ストイック 12


(12)
それからというもの、芦原さんは毎日のように僕を求めてきた。
まるで箍が外れたように。
芦原さんの部屋ですることもあったし、僕の部屋ですることもあった。
芦原さんは日に日に大胆になっていったけれど、僕の部屋でするときはいつも、他に誰もいないことがわかっていても、遠慮がちだった。
そんな芦原さんを、僕はかわいいとさえ思っていた。
関係が深まるにつれ、僕はうちと外の使い分けが上手になっていったように思う。
慣れた、のかもしれない。
襟をきっちりとしめ、手合いにのぞむ自分を嘘っぽく感じていたのも最初だけで、少しすると、まったく以前と変わらぬふうに立ち振る舞うことができたし、いつの頃からか、そんな自分を冷静に見下ろしているもうひとりの自分を感じてもいた。
快楽に溺れる自分、背筋を伸ばして他者と相対している自分、そしてそんな自分を自嘲まじりに見ている自分…
ばらばらになった、それぞれの自分。
それらを感じながら、漠然と、大人になるというのそういうことなんだろうと思っていた…
そんな状態がとても危ういものであることを自覚したのはずっと後のことで、僕は自分が思っていたほど周りが見えてはいなかったし、自分が考えていたほど大人でもなかった。
さざ波さえ立てない感情を冷静であるとはき違え、感情が鈍化していたなんて少しも思わなかった。
このころほとんど進藤を会う機会がなかったのは、ある意味幸せだったのかもしれない。

彼は唯一、僕の心を乱す存在だったから…



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