夢の魚 12
(12)
「死ぬまで泳ぎつづけるんだ?」
僕がそう尋ねると、進藤は小さく「うん」と返してくれた。
「でも、マグロにとってそれが当たり前なんだ」
「うん」
「泳ぐことが……呼吸することなんだ」
「うん」
「泳ぐことが、生きることなんだ」
「うん」
「僕たちも?」
打つことが生きること――――――。
僕は言葉で確認する代わりに、隣に座る進藤を凝視した。
僕の視線に気づいたのか、進藤も再びこちらに顔を向ける。
僕たちは、お互いの瞳を覗き込んだ。
そこにどんな感情があるのかと、視線を結ぶ。
薄暗い海を、ひとりで泳ぐのは、どんなに寂しいことだろう。
でも、僕たちが、立ち止まることはないのだ。
まず始めに君を追ったのは、僕だ。
次に僕を追ったのは、進藤、君だ。
そしていま、僕たちは共に追っている。
――――神の一手という途方もない極みを求めて。
「君の哲学なんだね」
「哲学…なんて難しいことはわかんねーけど」
僕たちはそんなことを囁き交わしながら、マグロのブースを後にした。
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