ストイック 26
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緒方さんの部屋にいるのがいやで、逃げるように出てきてしまったけれど、
帰宅途中、自分がいやな臭いをさせているのではないだろうか、と人目が気になった
り、やっぱりシャワーくらい借りてくればよかったと思うと、今度はひどく情けない
気持ちになって、心細さと恥ずかしさで泣きそうになった。
そして、自宅に戻り、何よりも先に風呂場に駆け込んだのだった。
身体が痛むのも道理で、見てみればあちこちに痣ができていた。
手首には掴まれた痕が残っている。
あれはセックスというより…
(喧嘩みたいだったな…)
取っ組み合いの喧嘩なんてしたことはないけれど、近いものがあるんじゃないかと
思った。
不思議と、緒方さんをなじる気にはなれなかった。
もちろん、許す気などはさらさらなかった。
緒方さんの行為が僕に残したのは、身体の痛みと、彼への敵対心だけだった。
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