断点-3 16


(16)
いつも、おまえの存在がオレを奮い立たせる。
いつだっておまえなんだ。おまえじゃなきゃ駄目なんだ。

北斗杯の時だって、中国に負けて、高永夏にも負けて、自分の駄目さ加減に落ち込んで、立ち上
がれなかったオレを動かしたのは塔矢の言葉だった。
「これで終わりじゃない。終わりなどない。」
そしてその時だけじゃなく、それからもずっと、気付かないうちに、その言葉を頭の中で繰り返して
いた。自分の無力さを思い出してしまって動けなくなってしまった時も、遥かな高みのその高さに
挫けそうになる時も、もう駄目なのかと思ったときも、気付いたときには塔矢の言葉をオレは繰り
返していた。
「オレの打つ碁がオレの全てだ」「これで終わりじゃない」「終わりなどない」
今はまだ力が足りなくても、それが今のオレだ。どうにもならない事実だ。でも明日のオレは今日
のままのオレじゃない。これで終わりなんかじゃない。今日勝てなかった相手にも、明日は勝てる
かもしれない。

塔矢の言葉がオレの支えだった。
こんなにも自分が塔矢に頼り切ってしまってたなんて、気付いてなかった。
駄目だ。
オレは塔矢を失えない。
塔矢を忘れるなんて、この気持ちを捨てるなんて、できない。


それなのに、塔矢にはオレは要らないんだ。
オレには塔矢が必要なのに。一番大切なのに。



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