断点-3 10 - 11


(10)
引き止めようと咄嗟に手首を掴んだヒカルの手を、アキラは物凄い勢いで振り払った。
弾みでよろけたヒカルの裸足の足が絨毯の上で滑り、ヒカルはそのままバランスを崩して尻餅をついた。
「あ……」
アキラは自分の手首を押さえたまま、自分のしてしまった事にびっくりしたように無防備に目を見開いて、
すまなそうにヒカルを見下ろした。だが次の瞬間、元の表情に戻ってヒカルから目を逸らし、またドアに
向かおうとした。
「待てよ、塔矢ッ!!」
ヒカルは跳ね起きてアキラの前に回りこみ、ドアの前に立ちはだかる。
行く手を阻まれたアキラは眉を跳ね上げてヒカルを睨みつける。
「いい加減にしろ。ボクに構うな。つきまとうな。一体何様のつもりだ。」
「……何様のつもりって、そっくりおまえに返してやるよ。おまえこそ、何様のつもりだよ。
何考えてんだよ、一体。」
「キミはボクを好きだという。だから何だ。それがどうした。それでキミはどうしたいって言うんだ。
そんなもの、迷惑なだけだ。」
吐き捨てるように言ったアキラはヒカルから顔を背け、拳を握り締める。
「ボクに必要なのは碁だ。それだけだ。それだけで十分だ。それだけがボクの全てだ。
それ以外は要らない。何も要らない。必要ない。」


(11)
―――要らない。
その言葉を聞いてオレはフリーズしてしまった。
最初に塔矢にヤられた時にも言われた言葉だ。
「後悔してるよ。キミなんかに関わってしまった事を。キミに出会ってしまった事を。
キミさえ、キミさえいなけりゃボクは……」
向き直ってオレを見ている塔矢の顔が今までとは違った風に歪んでる気がした。声が震えてる気がした。
今だ。今、塔矢を掴まえなければ。
頭の中で何かが必死にそう叫んでいるのに、オレは動く事ができずにバカみたいに突っ立ったままで、
そのオレの横を塔矢は通り過ぎた。ギィーッと軋んだ音をたててドアが閉まった。



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