ストイック 17
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彼の拒絶が僕の中に残したものは…
それは、理不尽な怒りだった。
怒りの中で、僕は情けないほど、彼がそうした理由をさぐっていた。
いったい、なぜ?
あれほどまでにひたむきだった彼を、あの真っ直ぐに前だけ見ていた彼を変えさせたものはいったい何なんだ…?
父の引退だろうか、と最初に思った。
彼がひたすら追っていたのは、父の存在だったのだろうか?
そうだ、彼は父の見舞いにも来ていた。そんなに近しい間柄でもないのに…
自分自身、父を追っているうちのひとりだった。それでも、父の引退は、僕に目標を失わせるものではなかった。
それは親子だったからこそかもしれない。そうでない進藤にしてみれば、道標を失ったに等しいのかもしれない…
違うかもしれないと思いながらも、その時期に照らし合わせると、それ以外に思いつかなかった。
僕の背中を、今までになかった感情が駆け抜けた。
それは、嫉妬、だった…
僕は父にさえ、嫉妬していた。
消えてしまえ!
僕は、僕の心を揺さぶる存在に、胸中で叫んだ。
去るというのなら、僕の前から影も残さず、去ってしまえ。
「ボクは、お前になんか、負けやしない…」
ひとり閉じこもった部屋の中で、僕はうずくまり、唇をかみしめ…
流れる涙を、寂しさのせいではないと、自分に言い聞かせていた。
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