断点-3 3


(3)
ノックもせず、物音を立てないようにしてドアを開けたら、やはりそこに彼がいた。
「……塔矢、」
ヒカルが低い声で呼びかけると、アキラは一瞬動作をとめ、それから酷く緩慢な動作で振り返った。
「よくよく懲りない人間だな、キミも。学習能力というものがないのか。」
なんだかもう見慣れてしまったような無表情なアキラを見て、ヒカルの怒りは急速にしぼんでいった。
アキラを責めてやりたいとか、詰ってやりたいとか思っていたのは只の口実にすぎなくて、何とかして
近寄りたいと、話をしたいと思っていた事に気付いてしまった。
なんて情けないんだろう、と思いながら、それでも口を開く。
「話がしたくて……」
「ボクはキミと話すことなんてないね。」
冷たく切って捨てるアキラを上目遣いに睨みつけてヒカルは問う。
「…塔矢はオレが嫌いなのか?」
「何を今更。」
当たり前の事を聞くな、と、アキラは鼻で笑って言う。
「でもっ…」
声を詰まらせながら、それでもヒカルは必死に食い下がる。
「それでも、塔矢、オレはおまえが…」
「言うなっ!」
言い出したヒカルを、アキラが鋭い声で遮った。
「…言わせない。そんな事。許さない。」
言われたヒカルは大きく目を見開き、次いで、アキラの言葉の理不尽さに噛み付くように言った。
「…許さないって、何だよ。オレが何言うかなんて、おまえの許可なんかいらねぇよ。
おまえが許さなくたって嫌だって言ってやるよ、おまえが、」
「やめろッ!!」
「おまえが、好きだッ!!」
叩き付けるように言ったヒカルを、アキラは息を飲んで見詰める。
「よくも…よくも、そんな事を、言ったな……」
「ああ、言ったよ。言ったがどうした。
何度でも言ってやる。おまえが好きだ。
好きだ好きだ好きだ好きだ好きだッ!
おまえが何て言おうと、何しようと好きだ!」
顔面を蒼白にし、怒りに拳を握り締めるアキラに向かって、ヒカルは悲痛な声で叫ぶ。
「なんで、なんでオレが好きだって言ったらおまえが怒るんだよ!?」
「なんでだって?よくもそんな事が言えたな。何も、何もわかってないくせに…!」



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