断点-3 1
(1)
昼飯なんか食べる気にならなくて、用意されたお弁当もかなり残してしまった。
中々進まない上に、途中で箸を置いてしまったオレを見て、和谷が不思議そうに言う。
「なんだ?進藤。具合でも悪いのか?」
「ん……」
悪いっちゃ、悪い。身体の具合よりも精神的なもんのほうが大きいんだろうけど。
「おまえがメシ残すなんて、風邪でもひいたか?」
「オレだって食欲ないときぐらいあるよ!」
ムッとして苛ついた声で返したら、
「ふーん、」
と、和谷は何か言いたそうな感じでじろっとオレを見た。
「ま、いいけどさ。何があったんだかは聞かねーけど、とりあえず午後はしっかりやってくれよ。」
「なんだよ、午後は、ってその言い方。午前中だってちゃんとやってたろ!」
「ちゃんと?あれが?」
人の言葉尻を捕らえたような和谷の言い方にオレはますます苛つく。
「朝からずっと誰かさんの方ばっかりちらちら気にして、気もそぞろだったじゃん。
でもってアイツの方はさっぱりだし。喧嘩でもした?」
……誰かさんって、やっぱ塔矢の事か?
自分じゃそんなつもりなかったけど、そんなにオレは塔矢の事を気にしてたのか?
そうかもしれない。だってあの時以来、塔矢に会うのは初めてだったんだから。
和谷って結構鋭いんだ。ちょっとびびった。
「まあ、そんなとこかな……」
たいした事じゃないってふうにオレは言った。
喧嘩、なんかならまだよかったんだ。
「全く、おまえと塔矢って仲がいいんだか悪いんだかわかんね―よな。」
そう言って和谷はお弁当を片付けて、先行くよ、と言って部屋を出て行った。
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