断点-3 16 - 17


(16)
いつも、おまえの存在がオレを奮い立たせる。
いつだっておまえなんだ。おまえじゃなきゃ駄目なんだ。

北斗杯の時だって、中国に負けて、高永夏にも負けて、自分の駄目さ加減に落ち込んで、立ち上
がれなかったオレを動かしたのは塔矢の言葉だった。
「これで終わりじゃない。終わりなどない。」
そしてその時だけじゃなく、それからもずっと、気付かないうちに、その言葉を頭の中で繰り返して
いた。自分の無力さを思い出してしまって動けなくなってしまった時も、遥かな高みのその高さに
挫けそうになる時も、もう駄目なのかと思ったときも、気付いたときには塔矢の言葉をオレは繰り
返していた。
「オレの打つ碁がオレの全てだ」「これで終わりじゃない」「終わりなどない」
今はまだ力が足りなくても、それが今のオレだ。どうにもならない事実だ。でも明日のオレは今日
のままのオレじゃない。これで終わりなんかじゃない。今日勝てなかった相手にも、明日は勝てる
かもしれない。

塔矢の言葉がオレの支えだった。
こんなにも自分が塔矢に頼り切ってしまってたなんて、気付いてなかった。
駄目だ。
オレは塔矢を失えない。
塔矢を忘れるなんて、この気持ちを捨てるなんて、できない。


それなのに、塔矢にはオレは要らないんだ。
オレには塔矢が必要なのに。一番大切なのに。


(17)
「塔矢……」

ああ、ダメだ。
泣くもんかって、ずっと思ってたのに。
オレはもう泣いてしまってる。

バカか、オレは。
こんな部屋に、一人ぼっちで取り残されて、オレを置いて出て行った奴の名前を呼びながら泣いてる
なんて。
三流メロドラマじゃあるまいし。
本当に、バカみたいだ。
それなのに。

涙が止まらないんだ。
どうしたらいいのかわからないんだ。
どうしたらいいんだ。
オレはどうしたらいいんだ。
なあ、
教えてくれよ、
塔矢。



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