断点-3 14
(14)
――― 好きだよ、進藤。
突然、アキラの甘い――嘘が、ヒカルの耳によみがえってきた。
信じたりなんかしてねぇ。
あんなの、最初っからウソだってわかってた。そんな筈ないってわかってた。
それでも――ウソでも何でもよかった。
こんな風に放り出されるくらいなら、バカにされるんでも、無理矢理ヤられるんでも、痛くっても怖くっても、
まだそっちのほうがマシだ。こんなとこに一人で放っとかれる事に比べたら。
「クソッ!」
身体をうつ伏せに反転させて拳を振り下ろすが、柔らかいマットレスはその衝撃を吸収してしまう。
「畜生ッ!!」
もう一度、拳を振り下ろす。
それでも、頭の中ではアキラの言葉がぐるぐると回って耳を離れない。
…好きだよ、進藤…好きだよ、進藤…好きだよ…好きだよ…好きだよ……
「やめろッ!」
耳に残る声を打ち消すようにヒカルは叫ぶ。
「やめろ、やめろ、やめろ…」
あれはウソだ。オレをバカにするためだけの、ウソだ。そんな言葉に未練がましくしがみ付くな。
どうせなら、もっと酷い言葉を思い出せばいいんだ。そんな事言うはずないとか、殺してやりたいくらい憎い
とか、触るなとか、つきまとうなとか。
「やめろッ!塔矢!!」
…好きだよ、進藤…
「塔矢……なんで、なんでそんなにオレが嫌いなんだよ。」
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