ストイック 2
(2)
夢を見て、目が覚めた。
僕はしばらくの間、夢の余韻に浸っていた。
夢の中で、僕は彼を陵辱していた。
力任せに押さえつけ、抵抗する彼をくみしだき…
無意識のうちに、手が下腹部まさぐっていた。
ふと気付いて手を引き、胸から湧き上がる羞恥心に紅潮した。
あたりは既に明るく、窓から白い光が差し込んでいる。時計に眼をやれば、まだ起床時間にはずいぶん間がある。
布団の上に半身を起こして、片膝を立てた。
両手に顔をうずめ、思いに沈む。
(馬鹿馬鹿しい。あいつを押さえつけるなんて、向こうのほうがよっぽど体力がありそうじゃないか)
そう思って、少し笑った。
自嘲しながらも、思いは夢の残像を追っている。
夢の中で彼がどんな表情をしていたのか、思い出せない。
いや、夢の中では、彼の表情は曖昧だったのだろう。陵辱に助けを請うなんて、陽の光の似合う彼にはそぐわない。
思わず声を立てて笑ってしまった。
が、笑いはすぐに引き、僕は唇を噛んでいた。
夢の出来事にすぎないとわかっているのに…
触れ合った肌の感触を生々しく思い出していた。
「違う!」
思わず声に出していた。
いくら振り払おうとしても、彼の目が眼裏に焼きついて離れれない。
顔を覆う指の隙間から覗くようにして、僕は空を見据えた。
こぐらい闇の幻影が、僕を押し包む。
闇の底で、彼が眠っている。
あの明るい目を閉じて、蝋のように冷たい身体を横たえた彼が…
かっと熱くなる身体を、僕は無我夢中で掻き抱いた。
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