夏の終わり 17 - 18


(17)
―――――ぅん…………

無理矢理、進藤の舌が僕の唇を割った。
僕はそれを喜んで迎え入れた。
玩具をなくして淋しがっていた手は、恋人の明るい色の髪に忍び込む。
梳るように指を動かし、愛しいと思う。
思った途端、僕は泣きたくなった。
僕がここにいることを確かめるように滑り降りていく、進藤の手が愛しいと思った。
そう思ったら、もう我慢ができなかった。
なぜ、自分以外の人間をこうまで愛しく思えるのだろう。
消えない熱を残して、進藤の唇が僕の肌の上を滑っていく。その感覚は僕にとって懐かしくも思えれば、まったく始めて知る感覚のようにも思えた。
欠片ほどの罪悪感も、いまの僕にはなかった。あるのは愛しさだけだ。
それをどう伝えれば、進藤にわかってもらえるだろう。
「ヒカル……」
譫言のように恋人の名前を呼ぶ。
繰り返せば繰り返すほど、胸に溢れてくる、泣きたいほどの愛しさ。
それだけで酔ってしまいそうだった。

気がつけば、軽く足を開いていた。その間に進藤の身体があった。
胸に落とされるキスは濡れた音を聞かせる。
進藤の舌が胸の突起を転がすように動いた時、僕の身体の奥に甘い痺れが走った。

―――――あ、………

僕の声の変化に気づいた進藤は、唇で執拗にそこを弄んだ。
軽く甘噛みされたとき、自分でも恥かしくなるような声をあげていた。
「アキラ、可愛い……」
嬉しそうにそう言うと、進藤は僕の唇に音のするキスをくれた。
「僕は、…自分が、こんなにいやらしい人間だとは……思わなかった……」
「もっと、………いやらしくなって…………」
そう言いながら進藤は、固く屹立した自分自身を、僕のペニスに擦りつける。


(18)
―――――あ……っ…

鼻にかかった甘い声が、自然と零れる。
「もっと、聞かせてよ………アキラの…声」
促す進藤の声も、甘く掠れている。
それに応えるように、僕は進藤の身体を強く抱きしめた。
どんなに抱きしめても足りないような気がした。
進藤が下から上へ擦り上げるように腰を動かすと、そのたび僕の身体の奥底で怪しくざわめく感覚があった。
それがなんなのか気がついて、僕は怖くなる。
それを欲しがる自分が怖くなる。
でもそれは、偽りのない気持だった。だから、言葉にする。
「ヒカルが…、欲しい……」
「アキラに言われると、それだけで……おかしくなりそ………」
進藤の言葉の意味もわからないまま、僕は手を伸ばし、いま自分が欲しいものに正直に触れた。
さっきとは違い、手に余るほど猛々しく育ったそれに、指を這わす。
この熱いものが、激しく脈を打つものが、また自分に埋め込まれるのかと思うと、確かに怖かった。
だが、それを求めている自分に嘘はない。
「ヒカル」
催促する。
しかし、進藤はゆっくりと顔を横に振ったあとで言った。
「まだ……、痛いよ」
「痛くてもいいんだ」
「俺はね、おまえが考えているより、ずるいんだ。痛い思いなんてさせねえ。
俺のこと思いだすたびたまらなくなるほど、気持ちよくなって。俺じゃなきゃ感じなくなるほど、夢中になって」
恐ろしいことをさらりと口にして、進藤は身体を離した。
突然離れた肌を追って、軽く身体を起そうとした僕の胸を手で押しやると、進藤はいきなり僕の股間に顔を埋めた。



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