断点-3 5
(5)
「オレが…憎いのか…?」
「ああ。」
「そんなに、オレの事、キライなのか。」
「ああ、嫌いだね。」
「……どう…して。」
「理由なんて、ありすぎて並べてたらきりがない。」
「時々、殺してやりたいと思うくらい憎らしいよ。
でも、そこまで手を汚す気にはならないからしないだけだ。」
「こ、殺さなく、たって、でも、犯罪、だろ…」
「そうだね。でも強姦は親告罪だから、被害者が訴えて出ない限り犯罪にはならない。
それとも訴えるかい?」
微笑みを浮かべながら優しく甘い声で囁きかけるアキラの目は、けれど氷のようだ。
ヒカルの髪を弄っていたアキラの手は、次いで、ヒカルの頬に触れる。
ビクリとヒカルは顔を強張らせる。
アキラの手はそのまま顎のラインを伝い、首筋に軽く触れた。
緊張でヒカルの全身が強張る。
手のひらでヒカルの細い首を包むようにしながら、アキラは顔を近づけ、ヒカルの目を覗きこむ。
「威勢のいい事を言っていたわりには、ボクが怖いのか?」
頚動脈を撫で上げられるように手を動かされ、思わずヒカルがきゅっと目を瞑ると、その手は何事も
なかったかのように離れていった。
「首を締められるとでも思ったのか?殺しはしないって言っただろう。」
クス、とおかしそうに笑った後、アキラはキッと表情を引き締め、一転して冷たい声で言い放った。
「とっととボクの前から消え失せろ。目に入るだけで不愉快だ。」
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