ストイック 13


(13)
次に彼と会ったのは、病院でだった。
会ったというより、すれ違ったと言ったほうが正しかった。
病院の廊下で、緒方さんが進藤に詰め寄っていた。
進藤は緒方さんを振り払って、走り去った。
緒方さんは進藤がsaiと知り合いだと疑っていた様子だった。
僕と一緒に父の病室に入っても、緒方さんはその話題を父に振った。
父は知らぬと言い、僕は父がそう言うならそうなのでしょう、ということを言ったように思う。
そのときの僕は、彼の話題を早く打ち切りたいだけだった。
それでも緒方さんは納得がいかない様子で、何かと彼の名前を出した。
僕が責められているわけでもないのに、いたたまれなくなって、病室を出た。
階段を降りる途中で、芦原さんに会った。
「アキラ、来てたの…」
芦原さんが言い終える前に、僕は倒れるように芦原さんの胸に身体を預けた。
「ア、アキラ…?」
「…どこか、連れてって」
僕はそう言っていた。
何処でもいい。此処ではない場所を、僕は求めていた。
父の見舞いに来たのだろうに、それでも何も言わないで、芦原さんは僕と一緒に階段を降りてくれた。

その一部始終を緒方さんに見られていたなんて、僕は思いもしなかったのだ。



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