と秀一の間には大きな壁が立ちふさがります。

 ある意味守護月天の永遠のテーマとも言えるその壁を、どのように秀一が乗り越えるのか……楽しみですね(^^

 それでは、次回も楽しみにお待ちしております♪

 

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