若手棋士による塔矢アキラ研究会 5 - 6


(5)
その後、進藤がアキラの碁会所にやってきて対局した。
その間、お互い口元ばかりを見ていた気がする。ヒカルも同じ事を考えている様な気がした。
たまたま他の客が早く帰り、市河も席を外していて室内にヒカルと2人きりになった。
「…塔矢、あのさ…」
ヒカルが口を開いた時、アキラの胸の中でドクンと強く心臓が脈打った。
「もう一度…ていいか?」
ヒカルが席から腰を浮かせてこちらに顔を寄せて来た。アキラは盤面に視線を落としたまま
小さく頷いた。ヒカルが顔を横に傾けて唇を軽く触れさせて来た。
「へへ、」
それだけでヒカルは満足したみたいに席に坐り直した。
その後も、もう一度棋院会館の人気のない廊下の奥でキスした。今度はもう少し
長く触れ合わせた。
「…塔矢の唇って、気持ちいいなあ…。」
ヒカルはまだ「キス」という行為にあまり深い意味を感じていないようだった。
幼児が無意識に股間を手で触るように“何となく落ち着く”程度のものなのだろう。
誰かがやめろと言えばやめるだろうし、こちらが同意すれば続ける。
それで「もう一回キスしたい」という一時的な衝動が治まるのだろう。

「進藤くんと、仲いいんだ。」
長髪の男からそう問いかけられてアキラは一瞬どう答えたらいいか迷った。


(6)
その時、床に置いた自分の手の甲の上にその男の手が乗せられた。
「…?」
アキラは彼が無造作にたまたまそこに手を置いたのだと思い、何気なく手を抜こうとした。
だが、男の手はそのアキラの華奢な指を床に押さえ付けたまま動かないようにしている。
「…進藤くんって、可愛いよな。」
「…!」
男のアキラに向けられる視線が明らかにさっきまでと様子が変っていた。
アキラはその目を知っている。時折電車の車内や街角で自分に対し不作法に投げ付けられる、
雄の目。アキラの服の上からアキラの肢体を想像し空想の中で好き勝手に
嬲りものにして愉しむ男達と同質の目つきだ。
「進藤くんってさあ、いつも和谷くんと一緒にいるだろ。…あいつらデキてんのかな。」
アキラに卑猥な視線を向けながら何故かヒカルの話しをする。手を離せないのをいい事に
すぐ耳もとに顔を寄せて息を吹き掛ける。
やっとの思いで手を引き抜いたアキラは怒りを露にして立ち上がった。
「…検討会をするつもりがないのなら、帰ります。」
そのアキラの行く手を遮るように男も立ち上がると壁にアキラを囲うようにして両手をついた。
「検討会だよ。新入段者の素行に関する…ね。特に進藤くんと、彼のお相手についての…。」
アキラはその言葉に相手の男の目を睨み返した。
何か自分とヒカルの事を知っていてそういう話しをしているのだと感じた。



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