若手棋士による塔矢アキラ研究会 43 - 46


(43)
「まな板の上の鯉」という状況はもうとっくの前からそうであったがランニングも
靴下もすっかり取り払わられ、男の体の上に横たえられ、しかもその男のモノを
深々と体に埋め込まれている状態で曝されたアキラの体はまた別の趣があった。
強い絶頂間の余韻で今だ収まらない鼓動に胸を上下させ全身がしっとりと
汗に濡れて湯上がりのように薄桃色に色めいていた。
部屋の中はアキラと男達の汗と精の匂いが充満していた。
目蓋は半分開いているが何かを映している様子はなく虚ろい気味に時々
黒瞳が揺れているだけだった。
直腸内部を押し広げられている圧迫感は相当なものだろう。
4人の男達は祭壇の上の獲物に最後の儀式を与えるべく傍に寄った。
アキラの体の下から眼鏡の男がアキラの両手首を掴んでいて、前歯の男と
フライングの男が左右の足を開かせて押さえた。
長髪の男が両手を伸ばし、今までの刺激によって痛々しい程に赤く染まって
腫れが出ているアキラの両の乳首を、そっと摘んだ。
「ん…っ」
左側に倒れていたアキラの顔が振られて右に倒れた。長髪の男はなおも
胸の突起を慰撫し続ける。
「ふ…んっ」
肩をよじり、腰をよじって甘い電流のような刺激に反応するに合わせて
男のモノを銜えた場所も、そのすぐ上のアキラの一部も震えてピクピクと動いた。


(44)
「具合はどうだ?」
「す、すげえ締まる…充分感じてるみたいだよ…」
長髪の男に聞かれて眼鏡の男は興奮気味に答える。
やっと静まりかかっていたアキラの呼吸が再び強められていく。
「んん…んっ、…う…、んー…」
ただちろちろと乳首をいじられる行為だけであったが触覚が研ぎすまされたように
鋭くなっている今のアキラにとっては針で突かれるような感覚に似ていた。
そんなアキラの下腹部の先端から、じわりと透明な蜜が溢れ始めた。
その根元の柔らかな袋に前歯の男とフライングの男が左右から舌を触れさせていく。
「あっ…あ」
二つの舌が両脇からひんやりした袋から硬く熱くなりかかった陰茎へと移動していく。
「ハアッ…あ、あ…ハア…!」
長髪の男が指先を乳首から離して今度はフェラの男とともに口で両の乳首を吸う。
「あっ…ハアッ…う、うーん…!!」
最も敏感な部分にのみそれぞれに動き回る温かい4つの舌にアキラは身悶える。
身をよじればいやでも隙間なく体内に埋まったモノに壁を擦られる。
「う…はあっ…、し、締まる…すごく…脈打ってる…すげえ!」
「1番得してるのってもしかしてワキか…?」
「いいんだよ。オレ達は塔矢くんに気持ち良くなってもらえたらそれでいいんだ。」
不満そうに舌を使いながら話すフライングの男を前歯の男がなだめる。


(45)
両側を2つの舌で舐め上げられてアキラのペニスが跳ね上がりながら先端から蜜を溢れ
させて腹の上に一雫二雫落ちる。それを争って舐めようと2つの舌が鈴口に迫った。
「はうあっ!ううーん…!!」
「き、来た…!!」
ビクビクッとアキラが体を震わすと同時に眼鏡の男も唸った。2つの舌の隙間から
僅かに白く濁った液体が飛んでアキラの腹部から胸にかけて散った。3人の男が
それらを舌で舐めとり、またすぐに定位置に戻る。長髪の男は体を離して碁盤に
5個目の黒石を置くと眼鏡の男に訊ねる。
「ワキ、まだまだいけるか」
「ああ、…オレは何とか踏み止まった。まだ中が蠢いてる…最高だよ…」
そして空ろな目で喘ぐアキラの前髪を指でとかしながらアキラにも訊ねる。
「どうだい、塔矢くん、こんなに気持ちいいのって初めてだろう?」
そうしてまた空いていた乳首に唇を寄せようとした。その時、
喘いでいるだけだと思っていたアキラの唇が、何か繰り替えしている事に気付いた。
「…じゃ、…い…」
「?…何て言っているんだい、塔矢くん?」
「…は…のじゃな…い、進藤…は…こんなものじゃ…」

路上で進藤を見つけて碁会所に引っ張って行き、多くの常連客の目の前で2度目の
対局をした。真剣で、本気で勝つつもりで、最初から自分はひどく興奮していた。
進藤の1手目を受けてこちらの手を考える時から何かがアキラの体の奥で脈打っていた。


(46)
すでに何かを予感していたのかもしれない。進藤とのこの一局が、自分の人生を、
自分の中の何かを大きく作り替えてしまうかもしれないと。
そして実際に自分はそれを体感した。蛹がその殻の中で細胞をどろどろに溶かして
変容させ幼虫から蝶に成り変わるように、それまでの自分の感性を、進藤とのあの
一局が完全に変質させた。
石を置く度に予感は確信になり、それと同時に今までそうなる現象の意味も名前も
分からないまま下半身の奥で何かが高まっていった。
時間をかけて細心の注意をはらい積み重ねてきたトランプの城を一気に崩そうと
している。進藤に掴まれてもがく自分の手で。
『…ありません…』
自分がその言葉を吐くことになった瞬間にそれはピークに達した。何かが大きくうねって
弾けた。椅子を掴んで声が漏れるのと体が崩れ倒れるのを留めるのが精一杯だった。

性器に触れられる事で得られる快感とは限り無く似てはいるが非なるものだ。
今、自分に与えられているものは肉体的な快感に過ぎない。体を溶かされるような
快楽ではあってもあの時のような、脳が溶けるような感覚には程遠い。
思考が溶けて自分と自分じゃないものを区別する意識がなくなり光に包まれるような
あの一瞬。肉体的な快感は後からそれについてくるおまけのようなものだ。

それだけに、中学の囲碁の大会で進藤と三度目の対局の時の失望感は凄まじかった。



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