キ「うー…………起きてる…起きてる…起きてる…起きてる…」
朝の6時。キリュウは洗面所で顔を洗っていた。半分夢の中の顔に冷水を浴びせ終わり、タオルで水気を取る。
キ「起きてる、起きてる――よし!」
パン、と両手で頬を叩き、自身に喝を入れ、意識をハッキリとさせる。
キ「今日も一日、がんばりまっしょい!!」
太「ふぃぁ〜〜〜〜――…おはよ」
半眼で降りてきた太助に、ルーアンとキリュウがそれぞれ挨拶する。
既に自分の椅子で新聞を読んでいるルーアンの横の席に座り、太助は改めてテーブルに並んだ料理を眺め、そして感嘆の声を上げた。
太「うぉ…こいつぁ」
キ「今日は精進料理に挑戦してみたのだ――身体に良さそうだったからな。味は…多分大丈夫だと思う」
ご飯、味噌汁は当然として、胡麻豆腐。ほうれん草のお浸し。里芋と蓮根の味噌煮。そしてふろふき大根……こ、これは――
太「チョベリグだぞキリュウ」
ル「古い言い回しね――…ま、でも上々よ」
ちょっと悔しげながらもルーアンの誉め言葉に、キリュウは少し恥かしげに「そう、か…――…ありがとう」と頭を下げた。
太助は手前の胡麻豆腐を一口つまんで口に放り込む。その瞬間、彼の神経に電流が走った。
太「こっ…コイツは――キリュウ! これは手作りか!?」
キ「ああ、以前作り方をテレビで見たので…」
味は無茶苦茶美味い――というワケでは無い。だが、乱雑だが愛情の篭っている『手作り』のこの豆腐は、市販の物など比べ物にならないくらい…美味く感じてしまう。
太「くっ…マジでキリュウの旦那になる奴が羨ましく思っちまった」
キ「だ…っ!? だだだっダン――○♪△※♯☆×!?」
太「おー混乱しとる混乱しとる」
ル「つまり、暗にキリュウを嫁さんにしたい、って事よね」
太「ああ」
キ「そぅ…!そんなアッサリ肯定を…」(←真っ赤)
太「俺はチャンスを逃さないタチだからな、一時の恥じらいで言いそびれるなんて間抜けな事しねぇ。――これから先、キリュウを好きになる奴がいるかもしれんからな、その前に俺がキープしとく」
嫌って言うほど原作とは対な性格である。
キ「き、ききききき…きぃぷ」(←赤面&混乱)
ル「仮に結婚したとして、アタシはどういう立場になるのかしら」
太「口やかましい姑(しゅうとめ)だな」(即答)
ル「そうなるとたー様のお母様って事になるけど」
太「はっ!?…それは嫌だな」
ル「どういう意味よ」
太「いや、いつものお前見てたら誰だって嫌に」
ル「失敬なぁぁっ!!」
ズシュゥッ!!と放たれたルーアンの熱線を太助はテーブルにあったスプーンの凹部で跳ね返す。軌道を変えられた熱線は、天上を貫き小さな穴を開ける。
太「ハッ!甘いな! 毎度毎度同じ攻撃を受ける太助様じゃねぇ!!――喰らえっ! 梅干ナパーム!!」
反撃とばかりに梅干の瓶を手に取り、中身の梅干を箸で投げ返す。
ル「照準が(何の)甘い!!」
その弾丸を箸で一つづつ掴み、全てを自身のご飯に乗っけて、再反撃に箸立てに手を取る。
太「な、何!?」
ル「くぅらえぇっ!! 多弾頭箸ミサイル!!」
箸立てをそのまま投げる。慣性の法則(?)に従い、そこより数組の箸が散らばり、太助の方に散らばる。だが、彼も負けじと自身の箸でそれらを切り払う。
キ「…きぃぷと言うと…主殿と…そのぉぅ…」(←周り見てません)
太「いっけぇ! 味噌汁焼夷弾!」(ざばーっ)
ル「ぐぁっ…何もぶっ掛ける事無いでしょ!? いいわ…そっちがそっちなら――こっちは核よ核!!」(ポットを持ち上げて)
キ「……とすると、私と主殿が、もしかしたらけ…けっけけけ結婚を――(汗)」(←思考回路暴走)
太「!? そっそれはお待ち下さい大佐殿! そんな事をすれば大国との和平はっ!(謎)」(←必死)
ル「問答無用! アトミック・ポットぉぉっ!!」(←ぱか、と蓋開けて、中身ぶちまけ)
ざばーっ(←90℃)
太「ぅ熱っちゃぁぁぁぁあっほぁたぁぁぁっ!!!」
熱湯を頭から被った太助は、えび反りで床に倒れこみ、時速60キロの速さでリビングとキッチンの間を転がり悶える。
キリュウも巻き添えを食って被ったが、体の熱で逆にお湯の方が湯気を上げて蒸発していた。
翔「で、遅刻か」
教室、後ろの席の太助に、翔子は呆れ声で言った。
太「…中学って遅刻で留年とか無いから良いよな」
つーか先生も遅刻だし。
1時間目は数学――(珍しく)普通の先生が講師をしている。
キ「しかも朝食を全て駄目にしてしまって……流石に昼までは持たないと思うが――特にルーアン姉」
味噌汁やらご飯すら宙を舞い、終いにはキレて鍋やら炊飯器まで飛んだのだ。
太「…そういや学校に来た時点で既にグロッキーだったなぁ。俺も少し空いてるし」
キ「私もだ」
その話し声が聞こえたらしく、黒板に数式を書いていた先生がこちらを咎め、三人は「おっと」と自分のノートに目を伏せた。
T「よぉ遅刻魔」
太「修行と言う形で長期欠席してた野郎に言われるとは心外だな」
正確に言うと、1ヶ月と4日くらい。
T「まぁそういう事言うな。良いモン見してやるから」
『良いモン』という言葉に太助の目の奥がキラリと輝く。
太「良いモンって何だ? 金目のモンか?」
翔「そういう短絡的な考えってのはどーかと思うぞ」
キ「うむ」(頷き)
太「ぐっ…いいじゃねぇか――で? TAKASI、その『良いモン』ってのは何だよ」
T「コレだっ!!」
と自慢げにこちらに翳したのは、金属らしき物質で出来た、八角形の『環』だった。――瞬間、全員の目が点になる。
T「カッコイイだろ。何か特殊アイテムっぽくない?」(笑顔)
翔「…なぁ、七梨…これって」
太「ああ、間違い無い――TAKASI…」
T「んー?」
太「やはり馬鹿stだなお前は」
T「最上級!?ってか何故に!?」
どうやらコイツ、マジで気が付いていないらしい。
キ「野村殿…コレは支天輪だぞ」
T「? “シテンリン”って何? 新たな必殺技か?」
太「…要は守護月天シャオリンの素だ(違)」
T「何ぃ!? コレがシャオリンの味の素か!?」
太「いや『味の』はいらねぇ」
キ「しかし、何故これを野村殿が?」
T「んとな――それは今から遡る事3時間――俺は『テツ&トモ』のテツ並の動きでジョギングをしてたんだ」
太「…無茶苦茶激しい動きだな」
T「――そして、ふと東京ゴミ処理場、別名『夢の島』の脇を通った時――俺のブレイブな眼差しに向け、キラリと輝くソレがあったんだ!!」
太「つまり拾得物かぃ」
翔「それ以前にゴミ拾ってくるかなぁ」
太「…『夢の島』――ちょっと待てよ…?(原作1巻を読んで)…もしかして1話で俺が捨てた奴か?」
キ「もしかしてで無く間違いなくアナタが捨てた物だろう。…恐らく、焼却時に燃え残ったのだろう」
超高温の炎に耐え切るとは、流石は精霊入りである。
太「しかし中身(?)は大丈夫なのか? 一応焼却炉を通ってるんだろ? 守護月天のミイラなんて嫌だぜ俺」
翔「生々しい事言うなよ…」
そのまま窓の外へ投げ捨てようと思ったが、やはり一応は確認してみなくてはなるまい――太助は還を覗いてみると、還の向こうに広がる窓の外の景色が広がっていた。
太「…………ありゃ? 向こうがすっごくクリヤーに見えるんですけど」
キ&翔&T「「「…まぁ当然だよな」」」
うんうん、と三人は頷く。…おぃおぃ、それじゃまるで――
太「まるで俺の心が汚いみたいじゃないか!!」
翔「自分で綺麗だと思う?」
太「ああ! 例えるなら珊瑚礁広がるハワイの海くらいにな!」
キ「黄河とかナイル川がぴったしだと思うぞ」
透明度ゼロかぃ。
太「ぐがぁーっ!!! だったらキリュ公、お前が覗けよぉっ!」
キ「き…キリュ公!?」
太助から支天輪を受け取り、キリュウは右目で還をそっと覗いてみた。
キ「……」
翔「…ど、どうよ?」
キ「…何も見えん」
太「ほら見ろ、キリュウだって何も見えないんじゃねぇか――…ん? 何も?」
瞬間、支天輪が輝き出し――突如還の中より女の子が(以下省略)
シャ「はじめまして御主…」
「
ぎゃぁぁぁぁっ!!!」「
出たぁぁぁぁっ!!」シャ「…えーっと」
「
こっ殺されるぅぅっ!」「
いやぁまだ死にたくない、死にたくないよぉぉっ!!」シャ「あのぉ…」
「
みんな、逃げるんだ!!」「
慌てるなっ!! 『おはし(おさない・はしらない・しゃべらない)』の心だっ!!」シャ「皆さぁん…」(涙目)
以前の諸々の事があってか、教室で談笑していた生徒達は物凄いスピードで避難し、シャオが見回した時には教室には――周囲10メートル以内には、誰もいなくなっていた。
入り口のドアを縦に、太助がちらりと中を覗く。
太「やっ、やっぱり出たな…」(小声)
翔「ああ…どうするんだよキリュウ」(小声)
キ「わ…っ私なのか!?」(小声)
翔「お前が召還したんだから、お前が主だろ」(サイレントボイス)
キ「…それは…そうなのだが」(汗)
最近出番が少ない事を嘆き、もうちょっと出張ろうと太助地達の教室へ足を運ばせた出雲だったが…
出「…何やってるんですか皆さん」
生徒全員が廊下に出て、窓から、ドアの隅から、恐怖と対峙するかのように教室内を警戒している。
生徒の一人の「あー出雲さんだ」と言う声に、全員が振り向く。
翔「何で神主姿」
出「商売服です」
購買のか。
出「それで…中に誰かいるんですか?」
そっとドアの窓を覗くと、おろおろと戸惑うシャオの姿が――
出「
出たか物の怪!! 今度こそ封じてくれようぞ!!」太「だぁぁぁっ!!これ以上話をややこしくすんなっ!! つーかその魔よけのロザリオとニンニクはどっから取り出したん!!?」
右手に十字架、左手にニンニクを構え突入しようとした出雲を太助は羽交い絞めにし、そのままバックドロップで沈黙させた。
太「はぁ…はぁ…このバ神主が」
ル「…この有り様は何よ」
再び「あ、先生ー」と言うと、再び全員がこちらを見下ろすルーアンの方を振り向く。
太「今度は貴様かぃっ!」
ル「へ?」
事のあらましを説明すると、ルーアンはふむ、と意外にも冷静な反応を見せた。
ル「…それは、現代のシャオリンね――皆が知ってる“シャオリン”は、22世紀のシャオリンな訳で、そこにいるのとは、まったく別人よ」
太「…しかし、されどシャオリンだろ?」
ル「そうね――…でも、あの様子だと、特に害は無さそうよ?」
室内を見ると、シャオは支天輪から離珠を呼び出して「1年くらい前は火炎地獄にあったし…この時代の人って冷たいよねぇ」と泣きじゃくっている――…あぅ、何か良心が…。
ル「ところで、誰が呼び出したの? 嬢ちゃん?」
翔「私じゃないよ」
太「何で最初に翔子かなぁ――まず俺だろ疑うのは」
ル「いやだって
呼び出せないでしょ(←事実)」太「……」
ル「で? 誰?」
キ「私だ」
ル「っ!?――…まぁ呼び出せそうだけど…ある意味史上初やないかしら」
ともあれ、害も無さそうだと判断し、ぞろぞろと全員は教室に戻る。
ノーマルシャオ(以下:Nシャ)「あ、皆さん…」(涙目)
太「よぅ、現代のシャオ」
Nシャ「?――あぁっ!? アナタは…ルーアンさんに、キリュウさん!?」
ル「お久し振りね、アンタとは」
キ「約2000年振りだな、アナタとは」
ルーアンとしては、普通なら『守護月天vs慶幸日天』という事で喧嘩売る所だが、『22世紀のシャオリン』がルーアンの反面教師になったらしく、そういう気はおきなかった。
Nシャ「何か引っ掛かる言葉のような…? それ以前にアナタ(太助の事)とは会った事が無いのに、どうして御名前を…」
太「あー、いや、それはだな」
口篭もる太助に、シャオは続ける。
Nシャ「所で、私の御主人様は」
キ「私」
Nシャ「っ! キリュウさん!? まぁっ…私嬉しいです! キリュウさんと一緒ですし、ルーアンさんとも争わなくていいんですし」
ル「へ? 何で?」
Nシャ「だって…ルーアンさんもキリュウさんに仕えているのでしょう?」
ル「違うわ、私は今の所(一応)たー様。この横にいるバカっ面の男」
太「誰がバカっ面かこの脳みその代わりに胸が必要以上に成長しやがった精霊が
あべしっ」熱線に米神を貫かれ、太助は昏倒――…その3秒後に復活したが。
シャ「大丈夫ですか?」
太「…ん? ああ、問題無い――…ハハ、どうも慣れないな」
そりゃ、まったく外見は同じ奴に斬り捨てられたり焼かれたり飛ばされたり殺されたり――されていたのだ。慣れないのも仕方が無いというもの。
太「…ん? ルーアン、さっき『今の所』って言ったよな――なんで?」
ル「だって、この時代に来る前は、22世紀のご主人の所にいたのよ」
太「あっ…」
――確かに、そうだ。
翔「そうだよな――ルーアンやキリュウだって、元は22世紀の精霊だもんな――…あれ、待てよ? ねぇルーアン、22世紀のシャオって昔からああだったのか?」
ル「うーん…そうだったと思うけど」
翔「なら、なんでこのシャオ姉は普通なんだ?」
――…………………………………………………………………………………
あれ?
Nシャ「ふぇ? 皆さん…どうしました?」
ル「誰っ!?」
瞬間、
バリバリバリバリィンッ!!と窓ガラスが砕け、ばっと黒い人影が表れた。太「――!? 何だ!?」
?「フッ…
何だかんだと聞かれたら――」T「貴様は守護月天シャオリ
ぐぎゃぉぁぅっ!?」決めセリフを折られた謎の少女――シャオの両肩から放たれたランドキャノンがTakasiを吹き飛ばした。
シャ「ウフフ…お久し振りね、皆さん」
――今度こそ、全員は逃げ出した。
那奈姉からのお土産のスカウターを装着した翔子が22世紀のシャオリンのステータスを確認する。
翔「凄い――シャオの奴、戦闘力が30万を越えて――…」
太「翔子…スカウターを外せ」
翔「え?」
太「アイツは闘いに応じて戦闘力を変化させるんだ――そんな数字はもう当てにはならん」
翔「いやそれ判ってるってば」
キ「…それで、さっきの話だが――翔子殿言う通り、どうして同じシャオ殿でこうも違うのだ?」
ル「それが、だけどね――…一つの仮説が成り立つわ」
太「? どんな仮説だ?」
ル「――…本来、私達…未来の者がこの世界に来る時点で矛盾が生まれるのよ。そして、矛盾がシャオに――もしかしたら、私達にさえ、変質をもたらした――それが、シャオの場合、大幅に変質した…」
太「……何か『壊』に似合わず真面目なハナシだな」
ル「ううん、単に『破壊魔定光』で読んだから
言ってみただけ」太「自慢気に言う事じゃ無ぇだろこの知ったかデコッパチ精霊めが」
ル「で、デコッパチ!? 昔はともかく今は随分髪下ろしてるわよ!?」(←でも4巻の時点では1本です)
シャ「……」
Nシャ「……」
二人「「………………………」」
睨み合う二人――片や無垢な瞳で、片や邪神な眼差しで…。
シャ「…これは――…」
――自分自身の姿を自分で見る幻覚の一種――これって確か…
シャ「
ドップラー効果!」太「
ちゃうわぁぁぁっ!!」魂の奥底で眠るツッコミ根性が、無意識に太助の身体を支配し、教室に飛び込み、突っ込む――
ちなみに、ドップラー効果とは救急車の音が通り過ぎると変わっちゃう現象である(ちょっと違)
太「シャオ、それは多分
『ドッペルゲンガー』」シャ「そうです、そのゲンガー」
『ドッ』しか合って無ぇよ。
太「つーかおめぇ、未来帰ったんじゃねぇのか」
シャ「はい…この事は私としても嬉しい誤算でした」
太「あぁ?」
シャ「22世紀に戻ろうとタイムマシンを起動はしたものの、ろくに1年もほったらかしでメンテもしてなかったせいで劇場版の如く空間移動機能がぶっ壊れて、私はどこぞの永遠世界に飛ばされてしまいました」
太「…劇場版って何だよ」
シャ「(無視)幸い、そこにいた前髪で目を隠した男から事情を聞き、元凶である幼女を叩きのめした所で、私は気付きました」
太「…永遠世界でその幼女ってまさか…(汗)」
シャ「――この身体は18号抜きでも完全体として再生していた……ただの完全体ではない。孫悟飯のように遥かにパワーアップしていたのだ」
太「18号って何だ!?孫悟飯って違うだろ!!?」
シャ「そして孫悟空の瞬間移動も私は習得出来た…――つまりより完璧になってここに帰って来る事が出来たのだ」
太「それは凄いが
だから孫悟空って誰だよ」Nシャ「あ、あのぉ…」
――っと、忘れていた。いくらポケポケでもやはり普通だとここでは存在感が消滅するんよね。
太「俺としては、こっちのノーマルシャオリンがいいんだが…」
シャ「…以前、言いませんでしたか?」
シャオの瞳がギラリと輝き、ゴゥ、とシャオを包む空気が震える。…はっ!?邪神光臨!?
シャ「
最強は一人で十分と!」Nシャ「ふ…ふぇぇぇっ!?」
言うや否や、Nシャオリンの手をガシッと引っ張って猛スピードで教室を出て行った。
瞬間、戦慄が太助の躯を駆け抜ける――瞬間、彼も廊下に飛び出す。「アイツらどっち行った!」
キ「あ、ああ――シャオ姉なら今シャオ姉を連れて女子トイレの方に…」
太「っし! 女子トイレだな!」
事情を知らない人が聞いたら理解不能なセリフである。だが、太助は即座にこの教室とは目と鼻の先の女子トイレに目を向けた――刹那、シャオ(多分Nシャオだろう)の悲鳴が聞こえ、
数秒気を失っていたらしい――太助は身を起こした。
太(骨良し、筋良し…俺は誰だ? 七梨太助――…ここは? 学校のトイレん前…――…身体に異常無し、任務を続行する)(一応気分を出す為)
辺りを覆う噴煙から口元を袖で防ぎ、太助は爆発元を目を凝らした。
後ろではウチのクラスの生徒達が倒れているが…爆心地に一番近い俺が大丈夫なんだし、多分大丈夫だろう(←自分が不死身だって事忘れてる)。
煙の向こうより足音が近付くのが判る。…誰だろうか、と問うのは愚問だ…――くそっ…俺は…俺のハーレム人生は一瞬にしてこの目の前の悪魔に踏み潰されたのか…。
太「…何なんださっきの叫び声と爆発は!?」
シャ「必殺技ですから!」
小型のノートPC片手のシャオは得意げに親指を立てる。
太「…じゃぁ何か、あのシャオはお前の手によって『封印(デリート)』されたってワケかよ…」
なるほど、女子トイレの個室なら四方が狭い壁だからな――…しかし、彼女もかなり可哀想だよなぁ…。
シャオのポケットには支天輪がある――四次元のモノではない、現代のモノだ。
シャ「…あとは、これを処分するだけですが…――宇宙空間に放り出したら、太陽のエネルギーを得てRXになりそうですね…」
いや、その確率は低いと思う。
シャ「ならば、二度と復活出来ない様に支天輪そのものを粉にするってのは」
太「その前に南極寿星が止めに入ると思う」
シャ「あはっ、それは無いですよ。その為に“封印した”んですから」
そういやさっきから支天輪の中からじーさんの声が聞こえてくるが――…はは、まさかな。
シャ「やはり、永遠世界に送りますか――…私が味わった苦しみ、そっくりそのまま返してやろうぞ」
太「そのシャオは関係無ぇだろ。しかも永遠世界ってお前――『永遠はあるよ』のガキをボコっただけじゃねぇか」
改めて考えると、今回のコイツ(シャオ)、ロクな事してねぇ。…まぁ良い事したってのも無いんだけど。
シャ「それじゃ、後は締めの『お花畑』イベントをこなすだけですね」
太「…そういや今回月天19話って事忘れてたが――…そのイベントだけはしっかりあるんだな」
――とりあえず、授業後…――
翔「信じて貰えないかもしれないけど、一応みんな授業受けたんだよ」
誰に言ってるのか判らない翔子を余所に、メンバーは七梨家に集まった。
庭のその光景に、太助は――いや、キリュウとルーアンでさえ、絶句した。
太「う…眩しい」
目に染みるのを堪えて目を開けると、シャオが太陽光を浴びる鏡をちらつかせていた――…なにしてんだ。
ル「…で、この花壇は?」
シャ「私と……――2時間後の私と4時間後の私と6時間後の私と8時間後の私で作りました」
太「星神使えよっ星神! と言うかタイムマシン壊れたんじゃ無かったのかぃ!!」
シャ「(無視)私がここに来て(設定上)1年だから――…迷惑とかいっぱいかけちゃったお詫びを…」
全員(うん…めっちゃね)
シャ「――それから、これからもよろしくお願いしますのご挨拶を込めて…」
全員(うわぁ〜〜〜これからもッスか(汗×涙))
シャ「で…それで――…とある電波を受信して知ったんですけど――太助様、そして皆さん、あのお花見てください」
太「………えーと…」
禍々しい、紅蓮の華…違いあるまい。
太「あれは…どう見ても妹切草だよな…」
シャオは首を縦に振る。
シャ「妹切草の花言葉って、『お前では俺には勝てん!』なんですって」(←事実)
太&ル「「それは“私・俺”達に対する当て付けかいっ!」」
…結局、俺はこういう運命を背負う事になるらしい。
これってある意味永遠へ旅立つより辛い気もする。…誰か俺をこの生活から救ってくれる女神様っていないものか――とうめきつつ――…七梨太助は今日も戦い続ける。
ハルカの勝手コメント
いやもうあれですよ、あれ。本当のこと言っていいですか?? っていうね。
もうね、なんていうかね、一言で言うと…………シャオいらねぇ!
これまでのこのシリーズの中で、今回のがダントツでNO1ですよ!特に前半!!!
紀柳さんの手料理っっ!!!!ああもうホントに想像しただけで涙が……っ
しかも豆腐ですよ? 豆腐! 紀柳さんのがその御手で作った豆腐!!!
もし口に入れられるなら、この命失うことすらも厭いません!! 太助君!キープなどと言わず今すぐ…(以下自主規制)
はぁはぁ……とにかくエキサイトしっぱなしの19話をお届けしました。
ここまで書かれてしまうと、更に次回を期待してしまいますね(オイ)
皆さん、是非是非レイさんに励ましのお便りを!