先生、あのね 1 - 2
(1)
「すごいですね、さすが先生だ。どんどん飲み込んでいきますよ」
越智はわざとらしい敬語で嘲笑するように言った。
アキラはそれを憎しみと怒りの目で睨む。本当なら今すぐにでもこの場から逃げ出したかった。しかし手
足を縛られて口を塞がられている以上、抵抗らしい抵抗などできなかった。
越智は楽しそうに碁石をアキラのアナルへ詰め込む。
「先生、苦しいんですか? まだこれからなのに」
不敵な笑みを浮かべながら、越智は碁盤に散らばる黒石だけを選び取ってアキラへ詰め込んだ。それは先
程の対局で使用したものだった。アキラが白で行われた指導碁で越智は勝ったのだった。勝った越智はア
キラを奴隷のように縛り上げ、自分の強さを見せつけるように、勝った分だけの石をアキラに詰め込んで
いた。
ゆっくりゆっくりと数が増えていく碁石を出さぬよう、アキラは耐えた。もし途中で出せば、また始めか
らやり直される。だが、アキラが抵抗しないのは他にも理由があった。
(2)
「これからは先生と呼んでもらおうか」
ことの始まりはその言葉だった。
それに反発した越智は、次第にアキラの本当の目的を見抜いた。
そしてアキラはヒカルに執着したばかりに越智に脅されてしまった。
「進藤が好きなんですか? 男同士なのに? 気色悪い。それを知ったら、進藤はどんな反応をするんで
しょうかね」
越智は嫌味ったらしく言った。
初めはそれを無視していたアキラだったが、越智の巧妙な脅しに不安は次第に増加していった。
「何が目的だ?」
アキラは交換条件という形で越智の希望を叶えることにした。だがそれこそ間違いだった。
「それは進藤が好きだということを認めたも同然の発言ですよ。ハハハッ、これは面白いことになりまし
たね」
越智はそっとズボンの後ろポケットからICレコーダーを出した。
「ボクはただ進藤よりもボクの方が強いってことを認めてもらいたかっただけなのですが、予定変更です。
ボクの奴隷になっていただきましょう」
アキラを舐めるように見つめながら越智は言った。
「ふざけるな。ボクがそんなもので言うことを聞くと思うのか」
「ボクは本気ですよ。もし聞けないって言うのなら、仕方ありませんね。これをばらまいて先生どころか
進藤も地獄に落としてやりましょうか」
進藤という名前を聞いた途端、アキラは黙って俯くしかなかった。
「よかった、持ち歩いてて。こんなに活躍するとは思いませんでしたよ」
越智は高笑いした。
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