ストイック 10
(10)
芦原さんの手が僕のズボンのファスナーにかかった。
やめてと言おうにも、僕の口は芦原さんに捕らえられたままだ。
芦原さんの身体を押しのけようと彼の胸に両手をついたが、思うように力が入らなかった。
それは、眩暈のせいではなかった。
僕の身体は、芦原さんのキスに反応していたのだ。
拒否しようとする心と疼きはじめた快楽とが、身体の中でせめぎあっていた。
ズボンの中に差し入れられた芦原さんの手が、僕のものを愛撫しはじめた。少しずつ固くなってゆくのを確認するように、ゆっくりと、優しく…
僕の先端が濡れはじめて、ようやく芦原さんは僕の唇を解放した。
うっすらと目をあけると、せつなげな芦原さんの目が僕を見下ろしていた。
「アキラ…」
芦原さんはもう一度僕にキスをすると、僕のズボンをおろし、あらわになったそこに顔をうずめた。
先端にキスをされた瞬間、僕の身体がわなないた。
芦原さんは僕をくわえたまま手を僕の腰にまわし、指先で溝をたどりはじめた。
「い、や…」
僕の穴をほぐすように擦る芦原さんのしっとりとした指先に慄きながらも、僕は芦原さんを振りほどくことができなかった。
すでに到達しかけていたのに、指で穴をさぐられると、とまどいのせいか、到達することができなくなってしまったのだ。
もどかしさが、僕の身体を苛んだ。
「芦原さ、ん…や、め……」
抗いの言葉に、喘ぎがまじる。
芦原さんの指が、少しずつ僕の中に入ってきた。少し侵入しては探るように僕の内側を撫ぜ、また少し深いところへ、と。
ねっとりとした快楽が僕の身体をうねるように巡り、皮膚までが異様に敏感になっていた。
乱れた衣服が肌に触れるのさえ、僕を翻弄した。
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