ストイック 7


(7)
後から来た母と入れ替わりに、僕は家へ戻った。
父の容体を問う電話が鳴り止まず、また来訪客は事情を知るもの、知らぬものが次々にやってきて、僕は座る暇もなかった。
ようやく両方が途切れたとき、時計を見たら三時をまわっていた。
お茶でも飲もうと台所に入ったが、それすらも億劫になって椅子に座った。
居間の時計の音までが聞こえてくる。
誰もいない家が、こんなにも静かなものなのだと初めて知った。
呼び鈴が鳴って、玄関へ出た。
やって来たのは芦原さんだった。
「今病院に行ってきたんだけど、アキラ。大丈夫か?」
「ええ、命には別状はないそうです。ご心配をおかけしました」
僕はほんとんど機械的に答えていた。今日一日で、その言葉を何度口にしただろうか。
「いや、先生じゃなくて、お前のことだよ」
芦原さんの問いに、僕は一瞬きょとんとした。
「ボクはこの通り、大丈夫ですけど…」
「そうか。病院のほうは見舞い客がひっきりなしでさ。マスコミまで押しかけてるし…
で、奥さんから頼まれ事をされたんだ。入院用に着替えは用意したけど、洗面道具とか、見舞い客に出すお茶の用意とかを忘れていたって。こんな時にお茶まで気をまわさなきゃならないんだから、大変だよ。そろえる物をメモしてきたんだけど、これ、集められるかい?」
芦原さんからメモを受けとりながら、急に眩暈に襲われて、僕はふらついた。



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